知りたい!サイエンスシリーズ安全な建物とは何か
―地震のたび気になる“建築基準”

[表紙]安全な建物とは何か ―地震のたび気になる“建築基準”―

紙版発売

四六判/226ページ

定価1,738円(本体1,580円+税10%)

ISBN 978-4-7741-4162-6

ただいま弊社在庫はございません。

→学校・法人一括購入ご検討の皆様へ

書籍の概要

この本の概要

住んでいるマンションの耐震強度が0.5しかないと知ったら,人は慌て,施工業者や販売業者を訴えるでしょう。姉歯問題ではこのことがあちこちで持ち上がり,耐震基準の計算法が厳密化し建築基準法が変わりました。耐震強度という言葉が一人歩きをし,法で厳しく管理しようという結果が残りました。しかし耐震強度はいろいろなうちの一つの尺度であり0.5だから危険でもなければ,1以上だから安全でもないのです。また地震そのものや,地震動により建物がどう揺れるかは不確定な要素が大きいので,法律で一律で縛るのはおかしいのです。ではいったい,地震に安全な建物とは何でしょうか。本書はその出発点に立ち返り,建物の耐震や免震について解説し,安全をどう守かについて語ります。

こんな方におすすめ

  • 耐震・免震・制震について興味のある方
  • 自分が住む建物の耐震強度について知りたい方

目次

第1章 地震被害の不安

  • 阪神淡路大震災では建物はどれくらい被災したか
  • 被害統計の数字を検証してみよう
  • コラム◇ピロティの被害例
  • 地震に対する現代の安全感覚

第2章 耐震強度って何?

  • 耐震設計ではどのようなことが検討されるのか
  • 保有耐力はどのように求められるか
  • 構造計算法によって変わる耐震強度
  • 姉歯事件はだれに責任があるのか

第3章 地震はどこまでわかっている?

  • プレートテクトニクスの動きと活断層
  • 地震の被害は地震の規模より地震動
  • 地震動の地盤による増幅
  • ハザードマップとより高い安全
  • コラム◇確率論的地震動予測地図

第4章 免震構造の安全性

  • 免振構造はどうして揺れないか
  • 免震構造の実現のための努力
  • コラム◇運動方程式と減衰定数
  • 免震構造の用途と将来

第5章 原子力発電所の耐震性

  • 一般建物とは異なる基準,耐震設計審査指針
  • 原子力発電所の耐震安全性の流れ
  • 原子力発電所に必要な安全性をどう決めるか

第6章 安全性を数字ではかる

  • 不確かさとは何だろう
  • 自然の営みから基準をつくる
  • 客観確率と主観確率
  • 安全性を確率的に表す信頼性指標
  • コラム◇ISOの構造基準

第7章 法律は基準?

  • 法律の問題点と建築学会の基準・規準・指針
  • 建築基準法はどのように変遷してきたか
  • 建築基本法は何を目指しているのか
  • コラム◇建築基本法 (2006年準備会案)

第8章 安全は誰が保障する?

  • 耐震基準の意味を考える??
  • 国に求めるもの・専門家に求めるもの??

第9章 社会的合意に基づく耐震性

  • 建物によって異なるべき安全性
  • 建物の設計に必要な“危険の認知”
  • 建物の費用は損失を含めて決まる
  • 耐震安全の社会的合意に向けて

著者プロフィール

神田順(かんだじゅん)

1947年,岐阜県生まれ。東京大学建築学科,大学院修士修了。エディンバラ大学PhD取得。竹中工務店にて構造設計の実務経験の後,1980年より東京大学工学部助教授のち教授。1999年より新領域創成科学研究科社会文化環境学教授。研究テーマは建築物に作用する荷重評価を中心に構造安全論全般。著書に「耐震建築の考え方」(岩波科学ライブラリー),「東京の環境を考える」(編著,朝倉書店)など。