Ubuntu Weekly Recipe

第403回 bcacheとからあげ幸福度と大五郎とLibreOfficeと森と日本語Remix ~Ubuntu 15.10リリース記念オフラインミーティングレポート

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セミナー5「Ubuntuで森モニタリング 準備編」

後半戦2番目のセミナーは,主催であるグリー株式会社の松澤さん……にとてもよく似たalumicanさんによるUbuntuで森モニタリング 準備編です。発表内容そのものは会社の査読を通していないので,あくまで「個人的な松澤として発表します」とのことでした。

alumicanさん

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日々新しい技術が生まれてくる中で,技術的な興味はあっても「モチベーションをどう維持するか」が問題になってきます。松澤さんは,明確にコミットできる目標を作ることで,モチベーションを維持しようとしているそうです。そこで今年,森を落札してみたんだとか。

そのセリフと共にスライドに映った写真はリアルの森です。会場がその意味を理解するまで一瞬間がありました。そして「ざわ……ざわ……」感と共に湧き上がってくる笑い。もうそこからは松澤さんの独擅場です。⁠お金使ってしまったんでモチベーションがどうとか言ってられない」⁠木が生えているんでダッシュはできませんが,森spec的に100m走は余裕です」⁠危ないので開発時にヘルメットとツナギは必須です」⁠チェーンソーは思ったより安全。むしろ倒れてくる木の方が危険」などなど,何か発言するたびに笑いが起こる会場。

落札した森を上から

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開発区は遠隔地なので,とりあえずポストを立てて「ping」と書かれたハガキを送ったそうです。ただ,これは届かなかった。そこでご友人にひまわりの種を入れた手紙を別途送ってもらったら,届いたんだとか。心がこもっていれば受信できるポスト。それでも如何せん現地までが遠いので,リモートでモニタリングできる環境を用意しようということで,ようやくタイトルの話になっていきます。

森にお金がかかったので,いかに安く作るかがポイントです。いろいろ検討した上で,Raspberry Pi 2とSoracom Airに太陽電池パネル,各種センサー類など※10⁠。配線のために電気工事士の資格試験の勉強も行ったと言います。ソフトウェア的にはUbuntuの上でFluentdやMotionでログを収集して,Soracom Air経由でAWS上にGrafana/Graphiteで視覚化するようにしているそうです。既に動くシステムができていて,会場でも収集結果のリアルタイムの様子も紹介しました。今後は現地の森に設置して,動くかどうかのテストが待っているとのことでした。発表の様子はGREE Engineer's Blogにも掲載されています。

「森を買ったらシステムが1つできた!」

※10
諸々の費用は発表資料に掲載されています。

セミナー6「日本語Remixどうしよう」

セミナーラストは結局生ハムを食べられたかどうか聞きそびれた,いくやさんによる日本語Remixどうしようです(リンク先はPDF⁠⁠。

いくやさん

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先ほど小笠原さんが話題にしたばかりの5.1のベータ2でセミナーを始めたいくやさんは,⁠日本語Remix」とはなんぞやというところから,最初の日本語Remix(の元となる改変版)がリリースされたUbuntu 5.04から最近のUbuntu 15.10までの系譜や名前の変遷などを紹介していきます。特にUbuntu 5.04は,そもそもインプットメソッドのパッケージそのものがなかったため,日本語Remixは日本語を使う上で必須といえる状態でした。

「日本語Remix」名称の遍歴

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さらに資料では「日本語セットアップヘルパ」の話をしたり,Ubuntu 6.06 LTSから各LTSごとに日本語Remixでカスタマイズしていた パッケージのリストを紹介しました。カスタマイズパッケージはリリースを経るごとに順調に減少していき,現在はほぼunzipのみとなっている状態です※11⁠。

※11
Windowsの日本語ファイル名を圧縮した時,Ubuntuで解凍すると文字化けしてしまいます。そのため特殊なオプションをロケールにあわせて設定するという修正が加わっています。⁠解説の村田さん」によると,このオプションはUpstreamには取り込まれているもののまだ未リリースで,Debianのunzipパッケージには取り込まれていません。そのようなオプションに依存した修正をUbuntu独自に取り込むことは慎重にならざるを得ないために,正式な採用は見送られているそうです。

加えてUbuntu 15.10からはライブセッションでも日本語入力が一応できるようになりました。そのため「日本語Remixをリリースする意義」がだいぶ薄くなっているのが現状です。それを踏まえてセミナーでは,⁠リリースを続けるべき理由」⁠やめた方が良い理由」をそれぞれわかりやすくまとめていました。

少なくともUbuntu 16.04 LTSはLTSであることとUnity 7であることから,日本語Remixを出した方がいいでしょう。では,その先はどうするべきか。特にUbuntu Personalになったら,これまでの考え方はすべてひっくり返るため,いろいろと考えなおさなくてはならないのではないか。そもそもUbuntu Personalを日本語Remix化できるのか,Snappyではないであろう他のフレーバーをベースにすべきか。……というように考えるべきことは山ほどあります。いくやさんは,もし日本語Remixを使っているのであれば,今後はどうあるべきか考えて意見を表明してほしい,という形でセミナーをまとめていました。

ちなみに,先日発売されたばかりのSoftware Design 2016年1月号のUbuntu Monthly Reportでは,⁠Ubuntu 15.10で修正された日本語関連のバグ」という記事をいくやさんが寄稿しています。またいくやさんや,今回発表してくれたRakugouさん,水野さん,司会の長南さんなども執筆しているうぶんちゅ! まがじん ざっぱ~ん♪ vol.3も絶賛発売中です。このレポートを書いている柴田も,Device Treeの入門的な記事を書いています。なお,vol.4は来年1月発売予定です。

会場の後方や外では

今回も会場の後方ではUbuntu PhoneやRaspberry Pi 2のデモ機材を展示していました。

Ubuntu TouchとしてはNexus 4とNexus 7(2013)にインストールしたものに加えて,bqが販売しているUbuntu Phoneである「Aquaris E5」⁠ただし電源は入らない)も並べています。特にNexus 4はBluetoothマウスをペアリングすると(デスクトップのような)マルチウィンドウモードになるデモを動かしていました。

さらに今回は名古屋でも,第284回を書いてくれた松本さんが独自に会場を借りてリモート参加してくれました。Ubuntuオフラインミーティングでは,セミナーの様子をUstreamでライブ配信しています。名古屋会場は,そのUstreamを見ながらTwitterでいろいろとツッコミをいれてくれていたようです。

セミナー後に若干時間があったのでGoogleハングアウトで,名古屋会場との相互接続しながら,向こうの様子を伺ってみました。それによると,名古屋会場は登録した4人全員参加という素晴らしい出席率で,終始なごやかに視聴していたようです。ちなみに,名古屋会場でもちゃんとからあげを準備していたとのこと。

今後もこんな風に地方でのリモート参加が増えると嬉しいですね。

まとめと謝辞

ここまで「Ubuntu 15.10リリース記念オフラインミーティング」のイベントの様子をお伝えしましたがいかがだったでしょうか。⁠Ubuntu 15.10の要素がほとんどないじゃないか!」って思った方もいらっしゃるかもしれません。実際,15.10っぽいことはほぼありませんでした。まぁ,リリースパーティ自体,リリースにかこつけてパーティすることが主たる目的だったりするので,その辺りはご容赦ください※12⁠。

※12
この段落,前回のレポートの完全な使いまわしです。つまり15.04も15.10も,目立った変更点はなかったということになります。ただ表立った変更点はないものの,下回りはいろいろと手が加えられていますし,LTSやその先に向けての準備は着々と進んでいます。

ちなみにイベント中にTwitterで流れた#ubuntujp付き投稿をまとめてくださった方もいますので,今回のレポートに載っていない様子が気になる方はそちらも参考にしてください※13⁠。

※13
「まとめてくださった方」というか名古屋会場の松本さんなんですが。

参加された方はSNSやブログなどに感想を書いて,宣伝していただけると助かります。次回に向けての要望がある場合は,ぜひUbuntu Japanese Teamに届く形でご連絡ください。できる範囲で応えていきたいと考えています。もちろん次回があるなら発表させろという要望も随時受け付けております。

最後になりましたが,今回もたくさんの方がこのイベントを裏や表で支えてくれています。毎回六本木ヒルズというお高い立地にとても広い会場を提供してくれている主催のグリー株式会社さんには頭があがりません。このRecipeやTopics,Ubuntu Monthly Reportなどを担当している技術評論社さんにはじゃんけん大会の景品用にとSoftware Designとインフラエンジニア教本2を差し入れていただきました。

会場スタッフには早めに会場入りしていただき,買い出しから設営,受付に給仕っぽいことまでいろいろ手伝っていただきました。今回はとうとうスタッフに対する事前説明をほっぽりだして,⁠適当に指示に従って」というスタイルになってしまいましたが,それでも空気を読んで動いてくれるあたりすごいなぁ,と関心しきりです。またJapanese Teamの身内ではありますが,司会の長南さんには毎度毎度じゃんけんやアナウンス,セミナーの前フリなどいろいろなマイク関連のお仕事をこなしてもらいました。今回はシックな黒の衣装でしたね。また吉田さんには本業の方がかなり忙しそうにもかかわらず,⁠からあげ(とついでに食料⁠⁠」の調達という重要かつ一番頭を使うミッションをこなしていただいています。この2人がいるからオフラインミーティングが成り立っているので,この記事を読んだ方はぜひねぎらいの言葉をお願いします。

2016年4月には2年ぶり6度目のLTSがリリースされます。もちろん5月か6月頃にはまたオフラインミーティングを開催するつもりです。その際は,ぜひ読者の皆様も参加や発表していただけたら嬉しいです。

さぁUbuntu 16.04 LTSに向けて,⁠Ubuntu,前進!」

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。