GitHub⁠エージェントを指揮するための新しいビジョン「Agent HQ」発表 —⁠—Agentsページの刷新やGitHub Copilotのカスタムエージェントの作成も可能に

GitHubは10月28日、コーディングエージェントを既存のGitHubフローにネイティブに対応させるための新しいビジョン「Agent HQ」と、これを実現するため一連の新機能や改善を発表した。

この発表はGitHubの年次イベントGitHub Universe 2025で行われたもの(以下の動画はオープニングキーノート⁠⁠。イベントにあわせてGitHub関連のChangelogが数多くリリースされたことを先に触れておく。

エージェント対応のための新しいビジョン「Agent HQ」

GitHubは現在、平均すると毎秒新規登録者がいるような状況で、直近1年のユーザー数の増加は3600万にのぼり、ユーザー数は全体で1億8000万になっている。そのようなか新規登録者の80%が最初の1週間でGitHub Copilotを使っており、エージェントは単なるツールではなく、開発体験に不可欠なものとなっているという。

そこでGitHubは、エージェントをGitHubフローへ(ネイティブ)統合し、複雑なタスクを並列処理する複数エージェントのオーケストレーションを実現するため、そのビジョンとして「Agent HQ」を掲げた(HQはHeadquartersの略と考えられる⁠⁠。

もちろん、これまでのGitHubの機能やワークフローも引き続き利用できることに変わりはないが、Agent HQによってGitHubをエージェントの司令本部とすることを構想している。それによって開発者は複数のエージェントを効果的に管理できるようになる。ちなみに今回ブログ等で使われたスローガンは「Orchestrate any agent, any time, anywhere.」となっている。

Agent HQを実現するため今後数か月のうちに、Anthropic/ClaudeOpenAI/CodexGoogle/Jules(Gemini)Cognition/Devin、xAIなどの非同期コーディングエージェントをGitHub内で直接利用できるようにしていくことを紹介した。利用にはGitHub Copilotの有料サブスクリプションが必要となる。

Agent HQが本格的に利用できるようになると、たとえば、Claude SkillsをGitHub上で利用することも可能になるようだ。

現時点でAgent HQを体験できる機能として、GitHub Copilot Pro+が必要だが、VS Code Insidersのエージェントセッションビューを通じて直接統合していることを紹介している。VS Code側からOpenAI Codexへタスク割り当ても可能となっている。

ミッションコントロール

エージェントを指揮するためにAgent HQは、エージェント選択・タスク割り当て・タスクの並列管理をおこなう「ミッションコントロール」という概念を中核に据える。これは統合コマンドセンターとして機能し、エージェントが取り組んでいるGitHub上のタスクだけではなく、VS Codeやモバイル、CLIにまたがってタスクを管理することを可能にする。

このミッションコントロールをGitHub上でスムーズにおこなうために、今回、GitHubのCopilot/Agentsのタスクページを刷新し、特定タスクのCopilotのアクティビティを一画面で把握できるようになった。セッションログのすぐ隣にプルリクエストの「概要」タブと「変更されたファイル」タブが表示されるため、ページを離れることなく関連情報を確認できる。

なお、タスクページでのCopilotの応答性が向上している。セッション実行中に入力を行うと、現在のツール呼び出しが完了したあとCopilotがその入力に適応するようになった。また、プルリクエストページのCopilotのコメントに移動せずに、タスクページのチャットに入力するか、⁠変更されたファイル」で直接コメントを追加することで、Copilotにフィードバックを提供できるようになった。チャットを入力すると、@copilotへのメンションが自動で追加される。

なお、変更されたファイル上で行番号を選択すると、その行番号がプロンプトの入力欄に入力される。

Copilotページ以下、左側に表示される新しいタスクビューでは、各タスクのステータスを一目で確認できるようになり、必要あればクリックすることで移動できる(以下の右図は、メニューを折りたたんだ状態。そのときには、エージェントのセッションの状態を確認するためのボタンが表示される⁠⁠。これにより、特定のタスクでユーザーの入力を必要なときにすぐにそのタスクに移動できる。なお、各タスクの詳細メニューからプルリクエストに直接アクセスすることもできる。

エージェントのタスクの登録方法も増えている。GitHubのユーザーホームであるダッシュボードから直接タスクを登録できるようになった/taskが必要⁠⁠。また先月GitHubのモバイルアプリでも新規のエージェントタスクを作成できるようになっている

メモGitHubのホームのダッシュボードもアップデートした。すべてのエージェントタスクのステータスが表示されるようになり、新しいプルリクエストとIssueを一覧表示するようになっている。

GitHubのAgentsのタスクページ右上の「Code」ボタンからは、Codespaces、VS Code InsidersまたはGitHub CLIでエージェントセッションを開くためのリンクや情報が表示される(VS Code Insidersでエージェントセッションにアクセスするには、VScode Insidersの最新バージョンと、GitHub Copilot Chat拡張機能およびGitHub Pull Requests拡張機能のインストールが必要⁠⁠。

さらに、新しいブランチコントロールにより、エージェントの生成コードに対してCIやその他のチェックを実行するタイミングを詳細に監視できるようになっていたり、アイデンティティ機能により、チーム内のエージェント操作に対してアクセスとポリシーを管理できるようになっている。

サードパーティアプリとの連携においては、これまでのAtlassian Jira、Microsoft Teams、Azure Boards、Raycastとの連携を随時可能にしてきたが、今回新たにSlackLinearと連携できるようになった。

Slack用GitHubアプリでは、GitHub Copilotコーディングエージェントと連携し、Slackの会話から直接プルリクエストを生成できるようになった。

また、Linearのプロジェクトの課題を、非同期でCopilotコーディングエージェントに割り当てられるようになった。

Universe 2025にあわせて発表されたVS Codeの新機能と最近の改善

ミッションコントロールはVS Codeにも搭載されることが案内されている。VS Code、Copilot CLI、GitHubで実行中のすべてのエージェントのタスクを、VS Codeのエージェントセッションのビューで一覧表示できるようになる。

現時点では今回の発表にあわせてアップデートされた最新のVS Code InsidersでCopilot CLIとOpenAI Codexのみが対応している。なお前述したとおり、Codexを使うには現在Copilot Pro+サブスクリプションが必要となる。

今回あわせてVS Code Insiderにいくつかの新機能が追加された。

Planエージェント

複雑なコーディングタスクへの準備を強化するため、Planエージェントが追加された。開発開始前にタスクを分析し、ステップに分解し、実装計画を作成するのに役立つとのこと。

Planエージェントを使うには、VS Codeでチャットを開いて、プロンプト入力欄左下のエージェントの選択メニューから「Plan」を設定する。

ハンドオフ機能

計画を確定したら、すぐに実装を開始するか、後で使用できるように保存できる。その際、Planエージェントは、カスタムチャットモードの新しいハンドオフ機能を使うことができる。ハンドオフを使うと、チャットモード間の遷移時に次のステップを提案するガイドをおこなえるようになる。具体的には、チャットの応答が完了した際にハンドオフボタンが表示され、関連するコンテキストと事前入力されたプロンプトを使って、次のモードに移動できるという。

ハンドオフは、以下のような複数のステップで構成される開発ワークフローにおいて、次のタスクに導くのに役立つとのこと。

  • 計画→実装:計画モードで計画を作成し、実装モードにハンドオフしてコーディングを開始する。
  • 実装→レビュー:実装を完了したら、コードレビューモードに切り替えて品質とセキュリティの問題を確認する。
  • 失敗するテストの作成→成功するテストの作成:レビューしやすい失敗するテストを作成し、そのテストが通るように必要なコードを実装してから引き継ぐ。

ハンドオフを定義するには、チャットモードファイルでフロントマターに設定を追加するかたちになる。詳ししくはドキュメントを参照のこと

サブエージェント

さらに、新たにサブエージェントが導入された。チャットセッション内でサブエージェントを呼び出し、サブエージェントに特定のタスクを委任できるようになる。サブエージェントはユーザーの操作なしで動作するため、調査・分析・コンテキスト収集などのタスクに最適とのこと。Planモードでは、調査ステップにおいて利用されているという。

サブエージェントはタスクを完了すると、結果をメインチャットセッションに返すことになる。サブエージェントは独自のコンテキストウィンドウを持つため、メインチャットセッションでのコンテキスト管理の最適化もできるとのこと。

メインエージェントからサブエージェントを呼び出すには、#runSubagentツールを使う。具体例として「このアプリで実行可能な認証メカニズムについて調査を実施してください #runSubagent。調査結果をまとめ、最適なオプションを提案してください」といった使い方を挙げている。

なお、サブエージェントからのサブエージェントの呼び出しはサポートされていない。

Agents.mdファイルによるカスタムエージェント

VS Codeでは、AGENTS.mdファイルを使ってカスタムインストラクションを設定することでカスタマイズさせてエージェントを動作させることができる。たとえば、明確なルールとガードレールなどを設定することで、毎回プロンプトを再入力することなく、GitHub Copilotの動作を制御できる。

GitHub MCPレジストリの利用

MCPサーバーを発見・利用するためのGitHub MCPレジストリが、VS Codeから直接利用できるようになっている。Stripe、Figma、SentryなどのMCPサーバーをワンクリックでインストール、有効化できる。エージェントをカスタマイズすれば、システムプロンプトとツール指定することもできる。

GitHubやCopilot CLI上でカスタムエージェントが作成可能に

GitHub CopilotやCopilot CLIにおいて、様々なカスタムエージェントを作成できるようになった。

Markdownファイルを利用してCopilotコーディングエージェントを簡単にカスタマイズできる。リポジトリ内の.github/agentsまたは{org}/.githubリポジトリに構成ファイルを追加することで、エージェントのペルソナを定義できる。さらにプロンプト、ツール選択、MCPサーバーを設定することで、特定のユースケースに合わせて最適化できる。

なお、Copilot CLIは~/.copilot/agentsにあるカスタムエージェント設定も認識する。

たとえば、ReactやVueを使った開発においてチーム規約を適用するフロントエンドエンジニアのサブエージェントや、カスタムMCPを使用してGitHub CLIで追加タスクを自動化するエージェントを作ることができるという。

この指定方法のカスタムエージェントは、GitHub上のCopilotコーディングエージェント、Copilot CLIですでに動作し、将来のVS Codeでも可能になる予定(VS Code Insiderではすでに作成できるようだ⁠⁠。

GitHub Code Quality —⁠—組織内での保守性⁠信頼性⁠テストカバレッジの改善を促す

組織向けの新しい機能として、あらゆるプルリクエストを改善の機会に変えるGitHub Code Qualityの提供がパブリックプレビューで開始された。GitHub Enterprise CloudとTeamで利用できる(Enterprise Serverは現在のところ未対応⁠⁠。なお、プレビュー中は、無料で利用できるが、スキャン時にActions分の料金が発生する。

リポジトリの設定でGitHub Code Qualityを有効化すると、次のことが可能になる。

  • より実用的な検出結果:CodeQLベースの品質ルールにを使って、Java、C#、Python、JavaScript、Go、Rubyにおける保守性と信頼性の問題を検出する。
  • コンテキストに基づいたレビュー:プルリクエスト内で品質に関する検出結果を直接確認し、すぐに対応できるガイダンスを提供する。
  • 品質スコアで進捗状況を追跡:品質リポジトリビューでは、発見事項がルールごとにグループ化されるため、修正の優先順位付けが容易になる。また、信頼性と保守性のスコアでは、検出した事柄が重大度でまとめられ、改善点の絞り込みに役立つ。

これらは、プルリクエストとリポジトリビューの両方でコード品質に関する実用的な洞察を与えるという。

なお今後も機能が追加されるとして、組織レベルのダッシュボードと大規模コードの品質を管理するための機能、テストカバレッジメトリクスの提供、APIによるデータ取得、プルリクエストの品質レコメンデーションによる静的解析の結果の補完を挙げている。

Copilotによるコードレビューは⁠全体像を把握してからレビューを行うように改善

プルリクエスト上で可能なCopilotコードレビューがアップデートされた。エージェントによる検出とツール呼び出しをCodeQLや主要なリンター(ESLintから始めるとのこと)と統合して、プロジェクト全体のコンテキストを踏まえた精度の高いレビューを提供するようになった。この機能はパブリックプレビューで個人の有料Copilotユーザーはデフォルトで有効になっている。組織向けのライセンスでは管理者が設定できる。

今回、エージェントツールの呼び出しを使って、ソースファイル、ディレクトリ構造、参照など、プロジェクトの全コンテキストを事前に収集できるようになったため、変更が全体像の中でどのように位置づけられるかに基づいて修正が提案されるようになった。品質とセキュリティの向上に寄与するようになり、手作業のレビュー負荷を抑えたままマージ準備まで進められる。そしてGitHub.comと主要なエディタを横断してサポートしているため、コードの作成からレビュー、マージまでにいたるまで一貫して作業できる。

なお、レビュー基準や優先順位はinstructions.mdやcopilot-instructions.mdといったカスタムインストラクションファイルで、独自のレビュー基準や優先順位を設定できる。

組織向けのCopilot使用状況メトリクスダッシュボード

組織としてGitHub Copilotがどのように利用されているかを把握するために、GitHub Copilotメトリクスダッシュボードの提供をパブリックプレビューで開始した。組織全体におけるGitHub Copilotの影響と重要な使用状況メトリクスが表示されるようになった。

エージェントの行動を管理⁠制御する⁠組織向けの「エージェントコントロールプレーン」

エンタープライズ管理者向けに、一貫性のあるAIコントロールを備えた「エージェントコントロールプレーン」の提供がパブリックプレビューで開始された。これはGitHub Enterprise Cloud向けの機能であり、GitHub Copilotやその他のAIシステムに対する組織全体のガバナンスと管理を可能にする。

この機能は、過去24時間のエージェントセッションの種類やタスクの状況の把握を可能とし、拡張された監査ログを使うことで誰の代理でエージェントが動作しているかの追跡もおこなえる。また、カスタムエージェントの標準化やプッシュルール設定にも対応し、エンタープライズ基準でエージェントの運用を統一できる。なお、MCPレジストリのURLを使って共通のMCP許可リストを定義して、一元管理できるようになったことから、複数IDEへの一般提供も予定されている。


冒頭に述べたように、今回の発表はGitHub Universe 2025にあわせたものであり、他にも多数の発表が行われている。詳細はGitHubのChangelogを参照のこと。

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