今回はUbuntuの中でも基本中の基本アプリケーションである「ファイル(Nautilus) 」をあらためて紹介します。よく使うからこそ、さまざまな機能を知っておくと使い勝手が向上するでしょう。
「ファイル」とその歴史
「ファイル」はGNOMEデスクトップ環境のファイルマネージャーで、GNOMEのアプリケーションの中でも老舗中の老舗です。といっても1.0にはなく、1.4から導入されました。以後20年以上開発が継続されています(図1 ) 。前回 デスクトップ環境を取り上げたときに触れたとおり、同じく老舗のgeditの地位が危うくなっており、最古参クラスとなりそうです。厳密にいえば「設定(gnome-control-center) 」も古いのですが、これはアプリケーションと分類していいのか悩ましいところです[1] 。
[1] 軽く調べただけなので見落としがあるかもしれませんが、一番古いGNOMEアプリケーションは「電卓」です。ただこれはGNOME向けに開発されたわけではないようで、一番古いGNOMEアプリケーションとするのは微妙です。よって「端末」「 設定」「 gedit」が最も古いといえそうです。
図1 20年前にリリースされたRed Hat Linux 8.0のNautilusはバージョン2.0.6だった
それはさておき、歴史が長いということはそれだけさまざまな変更が加えられてきたということです。第669回 で紹介したデスクトップフォルダーの削除が近年では一番大きな変更点でしょう。
本連載はご覧のとおり次回700回を迎える長期連載ですが、意外と「ファイル」に言及した回がありません。調べてみると12年前の第131回 くらいでしょうか。これも全面的に紹介されているわけではありません。というわけで、今回あえて詳しく紹介してみることにします。
「ファイル」は英語では「Files」で、旧名ないし内部名は「Nautilus」です。本稿でも「Nautilus」としたいところですが、「 ファイル」とします。かぎかっこ付きなのは一般的なファイルと区別するためです。
「ファイル」の画面構成
「ファイル」の画面構成は最近の一般的なGNOMEアプリケーションと同じように、上部のヘッダーバー、左のサイドバー、残りの部分の表示領域に分かれています(図2 ) 。
図2 一般的な「ファイル」の表示状態
ヘッダーバーで一番多くの表示領域を取っているのがパスバーです。ファイルやフォルダーの場所がわかりやすい表示になっていますが、Ctrl+lキーを押すと絶対パスで表示されます(図3 ) 。
図3 Ctrl+lキーで絶対パス表示されるのはWindowsのExplorerも同じ
パスバーの右にある虫眼鏡アイコンをクリックすると検索モードになります。詳しくは後述します。
その右側に3つあるアイコンのうち、左側が一覧表示とグリッド表示の切り替えで、中央が表示のオプション(図4 ) 、右がハンバーガーメニュー(図5 )でその他の機能を集約しています。
図4 表示オプション
図5 ハンバーガーメニューの内容
左側のサイドバーは、「 最近開いたファイル」「 星付き」に続いて特殊な扱いのフォルダーが並び、あとはマウントした領域とオンラインアカウントの用途で「ファイル」がある場合とブックマークしたフォルダーが並びます。そして一番下に「他の場所」があります。ここをクリックするとマウントしたフォルダーやネットワーク、また表示されないサーバーに接続するための「サーバーへ接続」があります。「 ?」アイコンをクリックすると用例が表示されます(図6 ) 。AppleTalk、FTP、NFS、SMB、SSH、WebDAVなどで接続できます。これはバックエンドにgvfsを使用して実現しており、「 ファイル」の機能というわけではありません。
図6 「 他の場所」と対応しているプロトコル
表示領域で右クリックすると、どこで、あるいは何を右クリックしたかによってメニューが変更されます。そのため右クリックメニューをコンテキストメニューといったりします。
ファイルやフォルダーを右クリックすると、「 星をつける」があります。これで星を付けたファイルやフォルダーがサイドバーの「星付き」に表示されるということになります。同じ操作で星を外すこともできます。
検索
トップバーの横にある虫眼鏡アイコンをクリックすると検索モードになります。検索欄の右にあるアイコンをクリックすると検索パターンを表示でき、よりファイルを見つけやすくなります(図7 ) 。「 フルテキスト」と「ファイル名」があるように、全文検索も可能です。これはtrackerというプログラムが常時起動しており、ファイルやフォルダーの追加や変更などを監視しています。
図7 日付(いつより古い)とファイルの種類と内容で絞り込める
タブ
「ファイル」の便利なところは、タブ機能があるところです。タブはハンバーガーメニューの上中央のアイコンをクリックするか、Ctrl+tキーで新しいタブとして開けます。すでにタブがある場合は、タブを右クリックすると表示されるメニューからも新しいタブが開けますし、タブの左右移動や閉じることもできます。タブの移動はタブのドラッグ&ドロップでもできます。
設定
ハンバーガーメニューの「設定」から設定項目を表示できますが、設定できることは「全般」「 Optional Context Menu Actions(追加のコンテキストメニュー項目) 」 「 Performance(パフォーマンス) 」 「 アイコン表示のキャプション」の4つです(図8 、図9 ) 。設定できる項目は減少傾向にあります。Ubuntu 21.10では翻訳されているところが少ないので、一つ一つ見ていきましょう。
図8 設定項目その1
図9 設定項目その2
全般
Sort Folders Before Files(フォルダーをファイルより前に配置する)…その名のとおりです。Ubuntuではデフォルトでオンになっていますが、Fedoraなどデフォルトでオフになっている場合もあります。
Expandable Folders in List View(一覧表示でフォルダーをツリー表示可能にする)…これは実際に図10 を見たほうが早いでしょう。このような表示ができるようになります。
Action to Open Items(アイテムの開き方)…Double click(ダブルクリック)とSingle click(シングルクリック)から選べます。シングルクリックで開きたい場合はここを変更してください。
図10 ツリー表示
Optional Context Menu Actions(追加のコンテキストメニュー項目)
コンテキストメニュー(右クリックメニュー)に「リンクを作成」と「完全に削除」を追加できます。
Performance(パフォーマンス)
デフォルトではサブフォルダー内の検索(Search in Subfolders) 、サムネイルの表示(Show Thumbnails) 、フォルダー内のファイル数の算出(Count Number of Files in Folders)はパフォーマンスの理由により「このコンピューターのみ(On this computer only) 」となっていますが、リモートを含めたすべての場所(All folders)も対象にするか、あるいは「しない」ようにするかの選択ができます。
アイコン表示のキャプション
これも実際に見てみるのがいいでしょう。図11 をご覧ください。アイコンの表示を大きくすると、設定した順番にしたがって情報が表示されます。
図11 フォルダーにキャプションが表示されている
ブックマーク
ブックマークに追加したいフォルダーがある場合、パスバーのそのフォルダーをクリックするとメニューが表示され、「 ブックマークに追加」があるのでこれをクリックします。
追加したブックマークを右クリックすると、「 削除」や「名前の変更」があります。
複数のブックマークがある場合、ドラッグ&ドロップで順番の変更ができます。
ショートカットキー
ハンバーガーメニューにある「キーボードショートカット」をクリックすると、キーボードショートカットが3ページ分表示されます(図12 、図13 、図14 ) 。
図12 ショートカットキー一覧その1
図13 ショートカットキー一覧その2
図14 ショートカットキー一覧その3
共有機能
共有したいフォルダーを右クリックし、「 ローカルネットワーク共有」をクリックします(図15 ) 。「 このフォルダーを共有する」にチェックを入れると「共有サービスがインストールされていません」と表示されることがありますが、その場合には指示に従ってインストールします。インストールされるのはおなじみのSambaなので、すでにインストール済みで表示されないこともあるでしょう。
図15 共有の設定
あとは共有フォルダーのオプションを選択して「共有を作成」をクリックします。2つのオプションのうち両方にチェックを入れると、誰でもファイルの読み書きができる共有フォルダーになります。
共有をやめる場合など、設定の変更はプロパティから行えます。
本来はこの説明でおしまいなのですが、local sharing of any directory under home (~) fails due to permissions という不具合が報告されており、現在は使用できないようです。
拡張機能
実は前出の共有機能や「端末で開く[2] 」 「 送る[3] 」は「ファイル」の拡張機能です。リポジトリを検索すると他にも便利な拡張機能があるので、「 apt search nautilus extension」などのコマンドで探してみてください。
圧縮・展開
ファイルやフォルダーを右クリックすると「圧縮」があり、これをクリックすると3種類の形式から圧縮ファイルを作成できます(図16 ) 。また圧縮ファイルを右クリックすると、「 ここで展開」「 展開先」がありますので、いちいちアーカイブマネージャーを使用しなくてもいいので便利です。
図16 圧縮形式は3種類から選択
複数ファイルのファイル名変更
ファイル名を変更したい複数のファイルを選択し、右クリックから「名前を変更」をクリックすると、一定のルールで名称を変更できます。「 テンプレートを使用して変更」( 図17 )と「文字列を検索して置き換え」( 図18 )から選択でき、前者の場合は簡単に連番をつける場合に便利です。後者の場合は今のファイル名を極力活かして別物にしたい場合に便利でしょう。
図17 テンプレートを使用して変更の例
図18 文字列を検索して置き換えの例
プレビュー表示
「gnome-sushi」というパッケージをインストールし、ファイルやフォルダーを選択した状態でスペースキーを押すとプレビューが表示されます(図19 ) 。「 sushi」はあの鮨(寿司)で、摘む感じが鮨であるとどこかで読んだ覚えがあります。
図19 PDFのプレビュー
フォルダーの英語表記
「ファイル」とは全く関係ない話ですが、ホームフォルダーの「ダウンロード」や「デスクトップ」などのフォルダー名を英語表記にしたい場合は、端末を起動して次のコマンドを実行してください。
$ LANG=C xdg-user-dirs-gtk-update
起動したアプリケーション(図20 )で「Don’t ask me this again」にチェックを入れ、「 Update Names」をクリックすると英語表記になります。
図20 フォルダー名を英語表記にするアプリケーション