人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
2012年9月29日紙版発売
瀧澤武信,松原仁,小谷善行,鶴岡慶雅,山下宏,金子知適,保木邦仁,伊藤毅志,竹内章,篠田正人,古作登,橋本剛 著,コンピュータ将棋協会 監修
四六判/304ページ
定価2,068円(本体1,880円+税10%)
ISBN 978-4-7741-5326-1
書籍の概要
この本の概要
「人間対コンピュータ」どちらが能力が上なのか? 創造性の点においてコンピュータは人間より劣るもの,と思われるが将棋ではどうなのか。清水女流王将とあから2010との対局はさまざまな反響を呼び起こした。本書は,単に人間に勝つ,というよりも「人間に勝てるコンピュータ」を人間がどのように開発していったのか,その過程を開発者自らが書き下ろした。「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」などの強豪プログラムの設計思想から導かれる戦いの歴史。
こんな方におすすめ
- コンピュータ将棋に興味がある方
- アルゴリズムなどに興味のある方
著者の一言
最近,プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトの対戦が話題になってきている。コンピュータ将棋は1974年11月から開発が始まっているが,当初はすこぶる弱く,アマチュアの初段の実力があれば,6枚落ち(飛車,角行,桂馬,香車を除くハンディキャップ)でも楽々勝てるレベルであった。これが強くなってきたのは20世紀末頃のことである。そこからの強さの伸びはかなり速くなってきたが,それが爆発的になったのは,2005年の激指,2006年のBonanzaの登場からである。
2005年6月25日・26日にはその年の世界コンピュータ将棋選手権(WCSC)で優勝した「激指」がアマ竜王戦全国大会に招待されて参加し,並み居る強豪の中でベスト16に入る活躍を見せた。ここからは,強い人間との対戦も平手(ハンディキャップなし)が当たり前になった。2007年3月21日には,前年のWCSCで優勝した「Bonanza」が渡辺明竜王に挑戦,負けたとはいえ大善戦し,注目を集めた。2010年10月11日には合議ソフト「あから2010」が清水市代女流王将に勝ち,2012年1月14日には前年のWCSCで優勝した「ボンクラーズ」が引退棋士とはいえ元名人の米長邦雄永世棋聖に勝つなど,プロレベルに近いところまで来ていることが明らかになっている。
このような時期に「人間に勝つコンピュータ将棋の作り方」という書籍を出版できることは,私たちとしても嬉しいことである。本書では,コンピュータ将棋の歴史,基本技術と2010年の「あから2010」に加わったコンピュータソフトの作者等自らによる各ソフトの発想の原点を中心とした解説,人間プレイヤ側からの視点,対人間プレイヤの戦略などを載せている。
本書をお読みいただき。あらためてコンピュータ将棋に挑戦したり,コンピュータ将棋の作成に挑戦していただければ幸いである。
各章の担当著者
- プロローグ「清水市代女流王将VSあから2010 平手一番勝負」……松原仁氏
- 第1章「負け続けた35年の歴史」……瀧澤武信氏
- 第2章「コンピュータ将棋のアルゴリズム」……小谷善行氏
- 第3章「激指の誕生」……鶴岡慶雅氏
- 第4章「YSSの誕生」……山下宏氏
- 第5章「GPS将棋の誕生」……金子知適氏
- 第6章「数の暴力で人間に挑戦! Bonanzaの誕生」
……保木邦仁氏 - 第7章「文殊の誕生,あから2010の人間への挑戦」
……伊藤毅志氏,金子知適氏,保木邦仁氏 - 第8章「習甦の誕生」……竹内章氏
- 第9章「プログラムの主戦場Floodgateの切磋琢磨」
……篠田正人氏 - 第10章「コンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ将棋ソフト,人間の効果的戦略」……古作登氏
- 第11章「女流王将戦一番勝負」……橋本剛氏
- エピローグ「名人に勝つXデイの後で」……松原仁氏
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