“REAL IT PLATFORM”を実現するNECのミドルウェア

NEC技術本部長が語るシステムエンジニアのあるべき姿

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現在,NECで開発事業本部長の任にある岸上信彦氏に,システムエンジニアに求められる資質について語っていただきました。氏の技術者としての長いキャリアに裏付けられた貴重な話の数々は,エンジニアにとって大いに参考になるものばかりでした。残念ながら,誌面の都合上,そのすべてを掲載することはできませんが,本誌読者にとって特に興味深いと思われる話を抜粋して記事にしました。システムエンジニアとしてどういうスタンスで仕事に取り組み,今後どのように歩むべきかというテーマの重要な指針となるものです。

新しい技術を吸収し自分のものにする

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こういったIT関連の雑誌のインタビューで必ずと言っていいほど聞かれるのが,新入社員はあらかじめコンピュータやプログラミング言語の知識が必要かという質問です。もちろん,スタートポイントでは知識はあったほうがいいに決まっています。即戦力になるわけですから当然です。しかし,事前の知識がないからといって悲観する必要などはありません。それよりも重要なことは新しい技術を吸収していく力があるかです。

コンピュータ業界は,技術の進歩と変化が非常に激しい世界です。重要なのは,常に新しい技術に関心をもち続けられるか,そしてそれを短時間のうちに的確に吸収できるか,さらに仕事に活かしていくことができるか─⁠─そのようなスキルです。大学を出たからもう勉強は終了というのではなく,新しい技術に常に関心をもつようなチャレンジ精神旺盛なタイプの人こそがエンジニアに向いていると言えます。

それと同時に,私が常々部下や若いエンジニアに言っているのは,技術の仕掛けを理解する力をもちなさいということです。

今,目の前にあるテクノロジーを表面的に理解するだけでは,それが発展したときには追随できなくなってしまう可能性が高いのです。たとえばアプリケーションの操作手順を単純に覚えるだけではだめなのです。なぜそのような操作の流れになっているのか,どうしてそういう組み合わせで操作させているのかという仕掛けを理解する必要があるのです。仕掛けが理解できていれば,変化にも進歩にも対応することができます。

技術というのは非常に論理的にできているので,その裏付けとなっている仕掛けをきちんと理解しておくことはエンジニアにとって非常に大切なことです。

開発者は批評家になってはいけない

次に,こういうエンジニアは困るという例をあげましょう。

ご存知のように,開発はチームを組んで行いますから,ときにはトラブルが発生することもあります。このような場合に一番困るのは,チーム内から批評家が出てくることです。こんなふうにやるからダメなんだよ,こんなことではプロジェクトは絶対に成功しない…などと批判を繰り返すタイプの人です。しかし,批判をするだけではなんら問題解決につながりません。むしろ,チームのモチベーションが下がるだけです。

開発者は批評家ではないのです。起きてしまったことをあれこれとあげつらうより,問題の解決案を出すことが先です。そして,良い対案を出せる人こそが優れたエンジニアなのです。トラブルが起きた場合,私は必ず,文句を言っている暇があるなら対案を出しなさいと言います。文句を1つ言うのであれば,対案を最低3つは用意する,それぐらいの心積もりがなければ批評などする資格はないのです。

ただし,対案を出すためには広い知識が必要になります。知識の幅が狭いと,対案を出せと言われても出しようがないですし,仮に出したところで狭い範囲の知識から出たものなのであまり有効ではありません。C言語しか知らないとか,あるいはOSはWindowsしか触ったことがない,などというのではおのずと限界があります。

こうしたことを踏まえて,私は30歳になるまでに最低2つ以上の言語を習得すべきだと考えます。多くの言語を知ることは,多くの解決方法を生み出す元となりますし,あらゆる角度からものを考えるためには,幅広い知識が絶対に必要だからです。

ワールドワイドに考えられる力を備える

これからのシステムエンジニアには,広い視野が必要になっていくと思います。部署,会社,あるいは日本国内などといった狭い視野でしかものを見られないとしたら,厳しい言い方ですが,それではエンジニアとして生き残るのは厳しいと言わざる得ません。

今や,中国,インド,さらにはベトナムと,次々に優秀なエンジニアを生み出す国が登場しています。もはや技術の分野には国境などなくなりつつあります。ワールドワイドなものの見方が必要となる時代に移ってきているのです。

とはいっても,今すぐに世界に飛び出すことができるかといえばそうもいきません。ですので,身近なところからもっと外部の人と接触する機会をもつべきだと思います。できれば,年齢を問わず広い範囲の方と接したほうがいいでしょう。

私は,外部のコミュニティと積極的に接触するようにしています。それも社会人になりたての20代の若者から,自分よりずっと上の年齢の人まで多岐に渡って交流をもっています。自分と違う世界の人と話しをすることはとても重要で,そこで得られた知識はあらゆることのヒントとなり,必ず仕事に活かされるものなのです。つまりは多くの人に対して好奇心を抱き,多くの知識を吸収するということです。

いずれにしろ,システムエンジニアというのは,常に最新の技術に出会え,多くの研究テーマが発見できるやりがいのある魅力的な職業です。立ち止まることなく,素晴らしいエンジニアを目指してください。

※本稿は岸上信彦氏とのインタビューをもとに編集部が記事に起こしたものです。ご多忙の中,貴重な時間を割いていただいた岸上氏にあらためて感謝の意を表します。

著者プロフィール

岸上信彦(きしのうえのぶひこ)

日本電気株式会社。