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働く人の過労,人手不足の顕在化,上がらない生産性……。働き方や仕事のあり方が問われるようになっています。この“仕事のあり方”に関して,組織単位ではなく個人単位でできることはないだろうか? そんな問題意識をお持ちになっている方もいらっしゃると思います。
そんなときにご紹介したいのがExcel VBAです。VBAは一言でいうと「プログラム言語」です。プログラム言語――そう,英語や数式っぽいものが羅列されているアレです。「プログラミングなんてやりたくない」という方,少し待ってください。VBAはたしかにプログラム言語ですが,実は,プログラミングを行わずに乗り切ることもできます。
まずはExcelにやらせたい作業を決めます。その作業をExcelで実行しながら記録します。一度記録した作業は,いつでも呼び出すことができるので,次に同じような作業をするときにはボタン一つで自動化することもできます。これを「マクロ記録」といいます。
では,VBAやマクロ記録を学習するとどういうことができるようになって,何が起きるのでしょうか。新刊『いつもの作業を自動化したい人の Excel VBA 1冊目の本』で取り上げられているケースを二つ要約してご紹介することにします。
ケース1 広告会社勤務の20代女性Aさん
定時で帰ることをモットーにしていたAさんは,「仕事ができるから」という理由で,上司から日々の売上管理の補佐業務を任されることに。残業することで,これまでは極力避けていた満員電車が避けられなくなり,大好きな映画鑑賞の時間も削られることになってしまいました。
「他人よりも仕事が速いのに,なぜ自分は残業までして,あげくに大嫌いな満員電車に耐えなければいけないのか?」。憤ったAさんはマクロ記録に挑戦することを決めます。
マクロ記録を学習して……
Aさんが任された売上管理の補佐業務とは,次のような,その日1日の売上資料を作る仕事です。
- 支店ごとの売上金額の集計
- 支店の全体に占める売上比率や順位付け
- 支店ごとの売上金額のグラフ化
など,約10種類の資料を作ります。
Aさんは,VBAは一切勉強せずに,この10種類の作業をマクロ記録だけで自動化することに着手,そしてそれを見事成功させます。手作業では1時間の残業でこなしていた業務を時間内に終わらせられるようになり,Aさんは以前と同じように18時をもって退勤できるようになりました。
ケース2 経理部所属の若手社員Bさん
Bさんが所属する経理部では,営業部員から提出される「経費申請書」に頭を痛めていました。経費申請書を,Excelで作る社員とWordで作る社員がおり,経理部はわざわざそれをExcelブックに入力して統合し,管理しなければならない状況でした。また,接待で使用しても良いお店は社内規定で決まっていましたが,それ以外のお店の飲食代を経費として申請する不届き者もいて,彼女たちの業務をよりいっそう複雑にしていました。
Excel VBAを学習して……
Bさんたち経理部員は一念発起して,自分たちの仕事にExcel VBAを取り入れることを決めます。
営業部員に経費申請用のExcelブックを配布し,マクロのフォームで入力させるようにしました。このマクロのフォームが,Bさんたちが学習して身につけたものです。そのフォームでは,社員番号を入力すれば自分の名前が自動表示されます。5万円以上は入力できないなどの金額の入力ミスを未然に防ぐ機能も備わっており,接待店も社内規定で決まっているお店を分類から選んでもらう形にしました。
経理部では,Bさんが一人で経費申請書のExcelブックを管理すれば良い状況になり,経理部の先輩社員は本来やりたかった商品開発のセクションに異動となりました。また,経費申請用ブックは「入力や申請が格段にラクになった」と,申請する側の営業部員にも好評で,接待する店をあまり意識していなかった社員の意識が向上するなど,いくつかの副次効果も生みました。
残業を減らさないと,生産性を上げないと……と考えても,いざとなると何から手をつければいいのか見定めるのは難しいものです。
パソコンの中にインストールされているExcelと,丁寧に書かれた入門書が1冊あれば,Excel VBAやマクロ記録とは何なのか,私たちの仕事をどう後押ししてくれるのかがわかります。「Excel VBA,いいかもしれない」。ピンときた方がいらしたら,ガイドブックをおともに,はじめの一歩を踏み出してみることをオススメいたします。