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[改訂新版]ITエンジニアのための機械学習理論入門 ――の舞台裏

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5年ぶりの大改訂

本書[改訂新版]ITエンジニアのための機械学習理論入門の初版は2016年に発行され,今回は約5年ぶりの改訂版になります。今回の目玉は,本文のオールカラー化,そしてPythonの主流の実行環境のアップデート,そして原稿の入念なアップデートです。

旧版で皆さんからよく質問を受けたのが,実行環境の件でした。本書ではCanopyという執筆当時に人気があったPythonの実行環境アプリを使用して解説していました。しかしCanopyの開発が終了してしまい,本書に掲載されているサンプルコードを読者のみなさんがすぐに試すことができないという問題が発生してしまいました(これは環境だけの問題でコード自体は誤りがなく普遍的なものだったのですが,やはり実行環境に対応したほうがいいですよね⁠⁠。そこで筆者の中井悦司氏のサポートサイトなどで,Google Colaboratory環境での追加説明をしていただくことで暫定的に対応していました。今回の改訂でよりメジャーで永続的なメンテナンスがされるであろうGoogle Colaboratoryを採用し,すべての解説をアップデートしました。

オールカラーレイアウトの実現

おかげさまで増刷の機会を何度もいただき,電子版のダウンロード数も当社WebサイトGDPで第1位になっておりましたが,前述のPython実行環境の問題もあり,改訂の機運をうかがうことになりました。その間,本書の続編である『ITエンジニアのための強化学習理論入門』を中井氏が執筆をしていました。いただいた原稿を拝見すると,強化学習におけるさまざまな数学理論をPythonでコーディングし,プログラムの実行結果を色彩豊かなグラフで示しています。これはすぐに理解しやすい内容に仕上がっています。編集・制作側としては,この本はオールカラーで出すことを決意し,この方針で出版することになりました。その結果,某ECサイトでのレビューでは高評価をいただき,今回の改訂版でもオールカラー化を実施することになりました。タブレットで読むときにカラー液晶のメリットが最大に活かせることが,電子版の売れ行きからわかります。本書としては,ユーザーインターフェース的にもメリットが大きいようです。

機械学習理論を支えるのは普遍的な数学

今回の改訂版において,章の構成は前版とまったく変わりがありません。次のようになります。

  • 第1章 データサイエンスと機械学習
  • 第2章 最小二乗法:機械学習理論の第一歩
  • 第3章 最尤推定法:確率を用いた推定理論
  • 第4章 パーセプトロン:分類アルゴリズムの基礎
  • 第5章 ロジスティック回帰とROC曲線:分類アルゴリズムの評価方法
  • 第6章 k平均法:教師なし学習モデルの基礎
  • 第7章 EMアルゴリズム:最尤推定法による教師なし学習
  • 第8章 ベイズ推定:データを元に「確信」を高める方法

内容については現在の状況と異なる箇所など,修正とアップデートを筆者の中井氏がされています。コラムなども時代の変化にそぐわないものは入れ替えもされています。

現在はITともにAI(人工知能,機械学習)の利用が一般的になり,ビジネスの現場でも当たり前の存在になっています。しかし本書の章構成を振り返ってみると,決して古びておらず,これらをしっかり理解しマスターすれば人工知能,機械学習の分野でビジネスをしていくために必須の内容であるとわかります。今回はカラー化してさらに理解が進むように作り直しましたので,きっと皆さんの力になるでしょう。AI時代に追いつきさらに上を目指すためには,普遍的な基礎が大事です。本書は確実な手がかりになります。ぜひご一読ください。