この記事を読むのに必要な時間:およそ 1 分
人工知能(AI)を使うエンジニアがまだまだ足りない
著者である清水氏は自身のブログでこんな記事を書いています。
いま日本に圧倒的に足りないのは人工知能に詳しい人材
近著『よくわかる人工知能』(KADOKAWA刊)でも,東京大学の松尾豊特任准教授との対談で同じようなことを述べています。このブログで清水氏は,人工知能を扱う人材を,“新しいニューラルネットワーク理論を考える「人工知能研究者」”と“できあがったニューラルネットワークの活用法を考える「人工知能ユーザー」”に分けています。どういうことでしょうか?
人工知能を扱うのは敷居が高い?
人工知能研究の中でも機械学習の話になりますが,機械学習の理論をきちんと学ぶには,少なくとも大学初等レベルの数学知識(関数解析,線形代数,確率統計など)が必要になってきます。新しいニューラルネットワークのアルゴリズムを生み出したり,最適化関数や活性化関数を見つけ出したりする「人工知能研究者」になるのは,確かに敷居が高いと言えるでしょう。
ですが,これらの知識を持っていなければ機械学習を扱えるようにならないのか,というと,実はそうでもないというのが今の状況です。
エンジニア全員が研究者レベルになる必要はない。AIを使ってできることを考えるエンジニアはもっと必要
機械学習,その中でもとくに深層学習(ディープラーニング)がここ最近になって大きな注目を浴びているのは,囲碁対局でAlphaGoがプロ棋士に勝利したとか,画像認識の正解率が人間を超えたなどといった結果の話題性だけではなく,難しい理論を詳しく知らなくてもその技術が使える優れたフレームワークが提供されるようになったからです。本書で使用するChainer,TensorFlow,Deelはその最たるものです。
清水氏が人材を2つに分けたのは,優れたフレームワークがたくさん出てきている今,人工知能(機械学習や深層学習)を扱うエンジニアも棲み分けができるようになってきたということでしょう。
二の足を踏んでいないで,まずは手を動かしてみよう
本書はガチンコで深層学習,機械学習を学ぶ本ではありません。プログラミングに興味のある人が気軽に深層学習の魅力にふれ,人工知能をどう使って,どんな楽しいことができそうか想像力を膨らませるためのガイドブックです。つまり「人工知能ユーザー」を増やすことが本書の一番の目的になります。
最初に解説するコードは,わずか11行。フレームワークを使えばこれだけで深層学習を体験できてしまいます。仕事を奪われてしまうとか,AIに支配されるとか,そういう話だけの世界で終わりにせずに,本書を読みながら手を動かしてみましょう。映画で見たような未来にかかわれるチャンスが,今そこにあるのですから。