今回は、AMD Ryzen 7 PRO 4750G搭載PCでUbuntuを動作させ、ベンチマークを行った結果を2回に渡って報告します。前編の今回は、ベンチマーク実行のための準備を行います。
AMD Ryzen 7 PRO 4750G概要
8月8日にAMDがGPU内蔵CPU(以下APU)の新モデル、Ryzen PRO 4000Gシリーズの販売を開始しました。ただ、普段の新CPUの販売とはだいぶ違いがあります。まず、型番に「PRO」と入っているように通常はコンシューマー向けに販売されるモデルではありません。それもあってか、パッケージに入った状態で販売されたわけではなく、いわゆるバルク版として販売されています。保証もパッケージ版であれば3年ですが、バルク版は1年間です。CPUファンも付属しないため、どう考えても割高です。
そのようなことは重々承知していましたが、筆者は販売された3モデルのうちハイエンドのRyzen 7 PRO 4750G(正式名称はAMD Ryzen 7 PRO 4750G with Radeon Graphics)を販売開始日に購入しました。価格は43,978円でした。
Ryzen 7 PRO 4750Gを使用するのであれば、選択できるマザーボードはあまり多くありません。一部の例外を除くと現状はチップセットにX570とB550を採用しているモデルであることが必須で、たいていの場合は新規に購入することになるでしょう。今回はB550I AORUS PRO AXを購入しました。Mini-ITXのB550チップセット搭載モデルとしては比較的安価で、APUを使用する以上ディスプレイ出力ポートが豊富(DisplayPortが1ポート、HDMIが2ポート)なのもポイントが高いです。ただし新しすぎるため、Ubuntuで使う分にはいくつか問題もあります。
使用するUbuntuは20.04 LTSです。カーネルのバージョンはご存知のとおり5.4系ですが、Ryzen 7 PRO 4750Gを使用するには古すぎます。起動するにはしますが、解像度が1024x768になってしまいます。これがフルHDのディスプレイに拡大されて表示されるため、実用になりません。図1はこの状態での「このシステムについて」で、確かに「グラフィック」が正しく認識されていないことがわかります。
B550I AORUS PRO AXに搭載されている有線LAN(RTL8125)は、残念ながらカーネル5.8でも認識できません。そこでr8125-dkmsをインストールすると無事に認識するようになりました。r8125-dkmsはRealtekがリリースしている純正ドライバーと、DKMSに対応させるための設定ファイルとインストールスクリプトを追加したものです。r8125-dkmsのREADME.mdによるとカーネル5.5より新しいバージョンでは不要となっていますが、エラッタ修正のためRTL8125はいくつかのリビジョンがあり、新しいリビジョンのチップは非対応なため、依然として別途ドライバーが必要となっています。ちなみにRed Hatのバグ報告によるとカーネル5.9からは対応するとのことです。