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自動車業界は,いま100年に一度と言われる変革期に直面しているといわれています。「CASE」という言葉に象徴されるように,クルマは,
- Connected:コネクティッド
- Autonomous:自動運転
- Shared & Services:シェアリング&サービス
- Electric:電動化
の方向に向かっています。
MaaS(マース)はこのうちの「S」,シェアリング&サービスと密接な関係があります。
MaaSとは,Mobility as a Serviceの略語で,「サービスとしての移動」を意味しています。コンピューター業界でよく使わている,SaaSとかPaaSとかと,同じ様式で生み出された言葉です。
MaaSは,発祥の地ともいわれるフィンランドでの定義を借りれば,マルチモーダルな移動の統合といった意味合いが重要で,クルマ所有に頼った生活からの転換を意識したものになっています。マルチモーダルとは,複数の手段による,といったような意味です。環境配慮の観点からも,鉄道を軸に,公共交通やさまざまな新モビリティサービスを利用したライフスタイルへの転換を促すサービスとして注目されてきました。日本においても,同様の意味で考えられることもありますが,物流や観光,医療など周辺サービスも含め,もう少し広い意味で捉えらえていることが多いようです。
MaaSといっても,言葉自体,上記の自動車業界をはじめ,移動・交通に関わる業界以外,一般には馴染みはないかもしれません。ただサービスとしては,まだ実証実験段階のものが多いものの,全国各地で数多くの取り組みが行われています。
具体的には,トヨタ自動車などが進めている,マルチモーダルモビリティサービス「my route」や東急などが取り組んでいる「Izuko」(観光型MaaSと言われている)などがあります。
私たちの暮らしに欠かせない移動やそれを支える移動手段は,PCやスマートフォンなどのデジタルデバイスの普及,IoT,AI,5G,ロボットなどの第4次産業革命とともに進化しています。鉄道,バス,タクシーといった公共交通に加えて,2010年頃から自転車シェア,カーシェア,電動キックボードシェア,AIを活用したデマンド交通といった新たなサービスがどんどん登場してきています。また鉄道やバスなどの乗換検索,経路検索のウェブサイトやスマートフォンアプリ,クルマのカーナビゲーションシステムなど,位置情報や目的地への経路案内をするサービスや機器も進化しています。
my route
my route
このようなデジタル化が進む時代の中で,MaaSは生まれました。MaaSは環境にやさしく,クルマを自分で運転できなくても,文化的で持続可能な生活ができる地域を実現するために,移動手段をうまく組み合わせて,1人ひとりのニーズに合わせたサービスを提案しようとする概念です。
デジタル技術を使うことで,これまで実現できなかったサービスが実現できたり,いろいろな移動サービスを組み合わせて提供したり,地域住民に情報提供ができたり,斬新な料金プランの提案や,支払い方の選択肢を増やしたり,移動価値を高めたりといったチャレンジができます。
MaaSは環境意識の高い欧州発の概念であるため,2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsとも密接で,社会課題の解決や社会のありたい姿を描いたビジョンの実現に有効な考え方だとして注目されています。