開けてはいけない箱
はい、そういうわけでございまして!
サルでき流企業サイトの作り方、第8回を迎えました。皆さまいかがお過ごしですか。
昔から8は末広がりなんて申しまして、実に縁起がいい数字とされております。この連載を8回目からうっかり見てしまったアナタはとっても末広がり。もうこれは最後まで読むしか……おや、どこかで見たことあるような書き出しですか? 嫌だなあ、気のせいですってば。あはははは。
さてさて、今週のウミネココーポレーション仮設広報部の面々ですが、どうやら自分たちの会社の「現在のWebサイト」をチェックしているようです。
「存在を知らなかった」という衝撃的な事実はひとまず脇に置いておくとして、まあ案外、皆さまも自社のWebサイトって見てなかったりしますよね。「へえ、ウチの社長ってこんな挨拶してたんた~」なんて、数年後に気付いたり。
ドヤ顔でうっかり発言しているのを、数年間誰からも指摘されなかったウミネコ社長のことを考えると……少しだけ後悔したくなります。「私この会社に入ってよかったのかしら」と。あれ?
彼らがこれから作らなければならない「新Webサイト」は、少なくともこういう風に、放置され続けるものではいけないわけですね。もっと多くの人に、もっと気軽に、もっとワクワクしながら見てもらえるようにする。そういう心意気と仕掛けが必要です。
とは言え、まだ今はそんな楽しそうなことを考えるタイミングではありません。その前にやっておかなければならないことがあります。
ええ、そうです。やって来ましたよ、最初の山場。幾多のWordPress挑戦者を奈落の底に突き落としてきた、のっぺり顔のニクイやつ。今回はデータベースについてのお話になります。コーヒーでも入れて、リラックスしてから行きましょう。
データベースって何だろう
それでは行きましょうか。まずはこれ。「データベースって何だろう」という、そもそもの部分のお話です。いや、別にこんな「そもそも話」、知らなくても困ることは無いんですけどね。でも、自分が触っているものが安全なものか危険なものかくらいは知っておいたほうが、ストレスが少なくなるってもんだと思うのですよ、ワタシは。
ということで、せっかくですからさらーっと覚えてしまいましょう。
- Q:データベースとはなんですか?
- A:データベースというのはエクセルのおばけのことです。
エクセルのお化け?
パソコン初心者の田中さんがエクセル入りのパソコンを購入、しかし、そのエクセルは、「なんだかよくわからないから」という理由で3年間一度も起動されませんでした。使われなかったエクセルの無念の魂は「データベース」という異形になって現世に舞い戻りーとかなんとか。
……ウソですが。
正しくは、エクセルのように「大量のデータ」を管理するために作られたシステムのこと、それがデータベースです。おばけ、と言っているのは、エクセルよりも「遥かに大量のデータ」を、「遥かに高速に処理する」ことができるように作られているシロモノだからです。
「アイツはバケモノだぜ」とか、スポーツ漫画でよくあるでしょう?そうそう、ああいうイメージです。超エクセル。エクセルのお化け。そっち方面にスゴいヤツ、と覚えてください。
皆さま、エクセルって「縦に何行データが入るか」ご存知ですか?
知らない。考えたこともなかった。……ですよねー。普段エクセルを使っていて、最大行数を超える、なんてことはそうそう起こりませんものね。
Mac版ですが確認してみました。
正解は、1,048,576行です(エクセル2010の場合)。100万行ちょっと。結構入りますね。
実はコレ、一つ前のバージョン2007における機能強化の結果でして、2003までは65,536行までしか入りませんでした。今こうして見るとずいぶん少ない気がします。
とは言え、それでもワタシたちが普段使っているぶんには困らないくらいのデータは管理してくれていました。なにせ6万行以上入るわけですから問題なしです。そう、「ワタシたちが普段使っているぶん」には。
さて、ここでひとつケースを考えてみましょうか。
皆さまがお住まいの市区町村のお話です。おそらくですが、市区町村には「住民一覧」のデータが保管されていますよね。住民票を貰いに行ったら、ちゃんと自分の名前や住所が印字されていますので、きっとどこかのコンピューターの中にそのデータが入っているわけです。
もし、この住民一覧データを、エクセル2003で管理しようとすると、その市区町村の住民は65,536人までしか入らなくなってしまいます。前述のとおり、管理できる行がそこまでだからです。
ちなみに「市」と認められるための最低人口数は5万人ですから、これではほとんどの市で「住民一覧」が作れないことになります。困りましたね。
まあ、現行エクセルでしたら、104万行データを入れることができますので、これでしたらほとんどの市区町村の住民一覧データはなんとかなりますね。105万以上の住民を抱える市区町村の方々は……次世代のエクセルに期待、ということで………。
と、いう送りバントではいけませんね。世の中にはもっともっと大量のデータを管理しなければならない機会もあるわけですし。
例えば、どこぞやの企業のハンバーガーの販売実績とか、どこぞやの企業のスマホアプリのダウンロード実績とか。そうなってくると、データの件数は数千万とか数億とか、そういう規模になってしまいますので、いよいよエクセルの中には入りません。
お待たせしました。そこで、データベースの出番となります。
データベースとエクセルの違い
データベースは、大量のデータを管理するという目的のために作られました。管理、という言葉の意味は、ざっくり言うと「保存できて・取り出せて・上書きできて・消せる」ということです。
エクセルで考えると、ごくごく普通の機能と言えます。ここまでに違いはありませんね。
違ってくるのはここからで、データベースの場合、これらの機能を「超大量なデータ」に対して、「超高速で行える」ようにするために、余分なものがゴッソリと削られています。
例えば、エクセルではお馴染み、「左クリックで行を選んで、色を塗って印を付ける」とか、「右クリックで行のコピー」とか。いわゆる人間が使いやすい補助機能はキレイサッパリ無くなっています。数千万件のデータを直接チマチマ人間様がイジるような機会は実際にはほとんどありませんので、不要という扱いなのです。
さらに、「グラフ作って」とか「クリップアートを挿入」とか、そういうプレゼンテーションに関する機能も一切ありません。データを管理することと、そのデータを使って何やら発表資料を作ることは、まったく別というわけです。
「あっしはデータを管理するのが仕事ですから」と言わんばかりの、ただただストイックな仕組み、それが、データベースです。
要は、機械としての性能を重視するあまりに、人間に対する親切心が無いんですね。だから、人間から見るととっつきにくいという印象になるのです。
当然(?)、操作は「コマンド」で行います。マウス?ボタン?ナニソレ。カタカタと呪文を打ち込んで、保存とか削除とかをするのです。ぐええ。
エクセル、苦手ですか?そんなアナタは、少しだけデータベースをイジってみましょう。きっと急にエクセルとの距離が縮まると思いますよ。今まで文句ばかり言っててごめんなさい。
WordPressにおけるデータベースの役割
さてさて、すっかりお腹いっぱいになりましたね。データベースについての「そもそも話」はこれで終わりです。WordPressの話に戻りましょう。
大量のデータを管理するために作られているデータベース。WordPressもこのデータベースというものを使っています。では、どういう風に使っているか、順を追って説明していきますね。
WordPressはWebサイトのひな形でした。WordPressを導入することで、Webサイトの「枠」がサクッとできあがります。超便利、WordPress。そんな話を思い出してください。(思い出せない方は第4回をチェック!)
この後、実際にWordPressの導入を行っていただきますが、実は導入直後は「枠」だけできて、「中身」がありません。空っぽです。
ええっ!?
……いや、そりゃそうですね。自社のWebサイトを作ろうと思ってWordPressを導入してみたら、なぜか最初から社長メッセージが書いていた。そんなことが起こったらこれはもうホラーですし。
WordPressはただの「枠」ですので、「枠の中の各記事(コンテンツ)」は、自分たちで後から足していくことになる。ここまではOKですね。その際、各記事を管理、つまり「保存して・取り出して・上書きして・消す」ということをするために、データベースの機能が使われます。そう、記事はデータベースの中に保存されるのです。
実際には、WordPress上で設定、変更が可能になっている「各種の設定項目」も、データベースの中に保存されます。要するに、後から変更しそうなものはすべてデータベースの中に保存される仕組みになっているのです。こうしておくことで、データの管理は非常にスムーズなります。
データベースの設定はコレだけでOK
お待たせしました。
ようやく今回のメインイベント、WordPressに必要なデータベースの設定のお話です。
と、言っても設定する項目は2つしかありません。散々。本当に散々脅かしてきましたが、ムズカシイところはほとんどWordPressがやってくれますので、こちらがやることは、「WordPressがデータベースを使えるようになるための下準備」だけなのです。
STEP1:サーバーの管理画面でデータベースのメニューを開く
前回の続きですね。サーバー管理画面を開いて、「データベースメニュー」を探してみましょう。単語的に「MySQL」という言葉があれば、それもデータベースのことを指していますので、正解です。
見つかりました。こんな感じのメニューです。
見つかりましたか?メニューの奥深くに隠れている場合もありますので、見つからない場合は、サーバー運営会社に電話して聞いてみましょう。
STEP2:データベースを追加する
さて、意味不明な言葉が出てきましたね。「データベースを追加」する。データベースはもうそこにあるものでしょう?なんていう違和感バリバリの言葉です。まあ、これはこういう言い方なのですよ。クセというか言い回しというか、エクセルで言う「新規ファイル作成」だと思ってください。
こんな感じに入力します。
一部変更できない言葉があらかじめ入っている場合があります。名前はその部分も含めてひと続きです。
「データベース名」はわかりますね。ファイル名と同じことです。後で使いますので、忘れないようにメモしておいて下さい。後、この手の設定を行う場合は、「半角英数字」で名前を付けておくことをオススメします。「文字コード」の設定をしなければいけない場合は、「UTF-8」を選んでおけばOKです。
STEP3:データベースユーザーを追加する
さてさて、データベースの追加ができました。エクセルの場合は「これにて準備完了」となるのですが、データベースの場合はあとひとつやることがあります。それがユーザーの追加です。
データベースは多くの場合、自分のパソコンの中ではなく、ネットワーク上に置かれます。今回もWebサーバーの上にあるデータベースを設定していますよね。
ここで問題がひとつあって、そのままではドコからでも、誰でもイジれてしまうということになってしまうのです。今皆さまがイジれるのですから、当然他の人もやろうと思えばやれるわけです。
ですので、セキュリティを考えないといけません。おお、来ましたよ、セキュリティ。踏み込みたいですか?…嫌ですよね。ムズかしそうですし。今回は盛りだくさんでしたので、今はサラッと行きましょう。
ここでは、ユーザーとパスワードを設定しておいて、その正しいパスワードを知っている登録されたユーザー意外には操作できないようにしておきます。これで、ユーザーとパスワードを知らない人はイジれません。
データベースを追加して、ユーザーとパスワードを追加する。これでデータベースの下準備は完了です。超簡単でしたね。
後は、ここで設定したデータベース名、ユーザー名とパスワードを、WordPressに教えてあげれば、WordPress様が勝手にデータベースを操作してくれるようになります。
まとめ
いかがでしたか?
今回はなかなかのボリュームになりました。スクリーンショットが少ない話しでゴメンナサイ。
なんだか難しそうなデータベースも、とりえあずエクセルという馴染み深いものに置き換えて考えると、必要以上にビビらずに済むようになります。そうなっていただければ嬉しいです。もちろん、これ以上踏み込むことも意味はあるのですが……。
ま、Webサイト作りを嫌いになっては元も子もありませんので、なんとなーく概念を理解した上で、事前の下準備を行って、後はWordPressにお任せ!という流れが一番いい付き合い方だと思います。
さてさて。では、データベースも準備出来ましたし、いよいよWordPressの導入と行きましょうか!
…おっと。
と、いうところで終了の時間です。
ではでは、今回はここまで!
次回をお楽しみに~。