無関心な現場で始める業務改善

第19回 いつまでやるのかモグラたたき

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今回は,現場力を高めることについて,考えてみます。

問題が起きた際に,自分たちで解決できることが高い現場力なのでしょうか?問題が起こらない組織やプロセスを構築することが高い現場力なのでしょうか?現場力の定義にはいろいろあるでしょうが,最初はやはり抵抗が目立つものです。

まずは,我々が業務改善のコンサルティング現場で目の当たりにする場面をいくつか示しながら,これまでの連載でお伝えしてきたことを振り返ってみましょう。

無関心現場における初回キックオフ

現場の拒否反応の兆しは,最初の顔合わせの段階から見え隠れしています。

我々が業務改善のプロジェクトに入る前には,入念に依頼者であるコアメンバーと打ち合せを行い,業務上の問題だけでなく組織特性,社員のカラー,企業風土などの話を伺いながら「変革の青写真」を作り上げます。現場のメンバーとの初顔合わせはキックオフと称する1,2時間のミーティングです。依頼者のコアメンバー側からプロジェクトの目的を伝え,続いて我々からどんなスケジュールで,何をどうやって進めていくかを伝えます。

事前に打ち合わせを行っていたコアメンバー以外は,我々も初対面です。もちろん,現場のメンバーも同じで,社外の我々が入ってきたことに対してあからさまに警戒を示す人,ナナメに構えている人,不安そうな人などが皆一様に我々の品定めをします。考えてみれば当たり前で,ただでさえ忙しいのに,よくわからない業務改善のキックオフミーティングに呼ばれて(内心,出たくない)⁠初対面の我々から小難しい話を聞かされるわけですから。改善に無関心な現場であればあるほど,いざ改善が始まろうと差し迫ってくると,それなりの主義主張をし始めます。

やらないための悪あがき

キックオフの後には質問の時間を設けていますが,現場メンバーが警戒を示している,ナナメに構えているときは,どこの会社も同じような質問が出ます。下記のような質問で,⁠→」以下は我々の心の声です。

  • 今まで職場で取り組んできた改善活動と何が違うんですか?
    →それがうまくできていたら,今この場に我々はいないけど。

  • 改善の時間は定時後や土日じゃないと取れません。残業代,出るんですか?
    →残業代?改善は仕事だと言ったのに聞いてないな~第7回参照)⁠

  • 改善のせいで,仕事が遅れたら責任取れますか?
    →責任…?別に我々は困らないし,我々が取るものでもないけどね。

  • 今期の人事の目標設定に業務改善はないんですけど,評価されるんですよね?
    →改善できてから言おうね!

まぁ,このように"やらないための悪あがき"をするものです。⁠文句ばかり言ってないで,せっかくの機会だし,今までの膿を全部出し切ろうよ!」と頼もしい人もいます。この段階では変革者として本物か似非かまでは見抜けませんが,コアメンバーや我々としては内心,⁠そうそう,もっと言ってやれ!」と思っています。

そこで,質問者は「そうは言ったって,課長。どうなんですか?」と今度は矛先を自分の上司やコアメンバーに向けるわけです。

我々もそれなりに場数を踏んでいます。だからと言って慣れるものではありませんが,この程度であればかわいいものです。第2回第3回では,ソフトアプローチ,ソフト改革を同時に走らせる話をしましたが,このソフト改革を上手に走らせないと,現場には"やらされ感"が出るので,ファシリテーションも必要になることは以前にお話したとおりです。ある程度の時間をかけながら,我々と現場の信頼関係を築くことは欠かせません。

「できない」ではなく「やらない」

さて我々は,改善の初期段階ではいろいろな切り口で,現場の問題を聞きます。

1対1でヒアリングをする場合,グループディスカッションをする場合,付箋紙や模造紙を使うこともあります。業務モデリングを終えているときは,すでにできあがっている業務フローを眺めながらとケースバイケースです。

第8回で,問題の深掘りの話をしていますが,問題出しで多く見られることは,下記の2つです。

  • Case 1:原因と一緒に問題が出てくる
     →例)⁠○が原因で,△の問題が発生している」

  • Case 2:解決策と一緒に問題が出てくる
     →例)⁠□の問題が発生しているので,×すればよい」

それぞれ,原因が深掘りした根っこの原因となっているか,問題がまだ現象レベルの表層のものかは別にして,我々は少し意地悪にこう言います。

  • 「原因がわかっているなら,なぜ直さないの?」
  • 「解決策がわかっていて,なぜやらないの?」

こう問われる現場の答えも決まっていて,⁠うちの部門じゃないから言いにくい」⁠やる時間がない」⁠それはうちの部門の仕事ではない」などが8割以上です。第17回第18回で話をしたような経営に食い込むような内容ではありません。改善の実行に恐ろしく費用がかかるとなれば,慎重にならざるを得ませんが,そうでない理由ばかりです。

弱くなる現場

その気になれば改善できるものに対して,"やらない理由"をこの後には延々と述べるわけです。問題だとわかっている,原因や解決策も目処がついているけど,先送りをしてしまい,日常の業務の繁忙さに埋没する繰り返しです。要は「できない」ではなく,⁠やらない」だけです。

このような状態が長く続くと,現場の底力である「本質を見極める」⁠何が原因か徹底的に探索する」ことに必要な"考える力"が弱くなり,その場しのぎの対処療法で片付けようとします。いわゆるモグラたたき状態に陥ります。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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