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第631回AMD Ryzen 7 PRO 4750Gを使用する[前編]

今回は、AMD Ryzen 7 PRO 4750G搭載PCでUbuntuを動作させ、ベンチマークを行った結果を2回に渡って報告します。前編の今回は、ベンチマーク実行のための準備を行います。

AMD Ryzen 7 PRO 4750G概要

8月8日にAMDがGPU内蔵CPU(以下APU)の新モデル、Ryzen PRO 4000Gシリーズの販売を開始しました。ただ、普段の新CPUの販売とはだいぶ違いがあります。まず、型番にPROと入っているように通常はコンシューマー向けに販売されるモデルではありません。それもあってか、パッケージに入った状態で販売されたわけではなく、いわゆるバルク版として販売されています。保証もパッケージ版であれば3年ですが、バルク版は1年間です。CPUファンも付属しないため、どう考えても割高です。

そのようなことは重々承知していましたが、筆者は販売された3モデルのうちハイエンドのRyzen 7 PRO 4750G(正式名称はAMD Ryzen 7 PRO 4750G with Radeon Graphics)を販売開始日に購入しました。価格は43,978円でした。

第510回ではRyzen 5 2400Gを、第580回では同3400Gを購入し、レビューを行いました。毎年CPUを買い換えるのはあまり本意ではないのですが、性能不足を感じていたことは否めないので、割高であることがわかっていても購入したのです。

Ryzen 5 2400/3400Gは4コア8スレッドモデルで、Ryzen 7 PRO 4750Gは8コア16スレッドモデルです。価格差もあって単純に倍程度の性能が期待されますが、実際のところはどうなのでしょうか。また、同じく8コア16スレッドのCPU、Ryzen 7 3700Xと比較してどのぐらい性能が落ちるのかも気になります。というわけで、そのあたりを明らかにしていきましょう。

使用したハードウェア構成

使用したハードウェアの構成は次のとおりです。

パーツ メーカー 型番
CPU AMD Ryzen 7 PRO 4750G with Radeon Graphics
CPUファン Scythe SCBSK-3000R
マザーボード GIGABYTE B550I AORUS PRO AX
メモリ Crucial CT2K16G4DFD832A
SSD Western Digital WDS250G2B0C
PCケース InWin IW-BP671B/300H

CPUファンは筆者のお気に入りの大手裏剣参 RGBです。検証した限りではRyzenのリテールクーラーであるAMD Wraith Stealthでも冷却能力自体は充分なものでした。

Ryzen 7 PRO 4750Gを使用するのであれば、選択できるマザーボードはあまり多くありません。一部の例外を除くと現状はチップセットにX570とB550を採用しているモデルであることが必須で、たいていの場合は新規に購入することになるでしょう。今回はB550I AORUS PRO AXを購入しました。Mini-ITXのB550チップセット搭載モデルとしては比較的安価で、APUを使用する以上ディスプレイ出力ポートが豊富(DisplayPortが1ポート、HDMIが2ポート)なのもポイントが高いです。ただし新しすぎるため、Ubuntuで使う分にはいくつか問題もあります。

メモリはCT2K16G4DFD832Aで、定格でDDR4-3200です。APUはメモリの速度が重要なのと、消費電力がなるべく少なくなるほうがいいことを考えると、バランスが取れていていい選択ではないかと思います。CFDから同等品も出ていますので、こちらでもいいでしょう。

使用するUbuntu

使用するUbuntuは20.04 LTSです。カーネルのバージョンはご存知のとおり5.4系ですが、Ryzen 7 PRO 4750Gを使用するには古すぎます。起動するにはしますが、解像度が1024x768になってしまいます。これがフルHDのディスプレイに拡大されて表示されるため、実用になりません。図1はこの状態での「このシステムについて」で、確かに「グラフィック」が正しく認識されていないことがわかります。

図1 Ubuntu 20.04 LTSのデフォルトカーネルで起動するとグラフィックが正しく認識されない
画像

そこで最近リリースされたカーネル5.8を使用することにしました。mainline kernelの5.8です。

mainline kernelは、ファイル名が"linux-headers-*generic*_amd64.deb"、"linux-headers-*all.deb"、"linux-image-unsigned-*generic_*_amd64.deb"、"linux-modules-*generic*_amd64.deb"になっているものをダウンロードし、aptコマンドでインストールするのが簡単です。

本記事の公開段階ですでに5.8.1がリリースされていますがという注釈付きで5.8のインストールコマンドを紹介すると、次のとおりです。

$ wget https://kernel.ubuntu.com/~kernel-ppa/mainline/v5.8/amd64/linux-headers-5.8.0-050800-generic_5.8.0-050800.202008022230_amd64.deb https://kernel.ubuntu.com/~kernel-ppa/mainline/v5.8/amd64/linux-headers-5.8.0-050800_5.8.0-050800.202008022230_all.deb https://kernel.ubuntu.com/~kernel-ppa/mainline/v5.8/amd64/linux-image-unsigned-5.8.0-050800-generic_5.8.0-050800.202008022230_amd64.deb https://kernel.ubuntu.com/~kernel-ppa/mainline/v5.8/amd64/linux-modules-5.8.0-050800-generic_5.8.0-050800.202008022230_amd64.deb
$ sudo apt install ./linux-*.deb

sudo apt install ./*.debでもいいのですが、カレントフォルダーに別のDebianパッケージがあるかもしれないことを考慮しました。

先ほどインストールしたカーネル5.8で起動し、⁠このシステムについて」を確認すると図2のようになりました。もちろん解像度も正常になっています。10月にリリース予定のUbuntu 20.10は少なくともカーネル5.8以上のバージョンを採用することになっているため、20.10の開発版を使ってみるの手かもしれませんが、本記事が掲載された時点ではまだカーネル5.4なので、もう少し待つか、proposedリポジトリを有効にする必要があります。

図2 カーネル5.8で起動すると「グラフィック」「AMD Renoir」となる。ちなみに「Renoir」はコードネーム
画像

B550I AORUS PRO AXに搭載されている有線LAN(RTL8125)は、残念ながらカーネル5.8でも認識できません。そこでr8125-dkmsをインストールすると無事に認識するようになりました。r8125-dkmsはRealtekがリリースしている純正ドライバーと、DKMSに対応させるための設定ファイルとインストールスクリプトを追加したものです。r8125-dkmsのREADME.mdによるとカーネル5.5より新しいバージョンでは不要となっていますが、エラッタ修正のためRTL8125はいくつかのリビジョンがあり、新しいリビジョンのチップは非対応なため、依然として別途ドライバーが必要となっています。ちなみにRed Hatのバグ報告によるとカーネル5.9からは対応するとのことです。

比較するハードウェア構成

比較するハードウェア構成は次のとおりです。

パーツ メーカー 型番
CPU AMD Ryzen 5 3400G with Radeon Vega Graphics
CPUファン AMD Wraith Spire
マザーボード ASRock Fatal1ty AB350 Gaming-ITX/ac
メモリ Crucial CT2K16G4DFD832A
SSD Western Digital WDS250G2B0C
PCケース InWin IW-BP671B/300H

一つ目のCPUはRyzen 5 3400Gで、ベンチマークのためにメインPCから外してきました。前述のとおりAPUなのはRyzen 7 4750Gと同じで、コア数・スレッド数が半分です。しかしL1〜3キャッシュのサイズは同じです。

パーツ メーカー 型番
CPU AMD Ryzen 7 3700X
CPUファン Scythe SCBSK-3000
マザーボード GIGABYTE B450 I AORUS PRO WiFi
メモリ Crucial CT2K16G4DFD832A
SSD Western Digital WDS250G2B0C
ビデオカード MSI GeForce GTX 1650 AERO ITX 4G OC
PCケース SilverStone SST-SG05B-USB3.0

二つ目のCPUはRyzen 7 3700Xです。Ryzen 7 PRO 4750Gと同じく8コア16スレッドですが、L3キャッシュに4倍もの差(32MB)があります。

CPUとマザーボード以外は可能な限り同じものにしましたが、Ryzen 7 3700X搭載PCはビルドマシンとして使用しているため、ケースを変更できませんでした。

長くなりすぎたので、実際のベンチマークの結果は来週の後編にてお届けします。

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