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日本人の平均寿命(0歳時の平均余命)は,平成22年現在で,男79.64歳,女86.39歳に及びます(表)。世界の国々と比較すると,トップクラスの長寿国であることはよく知られています。動物としてのヒトの寿命はわずか26.3歳にすぎないと言われていますから,この40年以上のギャップを埋めているのは,過剰とも言える医療費であることに異論はないでしょう。戦後のわずか60年余りで,50歳代だった日本人の平均年齢がここまで伸びていったわけですが,それは国民医療費の増大と相関関係にあることが見てとれます(図)。2009年度の国民医療費は36兆67億円となり,国民所得に対する割合は10.61%と,とうとう10%を突破しました(GDPの中で医療費の占める割合は7.60%)。
表 主な年齢の平均余命
図 戦後日本の平均寿命と医療費の推移
ところで日本を含むいろいろな国について,対GDP費と,その国の高齢化率の関係をみてみると,対GDP費が日本より多い国はもっと他にもたくさんあるのに(米国は16%,フランスは11%),高齢化率は日本の4分の3以下になっており,日本の医療水準は技術や制度面で極めて高いパフォーマンスを発揮していることがわかります。
これから長いスパンをかけて人口減少へと向かい,少子高齢化が進んでいくなか,この関係はどう変化するのでしょうか? 質の高い医療を保とうとして国民医療費が急騰していくのでしょうか? はたまた医療格差が生まれるのでしょうか,私たちのライフスタイルそのものが変化していくのでしょうか? 様々な角度から検証していくことが,いま求められています。