Ubuntu Weekly Recipe

第612回LibreOffice 6.4をインストールする

今回は第507回の更新版に相当する、LibreOffice 6.4のインストール方法を紹介します。

第507回との状況の違い

第507回の頃の状況は、各種パッケージングの仕組みに未成熟な部分があり、UbuntuにもともとインストールされているLibreOfficeと併用するのがベストの状況でありました。しかし、2年を経てそのあたりの状況がずいぶんと改善されたため、最新バージョン(かつ単一バージョン)を使用すればおおむね問題がなくなったと考えられます。

一方、LibreOfficeは毎月バージョンアップがリリースされており、Ubuntuでもこまめに追随しています。第507回の頃の状況(LibreOffice 6.0)では難しかったですが、次のUbuntu 20.04 LTSで採用されるLibreOffice 6.4は5年間継続して利用するにふさわしいリリースであるといえます。よって、LibreOfficeのバージョンアップをせずそのまま使用し続けるというのも一つの手です。

LibreOfficeのサポートサービスを使用せずに真面目に使おうとする場合は、このあたりのことをユーザーがこまめに情報を収集しユースケースに合わせて方針を決定するしかありません。

対象とするUbuntuのバージョン

対象とするUbuntuのバージョンは原則としては18.04 LTSと19.10ですが、将来のバージョンに関しても同様に機能することが期待できます。

Ubuntu 20.04 LTSをインストールする

前述のとおりバージョンを6.4で固定したい場合は、本記事の公開時点で開発中のUbuntu 20.04 LTSを今の時点からインストールするというのは一つの手です。あまり大きな問題も起きないと思われますが、若干気が早い気もするので、誰にでもお勧めできるわけではありません。

例えばこの時期に新しいPCを購入し、Ubuntuをインストールするのであれば、ちょうどいい機会といえるでしょう。

繰り返しの言及になりますが、単一のバージョンのLibreOfficeが5年間提供されているわけで、それをずっと使い続けることができるというUbuntuのメリットを享受する、という考え方は「あり」です。

PPA

Ubuntuでは以前よりPPA(6.4版のリポジトリ)で最新版の提供を行っています。とはいえ最新版のリリースからPPAに入るまでのタイムラグは発生するため、常に最新版を使用したいという用途には向きませんが、インストールできるバージョンを比較的自由に選択できるというメリットがあります。

インストールはGUIとCLIのどちらからも行えますが、今回は(も)後者の方法を紹介します。端末を起動し、次のコマンドを実行してください。

$ sudo add-apt-repository ppa:libreoffice/libreoffice-6-4
$ sudo apt dist-upgrade

もし今後7.0がリリースされた場合は、次のようにすればいいでしょう。

$ sudo add-apt-repository ppa:libreoffice/libreoffice-7-0
$ sudo apt dist-upgrade

もちろんサポートされているUbuntuであることが前提です。

「バージョンを比較的自由に選択できる」とはまさにこのことで、後述するSnapやFlatpakではバージョン(リビジョン)の選択は(原則としては現状)できません。第507回にもあるように、現在のバージョンを上書きするというメリットとデメリットを考慮してインストールしてください。もっとも、第419回で取り上げたppa-purgeコマンドを使って、PPAからインストールしたパッケージを削除するという手は取れます。

Snap

Ubuntuで手っ取り早く最新版のLibreOfficeを使用するには、Snapパッケージ版を使用するのが簡単です。

これもGUIとCLIとどちらでもインストールする方法がありますが、後者を紹介します。もともとインストールされていたLibreOfficeは削除するものとします。

$ sudo apt purge libreoffice-*
$ sudo snap install libreoffice

ただし前述のとおりリビジョンの選択はできません。Snapはリビジョンの選択がしやすいのも特徴ですが、LibreOfficeはメンテナンスするのが大変なので1つのバージョンしかリリースされていないものと思われます。過去の具体的例としては、6.3.4の次に6.4.0が提供されています。

また第569回でも紹介したのですが、Windowsのファイル共有(Sambaを含む)経由でのファイルのアクセスはできません。ほかにもSnap特有の問題点があるため、用途によってはマッチしないことも充分にありえます。

Flatpak

第513回でも取り上げましたが、情報が古いのであらためてお知らせします。

Flatpakは、役割としてはSnapと似ていますがデスクトップアプリケーションに特化しているのが大きな違いです。もちろんLibreOfficeのパッケージも提供されており、実は筆者がメインで使用しているのもこれだったりします。

Snapパッケージと違ってそもそもリビジョン管理の仕組みがなく、また新バージョンがリリースされたら同様に即座にリリースされるため、不具合が比較的多い初期バージョンを使用せざるを得ないのは注意点です。

インストール方法は18.04 LTSと19.10以降で違います。

18.04 LTSではまず最初に、次のコマンドを実行してください。19.10以降では不要です。

$ sudo add-apt-repository ppa:alexlarsson/flatpak

あとは共通で次のコマンドを実行後、再起動してください。

$ sudo apt purge libreoffice-*
$ sudo apt install flatpak gnome-software-plugin-flatpak
$ flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo

3行目のコマンドはFlatpakのリポジトリであるFlathubを追加するという意味です。

LibreOfficeのパッケージをコマンドラインからインストールする場合は、次のコマンドを実行してください。

$ flatpak install flathub org.libreoffice.LibreOffice

ほかのFlatpakパッケージを探す場合はもちろんUbuntuソフトウェアを使用してもいいのですが、FlathubのWebサイトで検索するという手もあります。

またUbuntu 18.04 LTSでは日本語の入力に難があるため、筆者が提供しているPPAを追加し、IBusをアップデートするといいでしょう。コマンドは次のとおりです。

$ sudo add-apt-repository ppa:ikuya-fruitsbasket/ibus
$ sudo apt upgrade

アップデート後、再起動してください。

AppImage

AppImageは以前と何ら変わりません。第507回で紹介しているとおり公式ビルドを再パッケージしているので、補助的な使い方をするといいでしょう。例えばSnapやFlatpakを使用していて新バージョンに上がったものの、不都合があるので一時的に古いバージョンを使用したい場合はAppImage版を使用するといいでしょう。また、何らかの理由で複数のバージョンのLibreOfficeを使用しなければいけないような事態に使用するのも便利です。

公式ビルド

公式ビルドも第507回と何ら変わるところはないのですが、同一のバイナリであり、かつメンテナンスが楽なAppImage版を使用するほうがいいように思います。少なくともUbuntuでは、公式ビルドを使用する積極的なメリットを見出すことはできません。何らかの理由でどうしても最速で最新のバージョンを使用する必要がある場合などは考えられますが、そうであれば自分でビルド環境を用意し、ビルドするほうがよっぽど最速で最新のバージョンを使用できます。

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