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確率とは何か?
いまや宝くじや競馬などの賭け事だけではなく,経済やファイナンスに至るまで,語るうえで欠かすことができない確率。その確率とはそもそも何なのでしょうか。本書ではサイコロの賭け,賭けで不利にならないための条件,賞金を自分に有利に分配するための賭け方,そして,確率を語るときに外せない有名な「ギャンブラーの破産問題」等,ホイヘンスが実際に考えた問題を使いながら確率論の神髄に迫ります。
科学者ホイヘンスの「賭けにおける計算について」
ホイヘンスといえば,「ホイヘンスの原理」を思い出す方が多いのではないでしょうか。光の屈折に関する原理で,この原理を作った人がホイヘンスです。ホイヘンスは天文学,時計製作,光の研究に注力し,多くの業績を残しています。そんな中,数学史においても偉大な貢献をする論文を執筆していました。それが「賭けにおける計算について」です。
「確率」「期待値」という言葉がなかった時代,ホイヘンスは「機会」「価値」「比」という言葉を使って賭けを考えていました。驚くべきことに,現代の確率論に通ずる源泉がそこにあったのです。
数学者としてのホイヘンス
数学者としてのホイヘンスの姿を少しだけご紹介しましょう。みなさんはライプニッツという人を聞いたことがありませんか?微分積分学の基礎を発見した人です。その大数学者ライプニッツに数学の指導をしたのもホイヘンスと言われています。
また,振り子のおもりの軌道がサイクロイド曲線の軌跡を描くことを発見したのもホイヘンスです。
ホイヘンスが生きた17世紀は,ライプニッツ以外にもニュートンやデカルトなど錚々たるメンバーが揃っている輝かしい時代でした。その中もホイヘンスは最先端を行く偉大な科学者になっていったのです。
数学的確率論のきっかけ,分配問題
確率という概念ができるきっかけになったといっても過言ではない問題が分配問題です。賞金獲得を目指したゲームをやっていたところ,中断してしまいました。そのとき賞金はどのように分配すればよいかという,よく起こりそうな問題です。何人かの数学者が解こうとしましたが答えが出ず,正解を導いたのはパスカルです(有名なパスカルの三角形も分配問題を解くときに使うことができます)。これに関してパスカルはフェルマーと往復書簡をしています。何度も議論が必要なほど当時の人たちにとっては解くのが難しいやっかいな問題だったのです。しかし,ホイヘンスは「公正な賭け」という概念を使って鮮やかに解いてしまったのです。どのように解いたのか……? ぜひ本書をお楽しみください。
本書で扱っている数学記号は高校数学で出てくる組合せ数(nCk)くらいですので,気楽に賭けをしてみる感覚で読んでみてください。