gihyo.jp書籍案内 ≫ 『おうちで楽しむ にほんのもてなし』刊行記念特別エッセイ

「にほんを歩く、行事に出かける」便り 第四回

おうちで楽しむ にほんのもてなし』刊行記念特別エッセイ。広田千悦子さんが足を運んだにほんの行事をお便りとして毎月届けていただきます。行事を通して見えてくる「もてなし」の心に触れてみましょう。

新しい一年が迎えましたが,今年は例年にくらべ,初詣に足を運んだ方が多かった様子。一年を無事で過ごせるようにと大きな幸せよりささやかな願いを込めて,お祈りされた人もたくさんおられるのではないでしょうか。

第四回のテーマは「七福神めぐり」。福をあつめに,東京・深川を歩きます。

1月 七福神めぐり 文・イラスト 広田千悦子

1月12日,深川七福神めぐりへ行ってまいりました。

印を色紙に押していただきながら7つのお寺と神社をめぐります。

全国には多くの七福神がありますが,深川七福神は東京の七福神のなかでも有名。

史跡旧跡が多くて下町の風情あふれるコースはぷらりぷらりと歩いてまわると約2時間程度の距離。東京都が指定した歴史と文化の散歩道とほとんど同じですから七福神詣でをしながら,途中の道を満喫。楽しみながら歩くことができます。

例えば松尾芭蕉が晩年51歳で亡くなるまで根拠地とした深川芭蕉庵の跡。

平賀源内が日本ではじめて電気実験をした跡。

江戸時代の老中,松平定信のお墓などなど,数え切れないほどたくさんの史跡がありますから時間が許せばじっくりと歩きたいところ。そんなお楽しみがあるこのコースは人気も高く1日から15日までの開帳期間には長い行列が並んでいるところも。

さて,七福神とは,7つの災いを除け,7つの幸せをもたらしてくれるという神さまたち。

「七」という数自体がおめでたい意味を持っており,江戸時代には7の福神をお参りすることが大流行しました。

では7つの福とはなんでしょう。7つの福とそれをかなえてくれる神さまは次のとおり。

寿命―寿老人,裕福―大黒天,人望―恵比寿神,

清簾―布袋尊,威光―毘沙門天,愛敬―弁財天,大量―福禄寿

の7つ。

興味深いのは,日本古来の神さま,インドの神話の神さま,中国の神さまと日本にとどまらないこと。それどころか七福神の中で日本由来の神さまは,じつは恵比寿神だけとなっています。

さて,深川七福神で一番私のこころに残ったのが富岡八幡宮。ここは七福神でいえば恵比寿神が祭られている場所。江戸最大の八幡様の名にふさわしくたくさんの人が訪れていました。

境内でひらかれる骨董市は大物から小物まで様々な種類のものが出ていて古いもの好きな人は何度でも訪れたくなるはず。私は粋な大黒天の置きものを台所に飾りたくてずっと長い間探していたのですが,やっとここで見つけることができました。

お台所に神さまにいてもらえたら,お料理するときのもてなしの気持ちも清らかなものになりそう。

深川七福神のご開帳は1日から15日で終わりなので,それ以外の日に訪ねても色紙や鈴などの授与はされませんが参拝の証とよばれる御朱印をお願いして歩くというのもおすすめです。

御朱印は寺院の住職,または職員さんが印を押して,参拝した日付や寺院名などを直筆で書いてくださるもの。

「お願いします」とさしだすと,こころをこめて書いてくださいます。

深川七福神の御朱印には皆,七福神の印が押してあり,墨と朱色が紙の上に生み出す印は美しく見とれてしまうものばかり。参拝してからお願いするなどマナーを守っていただきましょう。

まだまだ全国には一月いっぱいご開帳しているところもあります。例えば藤沢七福神,三浦七福神など。

7つの福をあつめる小さな旅,楽しんでみませんか。

Information

深川七福神(ふかがわしちふくじん)

東京都の江東区内に点在する深川七福神巡りは,江戸時代から「東京の七福神」として人々に親しまれてきました。史跡旧跡なども同時に訪れながら,下町めぐりもいいでしょう。

深川七福神会
〒135-0033 東京都江東区深川2-16-7
心行寺中
http://www.fukagawa7.net/index.html

広田千悦子(ひろたちえこ)

日本の歳時記,四季や暮らしなどをテーマに新聞や雑誌でイラスト,コラムを連載中。うつわ,水彩,ことば,書などの展覧会を各地で開く。著書に『おうちで楽しむにほんの行事』(小社刊),『湘南ちゃぶ台ライフ』(阪急コミュニケーションズ 夫・行正氏と共著),『知っているとうれしいにほんの縁起もの』(徳間書店)などがある。

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