OSSライセンスの教科書
2018年8月23日紙版発売
2018年8月23日電子版発売
上田理 著,岩井久美子 監修
A5判/328ページ
定価3,168円(本体2,880円+税10%)
ISBN 978-4-297-10035-3
書籍の概要
この本の概要
すでにOSS(オープンソースソフトウェア)はあらゆる機器で使われています。今後,IoT(Internet of Things)機器が普及すれば,数百万台から数百億台というオーダーでOSSが各デバイスで使われるようになります。そこで,本書では,10数年にわたりOSSライセンスを業務面で関わりのある著者が,OSSライセンスの正しい理解,そして我々が何をすべきか,何をすべきでないかについて解説します。企業規模が小さく法務面や知財面で恵まれない現場の方に,OSSを適切に利用するためのヒントが満載です。
こんな方におすすめ
- OSSライセンスを体系立てて理解したいエンジニア
- 自社製品のOSSライセンスの扱いなどを調べているマネージャ,法務担当者
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- オープンソースソフトウェアのライセンスとは
- オープンソースソフトウェア(OSS)とは,コンピュータプログラム(ソースコード)の使用や修正,再配布などは自由に行われてもよいとする考え方であり,それに基づいて公開されているソフトウェアを指します。
- 「OSSライセンスMeetup Vol.1:OSSライセンスの教科書」参加レポート
- 2019年1月9日(水)に開催された「OSSライセンスMeetup Vol.1:OSSライセンスの教科書」の参加レポートを,一般参加者の視点からお届けします。
本書のサンプル
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目次
- 講座 ソフトウェアと知的財産権(岩井久美子)
第I部 基本編 OSSとOSSライセンス
第1章 オープンソースソフトウェアの基本
- OSSの過去と現在
- OSSのもたらす自由と自由を得るための条件
- 利用許諾を得るプロセス
- OSSの定義
- 第1の大きな誤解
- 第2の大きな誤解
- OSSは正々堂々と公明正大に使う
- OSSは「利用する責任を負うコスト」がかかる
- Linuxディストリビューターの登場
- OSSの利用責任は利用者にある
- 誰がOSSを理解すべきなのか
- OSSを利用する意義
- 内製する,既製品を使う,OSSを採用する
- 内製,既製品,OSS ── 選択の指針
- 演習問題
第2章 ソフトウェアライセンスの基本
- ソフトウェアと著作権
- ソフトウェアライセンスの本質
- OSSライセンスの要諦
- 商用ライセンスとOSSライセンスが選択可能になっている場合
- 著作権の観点から見たソフトウェアの類型
- OSSライセンスは既製服に似ている
- OSSライセンサーの思いを知ることの重要性
- 法務・知的財産権の専門家に任せておけばよいわけではない
- 頒布のタイミング
- コラム 「頒布」の意味
- 頒布の事例から考えてみる
- 組み込みシステムやIoT デバイスは頒布の機会が圧倒的に多い
- 演習問題
第3章 寛容型ライセンスと互恵型ライセンス
- ライセンス問題を考える
- OSSライセンスを読むヒント
- 寛容型ライセンスとは
- 寛容型ライセンスの意外な落とし穴
- 互恵型ライセンスとは
- GPL/LGPL──互恵型ライセンスの代表
- 寛容型ライセンスと互恵型ライセンスの比較
- 演習問題
第4章 寛容型ライセンス──TOPPERS,MIT,BSDとApache
- TOPPERSライセンス
- TOPPERSライセンスのまとめ
- 大学の名前が付いたライセンス(1)MITライセンス
- MITライセンスのまとめ
- 大学の名前が付いたライセンス(2)BSDライセンス
- BSDライセンスのまとめ
- Apacheライセンス
- Apacheライセンスのまとめ
- 演習問題
第5章 互恵型ライセンス── GPL/LGPL共通
- はじめに
- 頒布時に守るべき4つの事柄
- ソースコードはソースコードだけではない
- GPL/LGPL 他に条件をつけてはいけない
- 利用許諾されたOSSと渾然一体となったソフトウェアの扱い
- ライセンス両立性問題
- コラム ソフトウェアの保守,脆弱性の視点も大切
- 利用許諾条件の緩和
- GPL/LGPLのまとめ
- 演習問題
第6章 誤解されやすいLGPL
- LGPLを理解するためのポイント
- コラム 静的ライブラリと共有ライブラリ
- インライン関数
- LGPLのまとめ
- 演習問題
第7章 GPL/LGPLバージョン3とAGPLバージョン3
- 再インストール情報開示
- 差別的特許の禁止
- その他の特徴
- GPL/LGPLバージョン3のまとめ
- AGPLバージョン3
- AGPLバージョン3のまとめ
- 演習問題
第8章 GPL違反を考える
- GPL/LGPLライセンス違反についてのFSFの見解
- GPL/LGPL違反で訴訟は起きているのか?
- 演習問題
- コラム
第II部 実務編 ソフトウェア開発とOSS
第9章 OSSと構成管理
- ソフトウェアとの向き合い方
- 「道ばたで拾ったソフトウェア」を口にしない
- ソフトウェアの技術評価
- コミュニティ活動は活発か?
- LTS版があるか否か
- 利用許諾条件の確認
- OSSマトリョーシカ
- 構成管理がすべてのセーフティネットになる
- 避けたいOSSのつまみ食い
- ソースコードスキャンツールを活用する
- ソースコードスキャンツールの注意点
- 演習問題
第10章 OSSライセンスと知的財産権
- OSSが他社の特許を侵害するリスク
- 他社特許への対応
- 問題回避のメカニズムを持つライセンス
- 自社特許の権利行使が制限されるケース
- Linux用のデバイスドライバを作る例
- 自社特許権利行使に懸念を感じた場合
- 演習問題
第11章 ソフトウェアのサプライチェーン問題
- サプライチェーン問題とは何か
- ソフトウェアサプライチェーンの上流にいる人が注意すべき点
- ライセンス情報交換のための標準規格「SPDX」
- ソフトウェアサプライチェーンの下流にいる人が注意すべき点
- 演習問題
第12章 製品出荷・ソフトウェアリリース時の実務
- ソフトウェアリリース前に済ませておくこと
- 実際に使われているOSSの確認(構成管理記録の確認)
- OSSライセンスファイルの例
- ライセンス・著作権表記などの準備
- ソースコード開示の準備
- 製品出荷後の対応
- 演習問題
第13章 OSSと社内体制
- OSSの利用を推進するための組織作り
- 誰も助けてくれない,孤独なエンジニア
- 中央集権型(伽藍型)体制で対応する
- バザール型の体制で対応する
- 社内バザールへの参加者
- 社内バザールにおけるリーダーシップとフォロワーシップ
- 社内バザールでソフトウェア開発者に求められている行動
- 社内バザールで法務・知的財産権の専門家に求められている取り組み
- 社内バザールで品質管理,製品脆弱性対応専門スタッフに求められている行動
- 社内バザールで社外調達担当者(資材・調達部門担当者)に求められている行動
- 社内コミュニティリーダーの役割
- 社内バザールを支える理解のあるマネジャー,エグゼクティブの役割
- 社内バザール作り 第1フェーズ
- 社内バザール作り 第2フェーズ
- 社内バザール参加者すべてに共通する課題
- 演習問題
第III部 戦略編 OSSイノベーション戦略
第14章 新しい技術層の登場── 縁の下の力持ち技術層
- 「縁の下の力持ち技術層」がもたらす経済的恩恵
- 「イノベーションの縁の下の力持ち」のジレンマ1~重要な技術だが顧客から価値を認めてもらえない
- フリーライダーがもたらす災厄
- コミュニティに対する貢献とは何か?
- コミュニティとあなたとの関係
- 嫌われた日本人
- 不適切な人称代名詞
- OSSは自ら助ける者を助ける
- 「イノベーションの縁の下の力持ち」領域に精通するという意義
- 傍観者を脱し,積極的にコミュニティに還元する
- フォークの功罪
- 実際にバグ修正をコミュニティに送るには
- 「独自のイノベーション」開発への貢献
- 演習問題
第15章 独自技術のOSS開発
- 「イノベーションの縁の下の力持ち」のジレンマ2~差異化すると差異化される[項羽と劉邦]
- 事例 AppleTalk
- 事例 Linuxを採用する前のOS
- 劉邦の戦略を展開する
- OSSで自らの技術を開示する価値
- 独自技術をOSS化するにあたって
- 演習問題
第16章 イノベーションとOSS
- 進化──OSSコミュニティの視点
- 「進化」の波に乗る
- ディベートではない,弁証法です!
- イノベーション──OSSの視点
- コミュニティと共創するイノベーション
- コミュニティを創る