OSSライセンスの教科書

[表紙]OSSライセンスの教科書

紙版発売
電子版発売

A5判/328ページ

定価3,168円(本体2,880円+税10%)

ISBN 978-4-297-10035-3

電子版

→学校・法人一括購入ご検討の皆様へ

書籍の概要

この本の概要

すでにOSS(オープンソースソフトウェア)はあらゆる機器で使われています。今後,IoT(Internet of Things)機器が普及すれば,数百万台から数百億台というオーダーでOSSが各デバイスで使われるようになります。そこで,本書では,10数年にわたりOSSライセンスを業務面で関わりのある著者が,OSSライセンスの正しい理解,そして我々が何をすべきか,何をすべきでないかについて解説します。企業規模が小さく法務面や知財面で恵まれない現場の方に,OSSを適切に利用するためのヒントが満載です。

こんな方におすすめ

  • OSSライセンスを体系立てて理解したいエンジニア
  • 自社製品のOSSライセンスの扱いなどを調べているマネージャ,法務担当者

この書籍に関連する記事があります!

オープンソースソフトウェアのライセンスとは
オープンソースソフトウェア(OSS)とは,コンピュータプログラム(ソースコード)の使用や修正,再配布などは自由に行われてもよいとする考え方であり,それに基づいて公開されているソフトウェアを指します。
「OSSライセンスMeetup Vol.1:OSSライセンスの教科書」参加レポート
2019年1月9日(水)に開催された「OSSライセンスMeetup Vol.1:OSSライセンスの教科書」の参加レポートを,一般参加者の視点からお届けします。

本書のサンプル

本書の一部ページを,PDFで確認することができます。

目次

  • 講座 ソフトウェアと知的財産権(岩井久美子)

第I部 基本編 OSSとOSSライセンス
第1章 オープンソースソフトウェアの基本

  • OSSの過去と現在
  • OSSのもたらす自由と自由を得るための条件
  • 利用許諾を得るプロセス
  • OSSの定義
  • 第1の大きな誤解
  • 第2の大きな誤解
  • OSSは正々堂々と公明正大に使う
  • OSSは「利用する責任を負うコスト」がかかる
  • Linuxディストリビューターの登場
  • OSSの利用責任は利用者にある
  • 誰がOSSを理解すべきなのか
  • OSSを利用する意義
  • 内製する,既製品を使う,OSSを採用する
  • 内製,既製品,OSS ── 選択の指針
  • 演習問題

第2章 ソフトウェアライセンスの基本

  • ソフトウェアと著作権
  • ソフトウェアライセンスの本質
  • OSSライセンスの要諦
  • 商用ライセンスとOSSライセンスが選択可能になっている場合
  • 著作権の観点から見たソフトウェアの類型
  • OSSライセンスは既製服に似ている
  • OSSライセンサーの思いを知ることの重要性
  • 法務・知的財産権の専門家に任せておけばよいわけではない
  • 頒布のタイミング
  • コラム 「頒布」の意味
  • 頒布の事例から考えてみる
  • 組み込みシステムやIoT デバイスは頒布の機会が圧倒的に多い
  • 演習問題

第3章 寛容型ライセンスと互恵型ライセンス

  • ライセンス問題を考える
  • OSSライセンスを読むヒント
  • 寛容型ライセンスとは
  • 寛容型ライセンスの意外な落とし穴
  • 互恵型ライセンスとは
  • GPL/LGPL──互恵型ライセンスの代表
  • 寛容型ライセンスと互恵型ライセンスの比較
  • 演習問題

第4章 寛容型ライセンス──TOPPERS,MIT,BSDとApache

  • TOPPERSライセンス
  • TOPPERSライセンスのまとめ
  • 大学の名前が付いたライセンス(1)MITライセンス
  • MITライセンスのまとめ
  • 大学の名前が付いたライセンス(2)BSDライセンス
  • BSDライセンスのまとめ
  • Apacheライセンス
  • Apacheライセンスのまとめ
  • 演習問題

第5章 互恵型ライセンス── GPL/LGPL共通

  • はじめに
  • 頒布時に守るべき4つの事柄
  • ソースコードはソースコードだけではない
  • GPL/LGPL 他に条件をつけてはいけない
  • 利用許諾されたOSSと渾然一体となったソフトウェアの扱い
  • ライセンス両立性問題
  • コラム ソフトウェアの保守,脆弱性の視点も大切
  • 利用許諾条件の緩和
  • GPL/LGPLのまとめ
  • 演習問題

第6章 誤解されやすいLGPL

  • LGPLを理解するためのポイント
  • コラム 静的ライブラリと共有ライブラリ
  • インライン関数
  • LGPLのまとめ
  • 演習問題

第7章 GPL/LGPLバージョン3とAGPLバージョン3

  • 再インストール情報開示
  • 差別的特許の禁止
  • その他の特徴
  • GPL/LGPLバージョン3のまとめ
  • AGPLバージョン3
  • AGPLバージョン3のまとめ
  • 演習問題

第8章 GPL違反を考える

  • GPL/LGPLライセンス違反についてのFSFの見解
  • GPL/LGPL違反で訴訟は起きているのか?
  • 演習問題
  • コラム

第II部 実務編 ソフトウェア開発とOSS
第9章 OSSと構成管理

  • ソフトウェアとの向き合い方
  • 「道ばたで拾ったソフトウェア」を口にしない
  • ソフトウェアの技術評価
  • コミュニティ活動は活発か?
  • LTS版があるか否か
  • 利用許諾条件の確認
  • OSSマトリョーシカ
  • 構成管理がすべてのセーフティネットになる
  • 避けたいOSSのつまみ食い
  • ソースコードスキャンツールを活用する
  • ソースコードスキャンツールの注意点
  • 演習問題

第10章 OSSライセンスと知的財産権

  • OSSが他社の特許を侵害するリスク
  • 他社特許への対応
  • 問題回避のメカニズムを持つライセンス
  • 自社特許の権利行使が制限されるケース
  • Linux用のデバイスドライバを作る例
  • 自社特許権利行使に懸念を感じた場合
  • 演習問題

第11章 ソフトウェアのサプライチェーン問題

  • サプライチェーン問題とは何か
  • ソフトウェアサプライチェーンの上流にいる人が注意すべき点
  • ライセンス情報交換のための標準規格「SPDX」
  • ソフトウェアサプライチェーンの下流にいる人が注意すべき点
  • 演習問題

第12章 製品出荷・ソフトウェアリリース時の実務

  • ソフトウェアリリース前に済ませておくこと
  • 実際に使われているOSSの確認(構成管理記録の確認)
  • OSSライセンスファイルの例
  • ライセンス・著作権表記などの準備
  • ソースコード開示の準備
  • 製品出荷後の対応
  • 演習問題

第13章 OSSと社内体制

  • OSSの利用を推進するための組織作り
  • 誰も助けてくれない,孤独なエンジニア
  • 中央集権型(伽藍型)体制で対応する
  • バザール型の体制で対応する
  • 社内バザールへの参加者
  • 社内バザールにおけるリーダーシップとフォロワーシップ
  • 社内バザールでソフトウェア開発者に求められている行動
  • 社内バザールで法務・知的財産権の専門家に求められている取り組み
  • 社内バザールで品質管理,製品脆弱性対応専門スタッフに求められている行動
  • 社内バザールで社外調達担当者(資材・調達部門担当者)に求められている行動
  • 社内コミュニティリーダーの役割
  • 社内バザールを支える理解のあるマネジャー,エグゼクティブの役割
  • 社内バザール作り 第1フェーズ
  • 社内バザール作り 第2フェーズ
  • 社内バザール参加者すべてに共通する課題
  • 演習問題

第III部 戦略編 OSSイノベーション戦略
第14章 新しい技術層の登場── 縁の下の力持ち技術層

  • 「縁の下の力持ち技術層」がもたらす経済的恩恵
  • 「イノベーションの縁の下の力持ち」のジレンマ1~重要な技術だが顧客から価値を認めてもらえない
  • フリーライダーがもたらす災厄
  • コミュニティに対する貢献とは何か?
  • コミュニティとあなたとの関係
  • 嫌われた日本人
  • 不適切な人称代名詞
  • OSSは自ら助ける者を助ける
  • 「イノベーションの縁の下の力持ち」領域に精通するという意義
  • 傍観者を脱し,積極的にコミュニティに還元する
  • フォークの功罪
  • 実際にバグ修正をコミュニティに送るには
  • 「独自のイノベーション」開発への貢献
  • 演習問題

第15章 独自技術のOSS開発

  • 「イノベーションの縁の下の力持ち」のジレンマ2~差異化すると差異化される[項羽と劉邦]
  • 事例 AppleTalk
  • 事例 Linuxを採用する前のOS
  • 劉邦の戦略を展開する
  • OSSで自らの技術を開示する価値
  • 独自技術をOSS化するにあたって
  • 演習問題

第16章 イノベーションとOSS

  • 進化──OSSコミュニティの視点
  • 「進化」の波に乗る
  • ディベートではない,弁証法です!
  • イノベーション──OSSの視点
  • コミュニティと共創するイノベーション
  • コミュニティを創る

著者プロフィール

上田理(うえださとる)

早稲田大学理工学部前期博士課程修了。以後国内電気機器メーカーにてコンピュータ関連機器の商品企画やマーケティングなどに携わる。2003年初頭より家電機器向けのソフトウェア基盤にOSSを活用する業界横断プロジェクトの立ち上げに携わり現在に至る。所属企業ではOSS戦略立案,エンジニア向け教育なども行っている。LinuxCon,Embedded Linux Conference,Open Compliance Summitなど国際カンファレンスでの発表多数。2017年北東アジアOSS貢献者賞受賞。


岩井久美子(いわいくみこ)

監修。
弁護士。曾我法律事務所所属。知的財産権を専門とし,海外進出する日本企業への支援を中心に,北京,上海,マニラ,バンコクなどで渉外法務に携わる。2011年から2014年まで特許庁の外郭団体である独立行政法人工業所有権情報研修館へ出向。国家試験知的財産管理技能検定委員。慶應義塾大学法学部法律学科修了,同大学院法務研究科修了。