かがくのえほん 重力波発見の物語
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荒舩良孝 著
ごみたこずえ 絵 - 定価
- 2,508円(本体2,280円+税10%)
- 発売日
- 2021.1.4
- 判型
- A5
- 頁数
- 176ページ
- ISBN
- 978-4-297-11843-3 978-4-297-11844-0
サポート情報
概要
新しい天文学の幕開けはどうやってもたらされたか?
重力波発見以降はもはや当たり前になりつつある
重力波観測のこれからがわかる!
重力波という考え方がどのように生まれ、
実際にどうやって観測され、
そして、今後どのように発展していくのかという一連の流れを、
やさしい言葉と挿し絵で解説する、サイエンス読みものです。
こんな方にオススメ
- 宇宙観測に興味があるサイエンスファン
目次
第1章 重力の正体に迫る
- 古代の人たちが考えた法則
- 天動説と地動説
- ニュートンの発見した万有引力の法則
- 月は地球に向かって落ち続けている?
- ニュートン力学の矛盾
- 特殊相対性理論から導かれる不思議な世界
- 特殊相対性理論から一般相対性理論へ
- 物質と時空を統一した一般相対性理論
第2章 重力・重力波・ブラックホール
- 重力=時空のゆがみ
- 理論完成の後押しをした水星の近日点移動
- アインシュタインの名を世に広めたエディントンの観測
- 重力波の予言
- 重力波は時空のゆがみの波
- 重力波と潮汐力
- 一般相対性理論とブラックホール
- 最初のブラックホール論争
- ブラックホール論争と恒星の進化
- ブラックホール候補天体の観測
- アインシュタインからの最後の宿題
第3章 最初の挑戦
- 重力波観測の可能性がある天文現象
- 重力波観測に挑戦したウェーバー博士
- ウェーバー博士の重力波観測
- 幻に終わった重力波の発見
- 日本の重力波研究の幕開け
- 謎の天体パルサーの発見
- パルサー=中性子星
- 重力波の間接的な証明
第4章 重力波観測競争
- ウェーバー・バーの限界
- 重力波観測の新たな手法
- レーザー光線による重力波測定法
- 世界に広まるレーザー干渉計法
- カリフォルニア工科大学の参入
- 40mレーザー干渉計の製作
- LIGO計画発足
- なかなか進まない計画
- 2代目総括責任者の就任
- ついに動き出したLIGO
- イニシャルLIGO
- 日本の重力波観測研究の軌跡
- 足踏みが続いた大型重力波望遠鏡計画
第5章 ついに観測された重力波
- アドヴァンスドLIGOへグレードアップ
- その日は突然やってきた
- 驚きの初観測結果
- たった1度で重力波の存在を証明
- 次々に観測される重力波
- アドヴァンスドVirgoも始動
- 重力波観測の功績にノーベル賞
第6章 本格的なマルチメッセンジャー観測の時代へ
- 中性子星どうしの合体による重力波も観測成功
- GW170817の発生場所の絞りこみ
- 観測直後に始まった重力波源探し
- 発見された重力波対応天体
- マルチメッセンジャー観測でとらえた思わぬ現象
- 私たちの体をつくる元素のつくり方
- 鉄より重い元素はどこでできる?
- 重い元素がつくられる現場を初観測
- 中性子星の内部構造もわかるかも?
第7章 当たり前になってきた重力波観測
- 増加した重力波信号の観測数
- 第3の衝突現象の発見か?!
- 2つの特徴をもつ大型重力波望遠鏡
- 低温状態で熱のノイズに強いサファイアの鏡
- アジア初の大型重力波望遠鏡始動
- 超新星爆発からの重力波観測への期待
- 5台目の大型重力波望遠鏡も計画中
第8章 これからの重力波観測
- 第3世代の重力波望遠鏡計画
- 宇宙重力波望遠鏡
- もう1つの重力波、原始重力波
- 遠くからの光で宇宙の過去を知る
- 宇宙の理解に貢献した宇宙背景放射の研究
- 幻に終わった原始重力波観測
- 原始重力波の痕跡をとらえろ
- 原始重力波の直接観測を目指して
プロフィール
荒舩良孝
1973年、埼玉県生まれ。科学ライター/ジャーナリスト。「たくさんの人たちに科学をわかりやすく伝える」をテーマに、1995年から活動を開始。基礎から応用まで科学の現場を取材し、書籍や記事を多数執筆。おもな著書に『5つの謎からわかる宇宙』(平凡社)、『思わず人に話したくなる 地球まるごとふしぎ雑学』(永岡書店)、『美しい宇宙入門』(宝島社)など。
ごみたこずえ
1982年、埼玉県生まれ。大学や大学院で物理学を専攻し機械設計会社で8年間勤務。幼少期に科学の楽しさを教えてくれた絵や絵本に携わりたいという思いから2015年に絵本作家・イラストレーターに転職。2016年に文芸社えほん大賞優秀賞を受賞。
著者の一言
【「はじめに」より】
宇宙にある天体を観測する手段として、あなたは何を思い浮かべますか。真っ先に思いつくのは、光を観測する望遠鏡でしょう。実は、最近、科学と技術の進歩によって、新しい観測手段が生まれています。その1つが重力波を観測する重力波望遠鏡です。
重力波は、1915年に物理学者のアルバート・アインシュタインが完成させた一般相対性理論から導かれるもので、時空のゆがみが波のように周囲に伝わっていく現象です。その重力波は100年の時を経て、2015年9月に初めて観測されました。
重力波の初観測や、重力波望遠鏡の建設に関わった研究者がノーベル物理学賞を受賞したことは、大きなニュースとして報道されたので、何となく知っている人とも多いでしょう。でも、重力波が観測できるようになるまでには、とても長い時間がかかっていることを知っている人は少ないと思います。
日常生活を普通に送っている人にとっては、重力波が観測できても、できなくても、それほど問題にはなりません。というよりも、影響はまったくないでしょう。では、なぜ、物理学者たちは重力波を観測しようとしたのでしょうか。そのことがわかってくると、科学がもっとおもしろくなりますし、日々、研究を進めている研究者のことも、より身近に感じられると思います。
「重力波って何なの?」「ちょっと難しそうだけど、気になる」と思う人は、ぜひ、ページをめくってみてください。自分の知らないことを知ることは楽しいことですし、新しい視点で世の中を眺めることができるようになるはずです。
荒舩 良孝