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InDesignの歴史を振り返る
InDesignは普段からお世話になっているアプリです。DTPアプリは出版に関わる人間には切ってもきれないものです。これがなければ,数々の書籍は世に出ないといっても過言ではないほど,密接なつながりがあります。
ただ失礼ながらもInDesignがはじめて登場した当時は,ここまで普及するアプリになるとは夢にも思いませんでした。
というのも,ページレイアウトアプリ(当時はソフト)はQuarkXPressが標準ソフトとなっていたためです。事実,印刷会社もこちらで作成した紙面データでなければ難色を示されたくらいです。
しかしながら,QuarkXPressはとても癖のあるソフトでした。写植時代の職人並みにQuarkXPress職人でなければ紙面が作れないほど,ちょっとしたミス(画像データの形式違い,罫線の設定,レイヤーの階層など)で,印刷所の印刷機で出力できない繊細なソフトでした(現在はQuarkXPressそのようなことはありませんので,ご安心ください)。
もっと自由に柔軟で,誰でも使えるDTPソフトがほしいと望んでいるところに,Adobe社のInDesignが登場します。InDesignはIllustratorのような操作性でページものが作れるソフトだったので,Illustratorに慣れているデザイナーにとっては待望のソフトでした。ただ,当時はマシンの処理速度を無視するかのごとく重すぎて使い物になりませんでした。Ver1からほどなくVer2が出て,その後CSに組み込まれます。CS2くらいから処理速度があがり,じわじわとQuarkXPressとユーザーを二分するアプリになります。そしてCS3でQuarkXPressから乗り換えるユーザーが増え出します。大きな理由として印刷会社のDDCP化でPDFでの入稿も問題なくなったことが背景にあったと記憶しています。PDFを扱うAcrobatはAdobe社のソフトですから,当然そのエンジンはInDesignに組み込まれていました。
そもそも画像はPhotoshop,図版はIllustratorがデファクトスタンダードだったわけですから,当然同会社から出ているソフトとの連携は強固で,作業効率や費用面からも同じパッケージ内のソフトを使うメリットは大きかったのです。それを抜きにしても,InDesignはユーザーの声を柔軟に汲み取り,進化してきました。
新しいバージョンを使うことも時短の手段
InDesignは優れたアプリだと思っています。一番は職人でなくても印刷所に入稿できるデータが作れるというところでしょうか。
入稿できるデータにするには,文字の詰めやフォント,画像や図版もそれに適用した処理をしなければなりません。
デザインに関わる方にわかりやすく,作業しやすく進化してきたアプリです。バージョンを重ねるごとに,基本的な作業(ドキュメントの作成など)は簡略化され,よりデザインワークに専念できるようになりました。デザインワークに割く時間が増えるわけですから,InDesignの基本よりも,より作業に関わる機能やテクニックを多く知りたい方が増えているのではないでしょうか? 少し前までは,InDesignの基本操作を覚えるだけでも時間が掛かりました。ただ,そこをバージョンを重ねるごとに簡略化されているのですから,基本よりも実践的な方法を知りたい方が増えるのは必然です。
「InDesignの勉強部屋」というWebサイトで,InDesign登場時より長年に渡り,使い方やより実践的なテクニックを公開してきたアドビシステムズ社の公認エバンジェリストである森氏にInDesignの豊富な知識を今回ご提供いただきました。
InDesignで行える操作,機能は豊富です。今回は,InDesignで必ず行う「文字組み」と「レイアウト」の作業に焦点をあて,その中でより仕事で使える操作を厳選し,解説いただいています。さらに,前述したようにバージョンを重ねるごとに機能やツールの使い勝手が向上していますので,新しいバージョンを使うことでのメリットも大きいです。本書のテクニックが,これまでに掛かっていた時間の短縮につながり,作業効率が上がり,よりデザインの幅も広がるきっかけになりましたら幸いです。