Ubuntu Weekly Recipe

第403回 bcacheとからあげ幸福度と大五郎とLibreOfficeと森と日本語Remix ~Ubuntu 15.10リリース記念オフラインミーティングレポート

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セミナー1「“bcache”を使ってSSDの速さとHDDの大容量のいいとこどり」

最初のセミナーはUbuntu Japanese TeamのメンバーでもありCanonicalの社員でもある村田さんによる⁠bcache⁠を使ってSSDの速さとHDDの大容量のいいとこどりです。

村田さん

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一般的にSSDは「容量単価が高いが高速⁠⁠,HDDは「容量単価は安いが低速」という特性があります。当然「容量価格を抑えつつ,高速なストレージを使えたらいいよね」と思ってしまうわけです。そこでbcacheによってSSDの領域の一部をディスクキャッシュにすることで,大容量のHDDを高速に使ってしまおうというのが,この発表の目的とのことでした※5⁠。

※5
発表の中でも言及していましたが,ちょうどこのイベントの2日前にはInsight Ubuntuでbacheの話題が出ていました。Launchpadの高速化にbcacheを使ったよという話です。

その「bcache」ですが,Ubuntu 14.10からbcache-toolsパッケージがTechnology Previewとして公式リポジトリに投入されています。しかしながら,Ubuntuのインストーラーは今のところbcacheは未サポートなので,システム領域にインストールするのはいろいろ大変です。そこで村田さんは,データ領域でbcacheを使うことでその性能を検証していました。具体的には,120GBのSSDにUbuntuをインストールした上で余った領域(80GB)を,750GBぐらいのHDD(バッキングデバイス)のキャッシュとして使った領域として設定したそうです。

発表資料の中では,簡易的という前置きはあるものの速度を計測した結果がわかりやすくグラフ化されていました。fioを用いてSSDやHDDをそのまま使った場合と,WriteBack(読み書きともにキャッシュする⁠⁠,WriteThrough(読み込みのみキャッシュする)のパターンで計測しています。それによると書き込みやランダム読み込みが劇的に改善していることがわかります。特にランダム読み込みはSSDと遜色ない値になっています。

なお,MAAS 1.9ではcurtinを用いてWebUIからbcacheを設定できるようになるそうです。

bcacheを使った場合の読み込み結果

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セミナー2「或る卒論生の執筆環境」

2番目のセミナーは関西から深夜バスで参戦されたRakugouさんによる或る卒論生の執筆環境です。

Rakugouさん

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実はこのイベントの一週間前にJapan.R 2015という統計処理ソフトウェアRのイベントが行われていました。Rは今もっとも人気の言語の一つなので,その人気にあやかって「UbuntuでR」な話題をオフラインミーティングでも誰か喋ってくれないかなと考えていたところ,⁠卒論でRを使ったので,その話でよければ」と手をあげてくれたのがRakugouさんなのです。

学生時代の専攻が社会心理学だったRakugouさんは,卒論を「Ubuntu+LibreOffice+R」の組み合わせで作成したそうです。周囲の学生が皆,⁠Windows+Microsoft Office+SPSS」という組み合わせだったため相談することができず,自分で調べたりR勉強会に参加することで情報を得ていたことを話していました※6⁠。

※6
結果のパス図もLibreOffice Drawで作成したそうです。詳しくはRakugouさんのブログを参照してください。

今回は卒論で使った分析手法のうち,⁠因子分析」「パス解析」について説明がありました。特に「パス解析」については,あらかじめオフラインミーティング参加者の一部に,⁠からあげが食べたいかどうか」「幸せかどうか」などの5つの質問項目を5段階で評価してもらったことにして,そこから「何が幸福感につながるか」を分析していました※7⁠。

※7
分析に使ったダミーデータはこちら

今回試したパス解析の結果

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分析の結果は実際に発表資料を読んでもらうとして,読者の皆さんも是非からあげ(もしくは各自が美味しいと思う何か)を食べて幸せになりましょう。

セミナー3「サーバー監視のはなし ~ 監視と通知と障害と俺とお前と大五郎」

3番目のセミナーは北海道から海を越えてはるばるおこしの水野さんによるサーバー監視のはなし ~ 監視と通知と障害と俺とお前と大五郎です(リンク先はPDF⁠⁠。

水野さん

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インフラミニ四駆やゲーム機の配線を含むエンジニアである水野さん曰く「サーバー障害は絶対に起こるもの⁠⁠。というわけで,障害にできるだけ早く(場合によっては障害が起こる前に)気づくための,さまざまな監視ツールをその用途や類型から紹介しました。特にMackerel第383回でも取り上げた「Xymon」については,実例も交えて詳しく解説しました。

稼働中のXymon。ログが詳細で重宝しているとのこと

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さらに障害を検知したあとの通知も重要です。いかに気づけるように通知し,スルーしないようにするかが勝負の分かれ目になってきます。そこで通知方法を管理する手段としてPagerDutyを使ってスマートフォンに障害発生時にSMSを送信したり,会場にあったUbuntu Phoneに対して電話をかけ自動通話させるデモを実演しました。

ちなみに発表中に「大五郎」の要素はまったくありませんでした。大五郎に興味のある方は水野さんに直接問い合わせてみてください。

セミナー4「LibreOfficeのいろいろ」

一度休憩を挟んで後半戦最初のセミナーは,本連載でも第218回第271回といった印刷関連の記事でもおなじみ,LibreOffice日本語チームの小笠原さんによるLibreOfficeのいろいろです。

小笠原さん

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まず小笠原さんが最初に伝えたのは「Ubuntu 15.10リリースおめでとうございます」でした。……この流れ,前回もありましたね。さらにその前のイベントでも小笠原さんに指摘された記憶があります。次回あたりからは,乾杯の前に司会にコメントしてもらうことにしましょう。

さて小笠原さんの発表は,まずLibreOfficeの名前や基本的な情報を紹介するところから始まり,UbuntuとLibreOfficeの関係やパッケージの状況,最新版を使う方法などを説明。次に9月に開催されたLibreOffice Conference 2015 Aarhusの様子を紹介するという,LibreOfficeづくしの内容でした※8⁠。特にカンファレンスの報告は,アドバイザリーボードにミュンヘンが参加するなど,とりわけヨーロッパの自治体が開発に積極的な印象ですね。

※8
Aarhusは「オーフス」と読むそうです。カンファレンスの様子は,数回に渡るレポートが掲載されていますので,そちらも参考にしてください。あと,来年はチェコだそうです。

さらには,今後の目玉になるであろう「LibreOffice Online」のデモ動画の解説も行いました。あくまでレンダリングソフトはLibreOffice本体で,その結果をOpenStreetMapなどでも使われているLeafletを用いてHTML5+CSS+JavaScriptでタイル状に表示する仕組みだそうです。HTML5+CSS+JavaScriptでLibreOfficeそのものを再実装したわけではない,というところがポイントですね。個人的には,描画だけなら非力なマシンでも軽いような状態だと嬉しいところです。

次のUbuntuのリリースでは,おそらくLibreOfficeも新しいバージョンである5.1が取り込まれるであろうということで,セミナーの中では現在ベータ2の5.1の新機能についてもいくつか紹介しました。すでにいくつかの新機能が実装されていて,テスト版でも試せるということなので,気になる方は試してみてはいかがでしょうか※9⁠。

※9
UbuntuでLibreOfficeの開発を行ったり,テスト版を試す方法というRecipeがそのうち出てくることを期待していいのでしょうか。

5.1では、⁠画面切り替え」のサイドバーのUIが改善される

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また来年の1月9日(土)にはLibreOffice mini Conference 2016 Osaka/Japanが開催されます。最寄り駅が大阪駅という,日本人にとってはオーフスやチェコよりは遥かに参加しやすい場所ということですので,ぜひ読者の皆さんも参加しましょう。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。