田中洋一郎氏、鈴木理恵子氏に訊く、mixiページアプリAPIの狙い、そして開発者に向けたmixiの展開

mixiページの狙いとmixiページアプリ登場の背景

馮:まずはじめにmixiページアプリの現状について教えてください。

田中:これまでのmixiは友人と友人のコミュニケーション、つながりを軸に展開してきました。それが、ここ数年のソーシャルメディアの潮流としてクチコミ、バイラル、いわゆるシェアという考えが強くなっています。そこで生まれたのがmixiページです。

株式会社ミクシィ技術部
OpenSocialエキスパート田中洋一郎氏
株式会社ミクシィ技術部OpenSocialエキスパート田中洋一郎氏

私は、企業のmixiページの場合、⁠企業のソーシャル的な出張所」と考えていて、そこで、企業と顧客の関係作り、ブランディングを行うスペースと捉えています.ですから、新しい価値や情報投下をしていく上で私たちが提供する枠組みだけではカスタマイズが必要になり、そこでアプリではないかというのが展開のきっかけです。

現在、誰もが利用できるmixiページアプリは5種類あります。すべて法人の方が運営しています。

馮:mixiページアプリAPIにはどのような機能が実装されているのでしょうか。

田中:元々あるソーシャルグラフだったり、People APIなど、mixi Platformで提供している機能すべてが利用できます。具体的には、API経由でフィードを取得したり、mixiボイスとの連携やフォトツールとすることも可能です。mixiページアプリは、技術的にはiframeを使っているので、すべてのWeb技術が利用できることになります。

馮:mixiページアプリのリリース後の反響はいかがでしたか?

田中:正直な感想として、mixiアプリに比べると穏やかでした。先ほども述べたように、mixiページ自体が、企業や組織での利用用途に向いていることもあり、従来のmixiアプリのようなエンタメ要素が少ないことが要因の1つと考えています。加えて、mixiアプリよりマネタイズする部分が想像しづらいということもありましたね。

馮:具体的なマネタイズ施策などについては模索中でしょうか?

田中:私たちからこうやってほしいという要望を直接出してはいないのですが、ユーザの反応を見るかぎり「mixiページの中でアプリを作り込む」ということを試行錯誤している段階のように感じています。そこにデベロッパー・エンジニアの工夫が盛り込められる余白があるとも考えられます。

鈴木:mixiページアプリはiframeでWebページを表示をしているので、実は単純なHTMLファイル1枚でも良いわけです。ですから、プログラミング言語を知っているエンジニアだけではなく、デザイナーの皆さんにも取り組んでもらえる対象と言えますね。

もし企業のmixiページを作ったならば、まずHPにあるページ、例えば取り扱い商品ページをmixiページアプリにするのもいいと思います。そこにAPIでソーシャルな要素を肉付けしていくと作りやすいのではないでしょうか?

まずはmixiページアプリを作ってもらうこと、それを願っています。

コアプロダクト開発グループ
鈴木理恵子氏
コアプロダクト開発グループ 鈴木理恵子氏

馮:お二人が作るとしたらどういったmixiページアプリを考えますか?

鈴木:今作られているmixiページアプリはTwitterやYouTubeのデータを取得して配信する、いわゆる情報プッシュ系のものが多くあります。まず、フィードの閲覧性を高めたデザイン、アプリを考えたいですね。

あとは、飲食店向けに簡単におしゃれなお店のメニューページ作れるアプリもいいですね。もちろんAPIでイイネやコメントをつけるようにして、メニューの訴求力を高めます。

田中:mixiアプリがゲームを軸に広がったのに比べて、mixiページアプリはいろいろな考え方で広げられると思います。もちろん、mixiアプリと同じようにゲーム的要素を含めたmixiページアプリが生まれてもおもしろそうです。最近では、ゲーミフィケーションと呼ばれる考え方もありますし、企業のブランディングにゲーム要素を取り込むのは1つの方向になるのではないでしょうか。

一方で、mixiページが難しいのが、いままでのmixi.jpで利用されてきたソーシャルグラフとは異なるつながりがあるという点です。つまり、趣味嗜好が合う外部のユーザのように、自分とはつながっていないが、ページを介してつながるユーザのコミュニケーションをどう捉えるかが重要になるからです。

鈴木:たくさんのユーザに見てもらいたい情報はmixiページヘ、個人的つながりに向けた情報は自身の日記やボイスで、というように切り分けられると思います。

mixiページアプリAPIは、多くの人に伝えたい、見てもらいたい情報を活かすために利用していただきたいAPIですね。

2012年のWeb

馮:それでは少し視点を変えて、2012年のWebについてお聞かせください。田中さんには今年もgihyo.jpの元旦企画で2012年のソーシャルWebをご執筆いただきましたね。

田中:今年は、真の意味でのセマンティックWebが日の目をみると思っています。今までは見た目重視だったWebコンテンツは、ソーシャルメディアの中で消費される情報元としての役割も持つことになります。つまり、本当の情報設計が求められるわけです。これは、HTML5のような標準技術が安定して普及し始めていることも大きいですね。

技術以外に、ユーザの立場から見ても大きな変化が生まれてくる年です。いわゆるソーシャルネイティブと呼ばれる、インターネット利用時点からすでにソーシャル・ネットワークを利用しているユーザが、より一層社会に増えてくるからです。

つまり、これからWebを利用するということは、今まで以上に、情報と情報のつながり、情報をたどる感覚が強くなるのではないでしょうか。

鈴木:私はもう少し各論になるのですが、MongoDBに注目しています。Schemaを決めずにデータを扱える部分に期待していますね。また、mixiページアプリの開発という点でもMongoDBを活用できるのではないかと考えています。

田中:その点で言うと、おそらく従来のDBでは今後のサービスの運用に対応できなくなるかもしれません。スケールの軸が飛躍的に大きくなることはもちろん、得たい情報に到達するための手段が変化してきているからです。つまり、私たち事業者サイドも、別次元のスケールに耐えうる情報設計、システム設計をしていく必要が求められます。

ですから、インフラの面では引き続きクラウドの活用が大切です。DBの領域であれば、個人的にはGraphDBのスケーラビリティに着目しています。

鈴木:たしかにスケールは大切ですね。最近ではfluxflexやdotcloudのようにあらかじめスケールの概念を取り込んで手軽に使えるサービスも増えてきますから、このあたりにも注目していきたいです。

mixiページアプリAPI、そしてWebに対する考えや思いなどについてお話いただきました
mixiページアプリAPI、そしてWebに対する考えや思いなどについてお話いただきました

ソーシャルネットワークのプラットフォームを提供すること

馮:mixiはこの2月で8年目を迎えます。そこで、日本最大のトラフィックを生み、さまざまな価値を提供するソーシャルネットワークの事業者として、どのような未来を考えていますか?

田中:繰り返しになりますが、ユーザの皆さんの情報、ユーザの皆さんにとっての価値をきちんと提供できるプラットフォームを目指したいです。今、mixi内にとどまらず、外部からの情報流入、そして外部への情報出力が可能です。そこで、いろいろな標準技術を利用して、ソーシャルグラフ上で情報が整理され流通する仕組みを作り上げることが私たちの使命だと思っています。そして、mixiが持っている情報をもっと柔軟に使えるようにしていくと共に、よりインターネット全体をセマンティックな世界に近づけていきたいですね。

そのためには、とにかく、ソーシャルメディアに蓄積される情報をきちんと扱えるフレームを作ることが大切だと考えています。

鈴木:また、そういったデータを提供する枠組みができれば、次はデータを見せるための技術、デザインも必要になります。そこで、エンジニア・デザイナーの皆さんにとって便利なプラットフォームとしてのmixiを目指していきたいです。

あらためてmixiページアプリAPIを使ってもらう

馮:今おっしゃったような、ソーシャルネットワーク事業者が、その上にある情報、ソーシャルメディアを整備していくことは、インターネットを利用する全ユーザにとって非常に価値のあることだと思います。大変楽しみです。

さて、最後に、あらためてmixiページアプリAPIを使ってみたいエンジニア・デザイナーの皆さんにメッセージをいただけますか。

鈴木:23万ページあるmixiページに比べるとまだまだmixiページアプリの数が少ないので、とにかく触って何かアウトプットを出していただきたいです。先ほどもお話ししましたが、HTML1枚だけでもかまいませんので、まず、作ってみてmixiページアプリの開発を体験してください。

田中:エンジニア・デザイナーに向けてではないのですが、すでにmixiページを運営している運営側の皆さんにはぜひとも「こういうことをしたい」⁠こういう展開ができないか」という、アイデアや要望を出してもらいたいですね。そうすれば、mixiを使っているエンジニア・デザイナーの方たちにニーズが届き、新しいmixiページアプリが生まれるチャンスが増えるからです。当然、作り手も、いろいろなmixiページを見て、運営サイドに向けて提案するということもしてもらえたら嬉しいです。

そういったニーズを起点として「何がほしいか」⁠何を作りたいか」そのモチベーションが高まっていくはずです。

馮:ありがとうございました。

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