知りたい!サイエンス
安全な建物とは何か
―地震のたび気になる“建築基準”―
- 神田順 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2010.2.16[在庫なし]
- 判型
- 四六
- 頁数
- 226ページ
- ISBN
- 978-4-7741-4162-6
サポート情報
概要
住んでいるマンションの耐震強度が0.5しかないと知ったら、人は慌て、施工業者や販売業者を訴えるでしょう。姉歯問題ではこのことがあちこちで持ち上がり、耐震基準の計算法が厳密化し建築基準法が変わりました。耐震強度という言葉が一人歩きをし、法で厳しく管理しようという結果が残りました。しかし耐震強度はいろいろなうちの一つの尺度であり0.5だから危険でもなければ、1以上だから安全でもないのです。また地震そのものや、地震動により建物がどう揺れるかは不確定な要素が大きいので、法律で一律で縛るのはおかしいのです。ではいったい、地震に安全な建物とは何でしょうか。本書はその出発点に立ち返り、建物の耐震や免震について解説し、安全をどう守かについて語ります。
こんな方にオススメ
- 耐震・免震・制震について興味のある方
- 自分が住む建物の耐震強度について知りたい方
目次
第1章 地震被害の不安
- 阪神淡路大震災では建物はどれくらい被災したか
- 被害統計の数字を検証してみよう
- コラム◇ピロティの被害例
- 地震に対する現代の安全感覚
第2章 耐震強度って何?
- 耐震設計ではどのようなことが検討されるのか
- 保有耐力はどのように求められるか
- 構造計算法によって変わる耐震強度
- 姉歯事件はだれに責任があるのか
第3章 地震はどこまでわかっている?
- プレートテクトニクスの動きと活断層
- 地震の被害は地震の規模より地震動
- 地震動の地盤による増幅
- ハザードマップとより高い安全
- コラム◇確率論的地震動予測地図
第4章 免震構造の安全性
- 免振構造はどうして揺れないか
- 免震構造の実現のための努力
- コラム◇運動方程式と減衰定数
- 免震構造の用途と将来
第5章 原子力発電所の耐震性
- 一般建物とは異なる基準、耐震設計審査指針
- 原子力発電所の耐震安全性の流れ
- 原子力発電所に必要な安全性をどう決めるか
第6章 安全性を数字ではかる
- 不確かさとは何だろう
- 自然の営みから基準をつくる
- 客観確率と主観確率
- 安全性を確率的に表す信頼性指標
- コラム◇ISOの構造基準
第7章 法律は基準?
- 法律の問題点と建築学会の基準・規準・指針
- 建築基準法はどのように変遷してきたか
- 建築基本法は何を目指しているのか
- コラム◇建築基本法 (2006年準備会案)
第8章 安全は誰が保障する?
- 耐震基準の意味を考える??
- 国に求めるもの・専門家に求めるもの??
第9章 社会的合意に基づく耐震性
- 建物によって異なるべき安全性
- 建物の設計に必要な“危険の認知”
- 建物の費用は損失を含めて決まる
- 耐震安全の社会的合意に向けて
プロフィール
神田順
1947年、岐阜県生まれ。東京大学建築学科、大学院修士修了。エディンバラ大学PhD取得。竹中工務店にて構造設計の実務経験の後、1980年より東京大学工学部助教授のち教授。1999年より新領域創成科学研究科社会文化環境学教授。研究テーマは建築物に作用する荷重評価を中心に構造安全論全般。著書に「耐震建築の考え方」(岩波科学ライブラリー)、「東京の環境を考える」(編著、朝倉書店)など。