話題にしてもらう技術 ~90.5%の会社が知らないPRのコツ

著者の一言

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  • 「うちと似たような会社が,メディアで話題になってる!」
  • 「うちの会社もすごいことをやっているのに,どうして話題にならないの?」

そんな疑問を持ったことはないでしょうか。広告を出しているわけでもない,でもメディアで引っ張りだこの会社は,たしかにあります。

たとえば,シェフが訪問して料理を作ってくれるサービス。先日テレビで紹介されていましたが,複数の企業がおこなっているのに,取り上げられるのはたいてい同じ会社です。しかもその会社は,一番はじめに訪問シェフのサービスを始めたわけでも,世界一美味しい料理を作る世界一のシェフがいるわけでもありません。

では,なぜ話題になるのか。どこがあなたの会社と違うのか。その鍵を握るのが「PR」です。

この活動,90.5%の企業が取り組んでいないとお伝えしたら意外ですか?

すでにPRに取り組んでいる企業の多くは,当たり前のようにプレスリリース配信サービスのことを知っています。よって,取り組んでいるかどうかの指標として,今回はプレスリリース配信サービスの登録企業数で考えました。プレスリリース配信サービスの公称の登録社数の上位4社(バリュープレス=71882社,PR TIMES=65000社,アットプレス=22000社,ドリームニュース=10000社)を足し合わせると,16万8882社になります。その数を,企業数(総務省・経済産業省が2022年5月31日に発表した「令和3年度経済センサス-活動調査」の会社企業数約177万社)で割ると,たった9.5%に留まりました。複数の配信サービスに登録している企業もあるので,実数はもっと少ないかもしれませんし,登録者数が非公開の配信サービスのユーザー企業数はカウントされていないですし,企業数の算出方法もほかにもあるので,少しは数字が上下するでしょうが,約90.5%の企業は,配信サービスの利用「さえ」始めていないのが現状なのです。

もちろん,プレスリリース配信サービスに登録することがPRを始めることではありません(ここは誤解しないでいただきたいところです⁠⁠。やるべきことは,ほかにもたくさんあります。ですが,プレスリリース配信サービスでさえ登録していない会社がまだ多いのです。

私が伝えたいのは,⁠今から始めても遅くない」⁠今から始めても十分他社に差をつけられる」ということです。

「うちの会社はすごいから,何もしなくても問い合わせが来て,注目されます」

「自分から『すごい』と情報発信するなんて恥ずかしい。できない人に限って,自分がすごいと吹聴するんだ」

このように考えている方を,この仕事を始めて15年で驚くほどたくさん見てきました。その結果,注目を集められず,売上も思うように伸びず,資金も続かずに,優れた製品を提供する会社が消えていき,情報発信が巧みな会社が生き残る……そんなケースに出くわすことも。これほど悲しいことはありません。

あなたの会社が地味でニッチなビジネスをしていても,その商品やサービスを必要としている相手の間で話題になることはできます。ぜひこの本から,売上向上や会社の存続にすぐにつながるようなヒントを得てください。

また,本書を通じて,今までの情報提供の方法がどのように変化し,注目されるために企業がどのような体制で活動しているのかを理解してもらえればと思っています。それらは,自分自身の勤務先や取引先の理解にもつながりますし,自分が製品やサービスを選ぶときにも役立つ知識になることでしょう。世の中に出回っている情報の受け止め方のヒントにもなると思っています。

さらに言えば,企業の広報担当者やPR会社のスタッフが自分はどんな意味のある仕事をしているのかを周囲に説明できる本としても書いたつもりです。残念ながら,日本国内では広報・PRの仕事の価値が低く見積もられがちです。⁠下請け」⁠雑用係」⁠秘書と兼務でいい」⁠新人がやる仕事」⁠能力はいらない」……そんな誤解も解きたいと思っています。

そんな欲張りな気持ちで,書かせていただきました。

著者プロフィール

加藤恭子(かとうきょうこ)

株式会社ビーコミ代表取締役。日本PR協会認定PRプランナー。日本マーケティング学会常任理事(PR部会リーダー)。サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)。日本広報学会会員。

横浜市立大学卒。青山学院大学 大学院 国際コミュニケーション学修士。

IT系月刊誌,オンラインメディアでの記者・編集者を経て,BtoBのIT企業でPR/マーケティングマネージャーを歴任。外資系テクノロジーベンチャーの日本法人立ち上げにも参画。

2006年6月,外資系テクノロジー企業のマーケティングマネージャーの職を辞し,個人事業としてビーコミュニケーションをスタート。2007年8月より法人化。記者として取材する側,企業の広報担当として取材される側の両方の経験を活かし,スタートアップから多国籍企業までさまざまな企業のPR/マーケティングを支援。数百を超える製品・サービスのPRを支援する中,サポートした企業の8割以上で大きな成果をあげ,口コミで支援先が増加。特にテクノロジー企業の広報の実務支援やアドバイス,コミュニケーション活動のサポートが多い。

各種媒体での執筆活動や企業・団体・大学向けのトレーニング・講演活動もおこなっており,指導実績はのべ1万人以上。

共著に『デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎』『デジタルPR実践入門』(宣伝会議)などがある。