Ubuntu Weekly Recipe

第889回Zorin OS 18とは何か

今回はUbuntu派生のLinuxディストリビューション、Zorin OS 18を紹介します。

Zorin OS 18とは

Windows 10サポートは2025年10月14日に終了しました。ギリギリWindows 11がインストールできないようなPCであっても、Ubuntuであればそれなりに動作すると期待できることを示したのが第885回です。多くの方に読んでいただけたようでありがたい限りです。

また「Zorin OS 18」Windows 10サポート終了の10/14にリリース⁠⁠、2日間で10万ダウンロード突破も注目を集めたようです。サポート終了日にリリースをぶつけるというのは、なかなかにキャッチーです。

どうもこのアピールが功を奏したらしく、1ヶ月ちょっとで100万ダウンロードを達成したそうです。これだけ注目を集めているのであれば、Zorin OS 18とUbuntuとの違いを紹介しないわけにはいきません。

Zorin OS 18のデフォルトのデスクトップは図1です。確かにWindowsとの親和性を感じます。

図1 Zorin OS 18のデスクトップ

インストール

ダウンロード元の情報は前出の記事にあるのでそちらを確認してください。本稿では、インストーラーが手元にある状態から解説を始めます。

インストーラーを起動すると、少々驚きます。なんと、以前のインストーラーであるUbiquityを今でも採用しています図2⁠。では22.04 LTSベースなのかというと、そういうわけでもありません(詳細後述⁠⁠。

図2 Zorin OS 18のインストーラーはUbiquity

そして、メニューが日本語化され、日本語入力も可能となっています図3図4⁠。日本語ユーザー的にはいたれりつくせりです。

図3 ライブイメージの時点で日本語化されている
図4 Mozcもセットアップ済みで日本語が入力できる

インストール方法はUbiquityそのままなので、特に解説する必要もないでしょう。

ベースを探る

インストーラーから起動しても、インストール後も、ぱっと見た目では何をベースにしているのかわかりにくいです。

時計をクリックすると、図5になりました。これはGNOMEで確定です。

図5 このメニューはGNOME Shellのもの

GNOMEであるということは、このデスクトップのレイアウトはGNOME Shellの拡張機能を組み合わせて構成されていると推測できます(詳細後述⁠⁠。また「設定⁠⁠-⁠システム⁠⁠-⁠このシステムについて⁠⁠-⁠詳細」をクリックすると、図6になりました。通常のGNOMEであればGNOMEのバージョンがここに表示されますが図7⁠、これを意図的に隠蔽しているのはGNOMEであることを隠したいのでしょうが、あまり評価できることではありません。

図6 Zorin OS 18の「システムの詳細」
図7 Ubuntu 24.04 LTSの「システムの詳細」

カーネルのバージョンからいっても、Ubuntu 24.04 LTSであることは明白です。

パッケージ

Ubuntu派生のLinuxディストリビューションで、パッケージ関連で真っ先に調べるべきなのは、snapを採用しているかです。Linux Mintをはじめ採用していないものが多いのですが、Zorin OS 18はどうでしょうか。

案の定、snapパッケージはインストールされていませんでした図8⁠。

図8 snapパッケージはインストールされていない

UbuntuではFirefoxがsnapパッケージなので、snapを採用しないということは別のWebブラウザーを使用する必要があります。Zorin OS 18ではBraveを採用していました。Google ChromeやMicrosoft Edgeと同じくChromium派生のWebブラウザーで、オープンソースでマルチプラットフォームです。リリースされているパッケージをそのまま使用しています。

メーラーはEvolutionがインストールされています。最近あまり聞かなくなりましたが、実際にはWebメールを使用する機会が多くなったので特に問題はないでしょう。シンプルなメーラーとしてはGearyもあり、こちらもおすすめです。

また「アプリセンター」はsnapパッケージなので、⁠GNOME)ソフトウェア」が採用されています。ほかのエディター等のパッケージはこれといった特徴はなく極めて妥当な選択です。

専用アプリは特徴的なものは前出の記事で紹介されています。⁠Web App」は記事内で詳細に解説されているので省略します。

オンラインアカウントのOneDrive対応はZorin側で大きく手を入れている形跡はなかったので、第810回で紹介したように個人用アカウントには対応しないと思われます。

「Windows App Support」の実態はBottlesです。検証してみたところ、Zorinに含まれているのは「ソフトウェア」で開くためのショートカットだけであり図9⁠、Flatpakパッケージをインストールしていました。Bottlesだとトーフになっているフォントの修正が難しいため図10⁠、Winetricksを使用したほうがいいのではないか、というのが率直な感想です。

図9 Windows App SupportはBottlesをインストールする「ソフトウェア」を起動するためのショートカットで、インストール作業が必要
図10 Bottles経由でサクラエディタを起動したところ。フォントがトーフになっている

また外見を変更するツールや図11⁠、スマートフォンとの連携ができるアプリ図12も追加されています。

図11 外観の設定ツール。無料版だとできることは少ない
図12 Zorin ConnectはKDE Connectベース

Zorin OS 18を使用するべきなのか

Zorin OS 18のルック&フィールを気に入っているのであれば問答無用で使用すればいいでしょう。そうでもない場合は、今このタイミングでUbuntu 24.04 LTSベースの非公式派生版をインストールすべきかどうかの判断は難しいです。来年4月には次のバージョンの26.04 LTSがリリース予定なので、サポート期間を重視するなら今からインストールするのであれば25.10がよさそうであるという判断は大いにありえます。

Ubuntuの見た目をZorin OS 18っぽくする

前述のとおりZorin OS 18のレイアウトはGNOME Shellの拡張機能を組み合わせて構成されています。ということは、類似した拡張機能をインストールすれば、素のUbuntuであっても似せることも可能です。

まずUbuntu 25.10または24.04 LTSに、⁠Extension Manager」⁠パッケージ名はgnome-shell-extension-manager)をインストールします。

Extension Managerを起動し、Dockを下に表示するDash to Panelをインストールします図13⁠。2番目に表示されるのが紛らわしいで気をつけください。これでぱっと見それっぽくなりました図14⁠。

図13 Dash to Panelをインストールする。ちなみにこれはZorin製
図14 これだけでそれっぽくなる

続けてArcMenuをインストールします図15⁠。左から2番目に新しいアイコンが追加されました図16⁠。

図15 ArcMenuをインストールする
図16 左から2番目に追加されたのがArcMenu

左端の「アプリを表示」を消すには、⁠アプリを表示」を右クリックしてメニューを表示し、⁠Dash to Panel設定」をクリックします。そして「"アプリケーションを表示"ボタン」「表示」をクリックすると非表示になります図17図18⁠。

図17 ⁠Dash to Panel設定」をクリックする
図18 表示/非表示メニューがずらずらと並んでいる

これでだいぶZorin OS 18に近づきました図19⁠。こちらも検討してみてください。

図19 お手軽にZorin OS 18/Windowsに近づけた

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