概要
「新しいことに挑戦しなければ,未来はない」そんな時代に成功を勝ちとるために必要なノウハウとは?
海外勤務経験なし・TOEIC600点台で海外との共同プロジェクトメンバーに指名された小川くんと後輩の森さん,そして海外プロジェクトで工場づくりをしてきた広田さんの対話を通じて,新しいチャレンジを成功に導くためのプロジェクトマネジメントの考え方と技術,そして海外プロジェクト特有の落とし穴と対策を解説。
「計画がきちんと立てられず,いきあたりばったり」
「だれが何を決めるのかわからず,意思決定が遅れる」
「以心伝心・暗黙の了解で動いて,言葉にしない」
「契約感覚に乏しく,地雷を踏んでしまう」
そんな日本人が世界で通用するための考え方がわかります。
こんな方におすすめ
- 会社として新しいことにチャレンジしようとしているものの,上の人が仕切れているわけでもなく,管理職ではなくとも実質的なプロジェクトマネージャーとしてチャレンジを成功に導かなくてはいけない方
- 海外の企業とプロジェクトを進めることになった(進める予定がある)方
著者から一言
38歳の時,わたしは自分から手をあげて海外プロジェクト部門に職種を転じました。海外型のプロジェクトマネジメントを経験したいと思ったからです。
その時から,自分の人生が大きく変わりました。
それまでは,設計部門で,おもに国内のお客様向けの仕事をしていました。最初は化学エンジニアとして,その後はシステムアナリストとして,工場そのほかの設備投資にまつわる計画立案と,生産システムの設計・構築に携わりながら育ったのです。海外向けの仕事を手伝うこともありましたが,自分が直接お客様と接することはまずありませんでした。
しかし,海外プロジェクトのチームに所属したその翌日から,すぐ米国人たちとのミーティングの場に放り込まれます。まだプロジェクトマネジメントを一から学んでいる身,そして英語もしどろもどろでしたが,次々と対応すべき問題がふりかかる毎日でした。
今から思い出しても,その最初の1年間ほど,自分が仕事で学んだ時はありません。設計部門もやりがいのある仕事でしたが,どこかで自分の限界を感じていました。殻を破って外に出てみると,目の前には未開の沃野が遠く広がっているようでした。
それから,約20年が経ちました。ひどく苦労の多いプロジェクトもいくつか経験しましたが,あの時の決心を後悔したことは一度もありません。「30代半ばを過ぎてから,今さら海外部門に移るなんて遅すぎないか」という心配は,杞憂でした。自分に本当に必要なチャレンジには,「遅すぎる」ということはないのです。語学の問題について言うと,若いころ,米国に1年間留学したのですが,むしろ仕事で使うようになってからのほうが,英語ははるかに上達した実感があります。真剣勝負だったからでしょう。
不思議なもので,勤務先の仕事が広がると同時に,社外の人脈も広がりました。縁あって診断士仲間と共著で本を書くことになり,つづいて単著の執筆を依頼されるようになりました。さらにプロジェクトマネジメント理論の問題に自分なりに取り組み,工学博士の学位をとったり,学会で研究部会を主催したり,はたまたブログを書いたりといったふうに,自分の活動範囲も思わぬ方向に発展していったのです。海外に得た友人も多く,彼らに励まされて進んだ仕事も少なくありません。
プロジェクトとは,人と一緒にチャレンジし,成長するための,唯一最大の仕組みだと思います。日本国内に漠然とした閉塞感が漂う今日,「外に出て,新しい自分を試してみたい」と思う人たちの力に少しでもなりたくて,この本を執筆しました。類書にはない独自の知見を盛り込んだつもりですが,ねらいどおりの1冊となったかどうかは,読者の皆さんの評価にお任せします。
本書がこれから,はじめて異国での仕事にチャレンジしようという方に,少しでも役立つことを願ってやみません。