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第689回Ubuntu 21.10でFcitx 5を使用する

今回はUbuntu 21.10とそのフレーバーでFcitx 5を使用する方法を紹介します。

Fcitx 5とは

Fcitx 5第274回で紹介したFcitxの後継バージョンです。バージョンアップ版ではなく新規に開発され、パッケージも別々です。すなわちFcitx(4)とFcitx 5の両方がリポジトリに存在し、同時にインストールして切り替えて使うこともできます。

Fcitx 5はFcitxでできることはおおむねそのままでき、比較的スムーズに移行できるでしょう。よって今からFcitxを積極的に利用する理由はあまりありません。

Fcitx 5の特徴はWaylandセッションで使用することを主眼に置いて開発されていることです。少なくともMozcを使用する場合は、IBusよりもFcitx 5のほうがいいのですが、その理由はまたおいおい解説していきます。

今回はUbuntu 21.10を対象としますが、22.04 LTSでもおおむね同様の傾向になるものと思われます。また筆者のPPAで20.04 LTS用のパッケージを用意しているので、適宜ご利用ください。

ibus-mozcとWaylandセッション

ibus-mozcでは仕様上Waylandセッションでは用例を表示できません。

図1はX.Orgセッション(以後Xセッション)で用例を表示した例です。図2はWaylandセッションで用例を表示しようとしたものの、できなかった例です。

図1 Xセッションだと用例が表示されている
図1
図2 Waylandセッションだと同じ「開く」でも何も表示されない
図2

UbuntuのリポジトリにあるMozcは現在開発中のものと比較してバージョンがやや古く、Xセッションで使用している候補ウィンドウ(GTK2 Mozcレンダラー)をWaylandセッションで使用すると正しく表示されないため、このようなことになっています。

Fcitx 5でどうなるかは、のちのち見ていきましょう。

Fcitx 5のインストールと設定

ではFcitx 5をインストールし、IBusから切り替えましょう。端末を起動し、次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install fcitx5-mozc
$ im-config -n fcitx5

実行後再起動してください。

geditを起動して用例を表示してみると、表示自体はできていますが表示位置がおかしいことに気づきます図3⁠。これを修正するためにはGNOME拡張機能のInput Method Panelをインストールする必要がありますが、そこでとあることに気づきます。

図3 用例は表示されるが表示位置がおかしい
図3

Snapパッケージ版FirefoxとGNOME拡張機能

それはGNOME拡張機能をインストールするにあたって、第687回で既報のとおり21.10ではFirefoxがSnapパッケージ化されたため、GNOME拡張機能のWebサイト経由でGNOME拡張機能を管理できなくなったことです。

Chromiumは前からSnapパッケージ化されており、Firefoxと同じ状況です。GNOME Webはそもそも非対応で、状況としては芳しくありません。

現在考えられる対処方法としては、次の2点が考えられます。

  1. Debianパッケージ版Firefoxを使用する
  2. Google Chromeをインストールして使用する

しかし、どちらもあまりいい方法とはいえないので22.04 LTSではどうにかなっていることを願うばかりです。

幸い「Input Method Panel」に関してはリポジトリにパッケージがあるため、これをインストールして有効にします。端末を起動して次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install gnome-shell-extension-kimpanel gnome-shell-extension-prefs

続けてGNOME Shellを再起動するのですが、WaylandセッションではAlt+F2キーを押して「r」を入力し、GNOME Shellのみを再起動するのは非対応です図4⁠。一度ログアウトして再ログインするしかありません。

図4 ⁠Wayland上では再起動できません」の無常の表示
図4

再ログイン後「拡張機能」を起動して「Input Method Panel」を有効にすると候補ウィンドウが正しい位置に表示されるようになります図5⁠。右上にアイコンが2つ表示されるのは気になりますが、再起動すると1つになります図6⁠。

図5 ⁠Input Method Panel」を有効にする
図5
図6 ようやく候補ウィンドウが正しい位置に表示されるようになった
図6

Fcitx 5の設定

Fcitx 5を使用する準備が整いましたが、事前に設定を確認しておきましょう。⁠Fcitx5設定」を起動して、⁠入力メソッド」が接続されているキーボードになっていることを確認してください図7⁠。また「グローバルオプション」タブで「一時的に第1入力メソッドに切り替える」「−」をクリックして「空」にしておくといいでしょう図8⁠。

図7 最低限接続しているキーボードが正しく設定されているかを確認する
図7
図8 ⁠グローバルオプション」タブの「一時的に第1入力メソッドに切り替える」は空にするのがオススメ
図8

ほかのIMエンジン

本記事では暗黙としてIMエンジンとしてMozcを指定していました。IMエンジンはFcitx用語で変換エンジンのプラグインで、日本語向けのものとしてはAnthyKKCSKKが用意されています。

fcitx5-kkcはUbuntuのリポジトリにないため、必要であれば筆者のPPAからインストールしてください図9⁠。

図9 fcitx5-kkcを使用しているところ
図9

Mozcの設定と辞書ツール

Mozcの設定はアプリケーショングリッドから起動できますが、辞書ツールなどは起動できません。起動させるには、⁠Fcitx5の設定⁠⁠-⁠アドオン⁠⁠-⁠Mozc」の右端にある歯車アイコンを起動し、表示されるメニューから「Configration Tool(設定ツール⁠⁠Dictionary Tool(辞書ツール⁠⁠Add Word(単語登録⁠⁠About Mozc(Mozcについて⁠⁠」の歯車アイコンをクリックしてください図10⁠。

図10 Mozcの各種ツールを起動する方法
図10

FlatpakとFcitx 5

Flatpakアプリケーションによっては、Fcitx 5による入力が行えないものがあるかもしれません。その場合はFcitxのWikiにある方法で必要なパッケージをインストールしてください。

余談ですがSnapパッケージはインプットメソッドを扱うための統一された仕組みはないため、原則としては個別対応となります。

UbuntuフレーバーとFcitx 5

21.10の3つのフレーバーはデフォルトのインプットメソッドがFcitxからFcitx 5に変更されました。設定方法を確認しながら見ていきましょう。

Kubuntu

KubuntuはFcitxからIBusになりました。正直なところKubuntuはFcitx 5のほうがはるかに使いやすいので、Fcitx 5に変更するよう働きかけたほうがいいのかもしれません。

Fcitx 5をインストールするには、端末を起動して次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install fcitx5-mozc kde-config-fcitx5
$ im-config -n fcitx5

ログアウトして再ログインするとFcitx 5が使用できるようになります図11⁠。

図11 Fcitx5はKDE PlasmaだとおおむねFcitxと変わらない使用感
図11

KDE PlasmaでFcitx 5を使用するメリットとしては、⁠KDEシステム設定⁠⁠-⁠地域の設定⁠⁠-⁠入力メソッド」でFcitx 5の設定変更ができることでしょう図12⁠。

図12 ⁠KDEシステム設定」からFcitx5の設定を変更できる
図12

Xubuntu

XubuntuもFcitxからIBusになったのですが、Fcitx 5をインストールする積極的な理由はないでしょう。

IBusを使い続けたい場合は、端末から次のコマンドを実行するといいでしょう。

$ gsettings set org.freedesktop.ibus.panel xkb-icon-rgba '#ffffff'

これでIBusアイコンにある文字が濃い青から白くなり、見やすくなります。

Fcitx 5を使用したい場合は次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install fcitx5-mozc
$ im-config -n fcitx5

ログアウトして再ログインするとFcitx 5が使用できるようになります。

Ubuntu MATE

Ubuntu MATEもIBusのまま使用するのがいいでしょうが、Fcitx 5に切り替える方法は前出のXubuntuと同様です。

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