Ubuntu Weekly Recipe

第745回Ubuntuとデスクトップ環境の2022-2023年

新しい年の始めに、Ubuntuで使用できるさまざまなデスクトップ環境について2022年に起こったことと2023年に起こりそうなことを紹介します。

新年のご挨拶

本稿が新年初めのRecipeです。

本連載は15年目に突入しました。15年も続いているといろいろあるもので、昨年の大きな変更点といえばgihyo.jpが大幅にリニューアルされたことでしょう。もうずいぶん前のことのように思えてしまいます。

このリニューアルにより見た目が大幅に変わり、記事が格段に読みやすくなりました。本連載も、普段は多くの方に読んでいただける記事を、たまにはどのあたりにニーズがあるのかよくわからない記事を織り交ぜつつ、内容的にも読みやすい記事をお届けできればと考えています。

今年もよろしくお願いします。

GNOME

では本題です。GNOMEは1年に2回リリースされており、昨年は42と43がリリースされました。Ubuntu 22.04 LTSには42が採用されましたが、不完全なものであったのは第712回で述べたとおりです。一方22.10の43は、おおむね純粋な43であったことは第735回で述べています。

昨年のデスクトップ環境についての記事を読み返してみると、GNOMEに関してはGTK4へのポーティングが進むと言及しており、このとおりになりました。またGNOME Text EditorもGNOME42からデフォルト化(Ubuntuでは22.10からデフォルト化)しています。

おそらく今年も同じような傾向で、各種アプリケーションのGTK4へのポーティングが進んでいくことでしょう。⁠ファイル」という大物が対応できたらあとはサクサク進むのかなと軽く考えていたのですが、⁠ドキュメントビューアー」での進捗を見てると決してそのようなことはなく、開発者には頭が下がる思いです。

今年リリースされる44と45では、さまざまなGTK4にポーティングしたアプリケーションが採用されるでしょう。一方、ポーティングが追いつかないアプリケーションはUbuntu側で別のものに置き換えられる光景が見られるのかもしれません。ちょうどgeditのようにです。そう考えると、UbuntuもGNOMEも大きく変革するタイミングなのでしょう。

また、これもおそらくですがGNOME Shellのユーザーインターフェースは今年も引き続き大きく変わっていくものと思われます。

直接GNOMEとは関係ありませんが、GIMPも今年中にはバージョン3のリリースを期待したいところです。こちらはGTK3へのポーティングが完了しているバージョンです。誤植ではないことを示すためにもう一度言及しておきますが、GTK4ではなく3です。GIMPの27周年記念エントリーには、GIMP 3.0のリリースを早期に行うには寄付が必要などと述べられていたりします。

KDE

ここでのKDEはデスクトップ環境ではなくプロジェクトですが、この時期には昨年の大きな変更点と今年のロードマップが公開されている……予定でした。残念ながら後者は本記事の掲載時点で未公開のようです。

Wayland対応は進んだものの、結局は今年に持ち越しとなりました。またQt6へのポーティングが進んでいる段階で、少なくともPlasma 6はリリース予定となっています。

Plasmaを採用したSteam Deckが昨年日本でも発売開始したのは、昨年の大きなトピックでしょう。インストールされているのはArch LinuxベースのSteamOS 3.0です。そこで、Ubuntuに入れ替えてみた的な記事の執筆も考えてみたのですが、あまりゲームをしない筆者には手が出ませんでした。

Xfce

Xfceは昨年12月15日に最新バージョンの4.18がリリースされました。よってXubuntu 23.04はこのバージョンがベースとなるでしょう。すぐにでも試したい人向けにPPAも公開されています図1⁠。少し試した限りでは、特に問題なく動作しています。

図1 Xfce 4.18にアップデートしたXubuntu 22.10
図1

全体的には細かな使い勝手の向上といったところですが、ファイルマネージャーである「Thunar」に関しては、多くの変更点が盛り込まれています。詳細な変更点は前出のリリース記事をご覧ください。

今年は次のバージョン(4.20)の開発を進めていく年になるでしょう。おそらくですが、4.18と同じく細かな使い勝手を向上していくものと思われます。

LXQt

LXQtは昨年4月に1.1.0が、11月に1.2.0がリリースされています。Lubuntu 22.04 LTSのLXQtはバージョン0.17.0という1.0.0よりも前のバージョンだったため、LTSユーザーは寂しい思いをしているかもしれません。その場合は公式で用意されているPPAを追加して1.2.0にアップデートするといいでしょう図2⁠。

図2 LXQt 1.2.0にアップデートしたLubuntu 22.04 LTS
図2

LXQtは、もともとQtありきのデスクトップ環境で、Qt6へのポーティングも積極的に行われています。次のバージョンである1.3.0ではQt 6ベースになることが示唆されています。

MATE

MATEは昨年のうちに新リリースがあるものと思っていましたが、蓋を開けてみるとありませんでした。よってUbuntu MATE 22.04 LTSのMATEは1.26でした。開発版である1.27は11月にリリースされているため、今年こそ1.28を期待したいところです。

ではUbuntu MATEも特に変更がないのかといわれるとそんなこともなく、興味深い変更が多数盛り込まれています。個人的に気に入っているのはUbuntu MATE 22.04 LTSから取り込まれた人工知能が生成した背景(壁紙)です。22.04 LTS向けの壁紙はリリースノートからダウンロードできます。22.10に関しては開発者のTwitterポストで見られます。

Cinnamon

Cinnamonは昨年5.4と5.6の2バージョンがリリースされました。基本的にはあまり大きな変更点はないのですが、5.4ではウィンドウマネージャーであるMuffinがMutter 3.36ベースになりました。もともとは3.2ベースだったので、かなりのジャンプアップです。なかなか大きな決断でしたが、より安定した動作が見込まれます。

Ubuntu Weekly Topicsの2022年12月9日号で既報のとおり、Ubuntu Cinnamon Remixが公式フレーバーになりそうです図3⁠。CinnamonがUbuntuユーザーにも身近なものになっていくでしょう。

図3 公式フレーバーになる最後のRemix(になる見込み)のUbuntu Cinnamon Remix 22.10。Cinnamonのバージョンは5.4系列
図3

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