概要
「粒子であると同時に波である」???
それって,結局どういうこと?
量子論の具体的なイメージが描けず
くじけがちな初学者へ向け,
リアルなモデルを使ってていねいに解説する
今度こそわかりたいあなたのための量子論入門。
こんな方におすすめ
- 量子論に取り組んでみたが今ひとつピンとこない初学者,サイエンスファン
著者から一言
量子論は,漫画やアニメなどのサブカルチャー作品で,結構もてはやされているようだ。人気アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』では,オープニングタイトルのバックに物理学の学術用語や数式が次々と映し出されており,その中には,ブラ=ケット記法で書かれたシュレディンガー方程式や,スピンの交換関係などもある。
もっとも,こうした扱いは,きちんとした学問的理解に基づいているわけではない。『ノエイン もうひとりの君へ』では,多世界解釈らしきものに基づいて,運命を選び直す可能性が示唆されているし,『ゼーガペイン』では,量子コンピュータの内部に現実と変わらない擬似世界が構築されている。いずれも,物理学的にはあり得ないファンタジーの話である。SF作家のアーサー・C・クラークは,「高度に発達した科学は魔術と見分けがつかない」という名言を残したが,どうやら多くの現代人にとって,量子論は,科学と言うより魔術に近いものに見えるらしい。
量子論が魔術じみたものとして捉えられるのは,一般に流布している解説が常識を大きく逸脱しているせいでもあろう。「シュレディンガーの猫」「多世界解釈」「量子もつれ」といった量子論の話題は,しばしばあまりに現実離れした説明がなされ,人々を混乱させる。
私に言わせれば,こうした常識を逸脱する説明は,量子論に対する誤解を増やすだけである。量子論は,もっとリアルで実用的な理論であり,常識に沿った範囲で理解することが可能である。本書は,リアルなイメージに基づいて,常識的な立場から量子論を理解しようとする試みである。
本書で語られる量子論は,あまりにリアルすぎて,漫画やアニメに登場する量子論に比べると,夢がないと感じられるかもしれない。しかし,これが(私の信じるところによれば)量子論の真の姿である。高度に発達した科学でも,充分な知識があれば,魔術とは異なる合理的なものであることがわかるはずだ。