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日本国内のエンジニアの大半は,SI業界に属して,システム開発に携わっています。ここでは,システム開発の現場に立つSIerがあらかじめ身につけておくべきスキルや知識について考えていきたいと思います。
技術力を磨くだけでは不十分?
「エンジニアにとって重要なこととは何か?」と訊かれた際,多くの人は「技術力だ」という回答が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。対して,ヒアリングやドキュメントの作成など,上流工程に関するスキルが一番手の回答として挙がってくることはあまりないのではと思います。むしろ「つまらない」「面倒だ」というイメージが付きまといがちで,軽視されてしまうことだってあるでしょう。
しかし,システム開発の現場においては,上流工程に関するスキルがプロジェクトの命運を握っていることも少なくありません。上流工程がうまくいかずに,下流工程にしわ寄せがいってしまうようなことになれば,自慢の技術力も正当に評価される機会を失ってしまいます。ある偉人は「準備の失敗は失敗の準備である」という言葉を残しましたが,これはシステム開発においても当てはまることなのです。
とはいえ上流工程ってベテランの仕事では?
上流工程に関するスキルの重要性を説かれたところで,「でも上流工程ってベテランがやることじゃないの」という疑問を抱く人も少なくないかと思います。実際,かつてのシステム開発の現場(特にフルスクラッチのような案件)では,ベテランのSEが担当するものだと相場が決まっていました。
ところが,ビジネス環境の急速な変化により,短いサイクルでコンパクトな案件をこなすことが求められるようになったため,近年は事情が変わってきています。若手のエンジニアやコンサルタントがプロジェクトをリードする立場につくこともありうる状況になっているのです。また,中途採用を積極的に行っているSI企業では,要件定義や基本設計の実務経験がある,上流工程から携われるレベルの若手エンジニアを求める傾向が強まっているともいわれています。
上流工程で必要なスキルとは?
上流工程においては,クライアントへのヒアリングや擦り合わせを通じて,「要件」を明確に「定義する」ことがまず求められます。この「要件定義」はシステム開発における最初の関門であるといっても過言ではありません。
要件定義を成功させるためには,クライアントの求めるものを(暗黙の了解まで含めて)把握する必要があるので,コミュニケーション能力や概念形成の力が必要不可欠となります。また,次の設計工程に移行するにあたって「要件定義書」というものを作成しなければならないので,言語化・ドキュメント作成のスキルもしっかりと磨いておく必要があります。
必須スキルを知識として習得するには?
これらのスキルに対しては,「習得しようにも何だか取っつきづらい」という印象をもってしまう人もいるかもしれません。しかし,安心してください。要件定義には有用なドキュメントやツールが多数存在しているので,体系化された知識として学べる環境は整っています。
たとえば,有名どころでは,PMIの『PMIビジネスアナリシスガイド』やIIBAの『BABOK』などがあります。分厚いドキュメントを読むのは厳しいという方は,日本語で書かれたやさしい解説書も多数存在しているので,そちらを読んでみるのもいいでしょう。弊社からは『図解即戦力 要件定義のセオリーと実践方法がこれ1冊でしっかりわかる教科書』という書籍が直近では発行されており,要件定義の勘所を豊富なイラストを用いてわかりやすく解説しています。ぜひ手にとってご覧になってみてください。