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突然ですが,Amazon利用してますか? プライム会員になると送料無料だし,プライムビデオも見放題になってオトクですね。音楽好きなら,音楽配信サービスに1つは入っているでしょう。王道はSpotifyでしょうが,楽曲数ではApple Music,AmazonにもMusic Unlimitedがあります。映画やドラマを見るのが好きという人は,おそらくビデオ配信サービスを契約しているはず。Netflixは巨額の制作費をかけたオリジナル映画・ドラマも人気です。雑誌好きなら,dマガジンは400円で何種類も読めてオトクですよね。
これらに共通しているのは「サブスクリプション」ということです。「月額980円で○○放題!」とかいうアレです。日本語にするのは難しいので,「サブスク」と略して呼ばれることが多くなっています。subscribeという動詞は「申し込みにサインする」というような意味なので,subscriptionという名詞は雑誌や新聞などの「定期購読」,商品やサービスの「定額制」と訳すのが妥当なところです。月ぎめなどの定額払いで継続して利用する商品やサービス全般と思えばよいでしょう。
冒頭に挙げたサービスのように,すでに日常に浸透しているので,意識しなくても複数のサブスクを利用している人も多いでしょう。デジタル化されたサービスなら,ほとんどネットとスマホですべて完結するようになっています。お店に行ったり,CDやDVDを買わなくても,思い立ったその場でタップ1つで好きなコンテンツが手に入り,おまけに定額で使い放題となると,ついついサブスクが増えてしまうのも無理はありません。仕事で毎日使うOffice製品などのソフトウェアもサブスクが主流になりつつあります。
デジタル製品がサブスクになるのは納得ですが,実体が必要なモノにもサブスクは広がっています。たとえば,ラーメンの食べ放題,ファッションの着放題,車の乗り放題,家具の取り換え放題などなど,こんなものまで?という百花繚乱の様相を呈しています。ここまでサブスクが注目されているのは,成熟した市場を破壊的に変革できるという共通の期待があるからです。人口減少期に入り,高度成長期のようなパイの拡大は見込めません。商品やサービスは飽和状態で,少ない消費者を取り合う形になっており,事業者はいいものを作ればいいだけではなくなっています。
消費者の財布の紐が固くなる中で,いかにして製品やサービスを買ってもらうのかというと,売り方を変えるしかありません。冒頭のように意外とたくさんのサービスにお金を払っている人も多いはずです。1つ1つの金額は少なくても,合計するとけっこうな金額を毎月支払っていることに気づくでしょう。これぞサブスクの魔力です。事業者は定期的にユーザーから入金されるので,月々の売上に一喜一憂することなく,安定した運営ができます。すると,積極的に新しいサービスの開発や設備投資ができ,さらに多くのユーザーを獲得できる好循環に持ち込めます。
従来はおもに消費者を相手にしたサブスクが注目されてきましたが,BtoBの企業間の取引でもサブスクが広がりつつあります。建設機械のコマツ,タイヤ大手のブリヂストンは代表的な例で,そのしくみが競争相手に対する圧倒的な優位となってシェア強化の源泉となっています。BtoBはまだ未開拓な分野が多いので,サブスク転換による成長が見込まれています。人はなぜサブスクに惹かれるのか,そして自分のビジネスにも導入することができるのか。そんな興味を持っている人は,サブスクのしくみとカラクリ,そしてビジネスモデル構築の仕方を学んでいただき,さっそく実践してもらいたいと思います。
提供者にもさまざまなメリットがある
サブスクリプションなら高額製品でも小額からの支払いで利用できるため,これまではターゲットにならなかった顧客層も取り込むことができるようになる。また,ストリーミングやコピー,レンタルなどによってサービスを提供している場合,物理的製品などの余計な生産費用が抑えられる