コンサルティング会社C社を訪問した佐藤さんに,
"やらされ感"のある改革はやりたくない
佐藤さん:
「問題意識が高かった社員は先月の早期退職でほとんど辞めてしまいました。今は余計なことは言わない, 関わりたくないという人たちばかりです。しかし, このまま品質問題を放置しておくわけにはいかないので, 業務改善は待ったなしです。先ほど伺った"ソフト部分" (第5回参照) の組織風土を変えていくことも視野に入れて考えないと, 当社では立上げだけではなく, その先も難しいように感じます」 S氏:
「佐藤さん自身は, 業務改善にどんなイメージをお持ちですか?」 佐藤さん:
「現場から職場の問題を定期的にいくつか出してもらい, 問題の多そうなところから順番につぶしていく……そんな感じです」 S氏:
「それでうまくいきましたか?」 佐藤さん:
「なんだか形骸化している印象が強いし, 業務改善をやる人は決まっている感じです。やらない人は何もやらない。見ているだけです。それに, 申し訳ないと思いつつも, 何これ? と言いたくなるような, くだらない改善案もあります。実際に改善を行っていてコストが下がった, 品質が上がったという話もほとんど聞きません」 S氏:
「うんうん……なるほどね。それで…?」 佐藤さん:
「みんな, "やれ! "と言われればやる人なのですが, "やれ! "と言われなくとも現場が工夫してどんどん改善をしていく。こういう姿が理想的だなと思います」 W女史:
「"やらす側"と"やらされる側 (現場) "という構図にはしたくないですからね」 佐藤さん:
「はい。"やらされ感"のある改革はやりたくありません」 S氏:
「この図 (図1) はよく当社が用いるものですが, これまでお話をしてきた"ソフト改革"と, もう1つの"ハード改革"について, 業績との関わり具合とそれぞれの特徴について示したものです。"やらされ感"についても考えてみましょう」
(おもむろにS氏は佐藤さんへ説明を始めました)
「やらせる改革」 のハード改革
「本来,
"あるべき姿"から落とし込む
定量的な改善の指標は出しやすく,
「だらだら改革」 のソフト改革
一方,
経営者の立場から見ると,
したがって,
コミュニケーションが業務改善にとって極めて重要な要素の1つであることに変わりはありません。しかし,
ハードという箱モノがあっても,
「何とかしないといけない」 モードにする
佐藤さん:
「"やらされ感"を払拭することも大事ですが, もう1つわからないことがあります。先ほど話された"2・ 6・ 2の法則" (第5回参照) のように, なかなか自発的に動かない人たちをどのように動かすかということも頭の痛い問題です」 S氏:
「これ (図2) は, 問題意識が徐々に変わっていくイメージを示したものです。当社では"変革モードシフト"と呼んでいます。最初は, "とくに問題はない"と思っている人がたくさんいます。つまり, 変革の必要性を感じていないので, 改善にも積極的に関わろうとはしません」
佐藤さん:
「今の当社だと, ほとんど全員が"特に問題はないモード"かもしれません」 S氏:
「本来は, このままじゃヤバい……だから"何とかしないといけないモード"になるのですが, このようにならないからといって, "問題意識がないからだ"と片づけてしまうのは厳禁です」 佐藤さん:
「それはなぜですか?」 S氏:
「コンサルティング会社や研修会社の立場からすれば, 問題意識を高めるためにますはワークショップをしましょう, 研修をしましょうとなりがちです。そして問題意識が十分に醸成されてから, 改善をしましょうとなります。しかし, 問題意識が高まったからといって, 自分で何とかしないとすぐに変わるものものではありません」 W女史:
「私からも…! それとね, 真ん中にある"現状に不満を感じる" ってことがとっても大事なのよ」 佐藤さん:
「現場からは不満はたくさん出ますが, だからといって, 自らが良くするという動きには至りません」 S氏:
「問題意識が顕在化したものが"不満"という形で現れるので, 不満が出てくるのはとても重要なのです。不満が何もない組織のほうが気持ち悪いです」 W女史:
「この不満の出方を注意深く見てください。 "不満"を言い続けている人は, 変革のエネルギーがとても高いことがあります。不満を言い続けるエネルギーを変革のエネルギーに変えていくことも大切です」 S氏:
「ただ単に不満を言っている人と, 会社のためを思って不満を言う人を見極めることが大事ですね」 佐藤さん:
「なんだか難しそう……。僕一人でできるのかなぁ……」