今回はストレージ管理ツール「ディスク(GNOME Disks)」を活用する方法を紹介します。第366回をアップデートし、補完する内容です。
「ディスク」とは
Ubuntuにはストレージ管理ツールとして「ディスク(GNOME Disks)」が用意されています(図1)。「ディスク」という名称ではあるものの、昨今HDDがメインストレージのPCというのも少なくなってきて、ディスクの管理というのもふさわしくないので本記事ではストレージ管理ツールとします。
「ディスク」に関しては7年前に第366回で紹介しました。しかし、ユーザーインターフェースが現在と異なることと、第366回ではメニューの紹介になっていて具体的にどう使ったらいいのかわかりにくいので、あらためて紹介します。
なお第645回で紹介したGPartedのほうが高機能ですが、普段使うのであれば「ディスク」のほうがいいでしょう。理由は次項でわかります。
今回は普段使用する機能とストレージを追加するときに使用する機能を分けて紹介します。また第366回にあったUSBメモリーを暗号化する方法もあらためて取り上げます。バックアップは第588回で紹介したTimeShiftを使用するといいでしょう。第588回で述べているとおり、現在はUbuntuのリポジトリからインストールできます。
普段の確認
「ディスク」を起動し、確認したいストレージを選択すると、パーティションの状況と使用量、マウント先などがわかります(図2)。
ヘッダーバーの「ディスク」の文字列の右にあるのがハンバーガーメニュー、ウィンドウの最小化ボタンの左にあるのがケバブメニューです。ほかのGNOMEアプリケーションはハンバーガーメニューがウィンドウの最小化ボタンの左にあることが多いのですが、そうなっていません。ハンバーガーメニューがシステム全体の設定、ケバブメニューが個別の設定という役割には違いはありませんが、このあたりは「ディスク」を使用するに当たって気をつけるところでしょう。
第697回で紹介したように、SSDでは使用量が増えると速度が低下するという特性がありますので、容量に気を配ることは重要です。
またストレージのステータスを示す「S.M.A.R.T.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)」の確認も重要です。ケバブメニューの「SMARTのデータとセルフテスト」から表示できます(図3)。ただし、第697回でも紹介したように現在主流になりつつあるNVMe SSDは非対応ですので、注意してください。
新しいストレージを使えるようにする
PCパーツショップ等で買ってきたストレージをUbuntuから使えるようにするためには、まずUbuntuに認識させます。「ディスク」で表示できることを確認して作業を継続しましょう。
ストレージを使えるようにするには通常、次の3段階を経る必要があります。
- パーティションテーブルの作成
- パーティションの作成
- フォーマット
順に見ていきましょう。今回はデータ用のドライブを前提とします[1]。
パーティションテーブルを作成したいストレージを選択し、ケバブメニューから「ディスクを初期化」を選択します(図4)。
「ディスクを初期化」というメニューが表示されるので、「消去」と「パーティション」を設定します(図5)。「消去」は今回新品を買ってきたので上書きしないことにし、「パーティション」は3つから選べますが、USBメモリーの場合は「MBR/DOS」、そうではない場合は「GPT」でいいでしょう。決定したら「初期化」をクリックします。
確認メッセージが表示されるので、間違いないことを確認して「初期化」をクリックします(図6)。
これでパーティションテーブルが作成できたので(図7)、左下にある「+」をクリックします(図8)。今回はパーティションは分けずに1つにするため、そのまま「次へ」をクリックします。分けたい場合は「残り空き容量」を増やしてください。
どのような形式でフォーマットするかのオプションが表示されます(図9)。「ボリューム名」は、ボリュームラベルを入力してください。用途が決まっているような場合には入力したほうがいいでしょう。
「タイプ」は、デフォルトは「NTFS」となっていますが今回はUbuntuのみで使用するため「Ext4」にします。暗号化もしないので「LUKS」にチェックも入れません。決定したら「作成」をクリックします。
これでフォーマットは完了したので(図10)、「▶」ボタンを押してマウントします(図11)。
暗号化ディスクイメージを用意する
パーティションをまるごと暗号化はしたくないけれど、機密情報を暗号化領域に置きたいという場合には、暗号化ディスクイメージを用意するといいでしょう。作り方も簡単です。
ハンバーガーメニューの「新しいディスクイメージ」をクリックします(図12)。ディスクイメージのサイズとファイル名と保存先を聞かれるので、設定します。図13はディスクイメージサイズが10GB、名前が「encrypted.img」、保存先を「ドキュメント」とした例です。実際には暗号化しているとはわからないような名称にするのがいいでしょう。設定できたら「新しいイメージをアタッチ」をクリックします。あとは前項を参考にして使用できるようにしますが、一点LUKSオプションにチェックを入れるところが異なります(図14)。
いうまでもありませんが、暗号化するためにはパスワードを決定します(図15)。入力の完了後、右上の「作成」をクリックします。しばらく待つと完了します(図16)。
まずはロックを解除した状態でマウントされますが、左下の🔒(鍵)アイコンをクリックするとロックを行います(図17)。左下の🔓(鍵解除)アイコンをクリックし、パスフレーズを入力すると再びロックの解除ができます。
再起動後などにロックを解除したい場合は、「ファイル」で開いてダブルクリックしてパスワードを入力する方法と、「ディスク」のハンバーガーメニューにある「ディスクイメージをアタッチ」(前出の図13参照)でディスクイメージを指定し、パスワードを入力する方法があります(図18)。
この方法で作成したディスクイメージにあるパーティションはroot権限でしか書き込めないため、ユーザー権限で書き込めるフォルダーを作ってそこにファイルやフォルダを置くようにするといいでしょう。
新しいストレージを暗号化する
USBメモリーは紛失しやすいので、大事なデータを入れる場合は暗号化しましょう[2]。
ここまでくると方法は推測できると思いますが、購入状態でパーティションが存在している場合[3]はフォーマット(初期化)からしてもいいですし、パーティションテーブルの作成から行ってもいいです。
「ボリュームを初期化」で「LUKS」にチェックを入れてフォーマットすると完成です。
USBメモリーの場合は、認識した時点で図17と同じダイアログが表示され、入力したパスワードが合っているとマウントするという流れになります。
ショートカット
「ディスク」にもショートカットがあり、ハンバーガーメニューの「キーボードショートカット」から表示できます(図19)。これによるとハンバーガーメニューはアプリケーションメニュー、ケバブメニューはドライブメニューという名称です。