WEB+DB PRESS plusシリーズエンジニアの知的生産術
――効率的に学び,整理し,アウトプットする

[表紙]エンジニアの知的生産術 ――効率的に学び,整理し,アウトプットする

紙版発売
電子版発売

A5判/272ページ

定価2,728円(本体2,480円+税10%)

ISBN 978-4-7741-9876-7

電子版

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書籍の概要

この本の概要

仕事をするうえで,どのように学び,整理し,アウトプットするのか。ソフトウェアエンジニア向けに,プログラミングと執筆を具体例として,知的生産の方法を解説した書籍です。サンプルコードの丸写しでは仕事に役立つプログラムを書けないのと同様に,知的生産術も丸写しではあなたの役に立つものにはなりません。本書では,数々の知的生産術を比較して学ぶことで,何が重要な原則なのかを体得し,みなさんが自分の環境に合わせて手法を修正し,組み合わせ,新しく生み出せるようになることを目的とします。また筆者が日ごろ行っている具体的な手法や,今までの試行錯誤も紹介します。

こんな方におすすめ

  • 学習の方法やアイデアの出し方を学びたい方

本書に関するお知らせ

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はじめに
私は,知的生産術の良い参考書が欲しいです。人に知的生産術を教えるときに,お勧めできる本が欲しいです。
なぜ知的生産術に投資するのか
2018年の8月10日に『エンジニアのための知的生産術』という本を出版しました。

本書のサンプル

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目次

  • 本書公式ページ
  • はじめに
  • 謝辞

第1章 新しいことを学ぶには

学びのサイクル

  • 情報収集
  • モデル化・抽象化
  • 実践・検証

サイクルを回す原動力 やる気

  • 生徒としての学びと大学からの学びの違い
    • 教科書が与えられる
    • 学ぶ時間はどれくらいあるか?
    • 学ぶお金は誰が出すのか?
    • 逆風
  • やる気を維持するには?
    • ゴールは明確に
    • チュートリアルはゴールを近くする
    • [Column]SMART criteria
  • 大学に入りなおすべき?
    • もっと気軽な方法
  • 良い参考書を見つけるコツ
  • 紙の参考書を選ぶコツ
    • 大学の講義の参考図書に選定されている
    • 正誤表が充実している
    • 改訂されている・ロングセラーである

情報収集の3つの方法

  • 知りたいところから
    • 遅延評価的勉強法
    • 「そんなの必要ないよ」YAGNI原則
    • Matzのソースコードの読み方
  • 知りたいところから学ぶための前提条件
    • 目標が明確化されている
    • 目標が達成可能である
    • 大まかに全体像を把握している
  • 大雑把に
    • [Column]見つける力は10年後も必要か?
    • 1,000ページ以上ある資料も,目次はたった6ページ
    • ソースコードを段階的に読む
    • ドキュメントの大まかな構造
    • 英語の論文の大まかな構造
    • 民法の地図
    • [Column]民法マップの抜粋
  • 片っ端から
    • 写経というテクニック
    • 数学
    • 時間を区切ろう
    • 写経は補助輪
    • 再び写経を必要とするとき

抽象とは何か

  • 抽象・abstract
  • モデル・模型
  • モジュール
    • 相互作用を制限する
    • 重要でない部分を隠す=重要な部分を抜き出す
  • モデル・ビュー・コントローラ
  • パターンの発見
  • デザインパターン
    • [Column]パターンに名前を付けること
  • なぜ抽象化が必要か?
    • パターンの発見による一般化

どうやって抽象化するか

  • 比較して学ぶ
    • 「同じ」と「違う」の間に注目
    • たとえ話
    • 違いに注目
  • 歴史から学ぶ
  • パターン本から学ぶ

検証

  • 作って検証
    • 解説も作ることの一種
  • 試験で検証
  • 検証の難しい分野

まとめ

第2章 やる気を出すには

やる気が出ない人の65%はタスクを1つに絞れていない

  • 絞るためにまず全体像を把握しよう
  • Getting Things Done まずすべて集める
  • 全部集めて,そのあとで処理をする
  • どうやってタスクを1つ選ぶのか
    • 部屋の片付けと似ている
    • まず基地を作る
    • タスクが多すぎる

「優先順位付け」はそれ自体が難しいタスク

  • 並べることの大変さ
    • [Column]緊急性分解理論
  • 1次元でないと大小比較ができない
  • 不確定要素がある場合の大小関係は?
    • 探索と利用のトレードオフ
    • 不確かなときは楽観的に
    • リスクと価値と優先順位
  • 重要事項を優先する
    • 「通知された」は「緊急」ではない
    • 価値観はボトムアップに言語化する
    • [Column]7つの習慣
  • 優先順位を今決めようとしなくてよい

1つのタスクのやる気を出す

  • タスクが大きすぎる
    • 執筆という大きなタスク
  • タイムボックス
    • 集中力の限界
    • ポモドーロテクニック
    • 見積り能力を鍛える
    • 分単位で見積もるタスクシュート時間術
    • [Column]PDCAサイクル
    • 計測し,退け,まとめる

まとめ

第3章 記憶を鍛えるには

記憶のしくみ

  • 海馬
  • 海馬を取り除かれた人
  • Morrisの水迷路
  • 記憶は1種類ではない

記憶と筋肉の共通点

  • 信号を伝えるシナプス
  • シナプスの長期増強
  • まず消えやすい方法で作り,徐々に長持ちする方法に変える

繰り返し使うことによって強くなる

  • [Column]海馬では時間が圧縮される

アウトプットが記憶を鍛える

  • テストは記憶の手段
  • テストをしてからさらに学ぶ
  • 自信はないが成績は高い
  • 適応的ブースティング
  • テストの高速サイクル

知識を長持ちさせる間隔反復法

  • 忘れてから復習する
  • ライトナーシステム
  • 問題のやさしさ
  • 知識を構造化する20のルール
  • Anki
  • 難易度の自動調節
  • 教材は自分で作る
    • [Column]知識を構造化する残り15のルール
    • 作る過程で理解が深まる
    • 個人的な情報を利用できる
    • 著作権と私的使用のための複製

まとめ

第4章 効率的に読むには

「読む」とは何か?

  • 本を読むことの目的
    • 娯楽はスコープ外
    • 情報を得ることが目的か?
    • 情報伝達の歴史
    • 一次元の情報を脳内で組み立てる
    • 本の内容だけが理解を組み立てる材料ではない
    • 「見つける」と「組み立てる」のグラデーション
  • 「読む」の種類と速度

あなたの普段の読む速度は?

  • 読む速度のピラミッド
  • ボトルネックはどこ?
  • 速読の苦しみ
    • 続けられるペースを把握する
  • 読まない
    • 読まずに知識を手に入れる

1ページ2秒以下の「見つける」読み方

  • Whole Mind System
    • ❶準備
    • ❷プレビュー
    • ❸フォトリーディング
    • ❹質問を作る
    • ❺熟成させる
    • ❻答えを探す
    • ❼マインドマップを作る
    • ❽高速リーディング
    • 5日間トレーニング
  • フォーカス・リーディング
    • 速度を計測しコントロールする
  • 見出しなどへの注目
    • [Column]時間軸方向の読み方

1ページ3分以上の「組み立てる」読み方

  • 哲学書の読み方
    • 開いている本・閉じている本
    • 外部参照が必要な本
    • 登山型の本とハイキング型の本
  • 1冊に40時間かけて読む
    • 棚を見る
    • 読書ノートに書きながら読む
    • わからないことを解消するために読む
  • 数学書の読み方
    • わかるの定義
    • わかることは必要か?

読むというタスクの設計

  • 理解は不確実タスク
  • 読書は手段,目的は別
    • 大雑把な地図の入手
    • 結合を起こす
    • 思考の道具を手に入れる
  • 復習のための教材を作る
    • レバレッジメモを作る
    • Incremental Reading
    • 人に教える

まとめ

第5章 考えをまとめるには

情報が多すぎる? 少なすぎる?

  • 書き出し法で情報量を確認
    • 質を求めてはいけない
    • 実践してみよう
    • 100枚を目標にしよう
    • 100枚目標のメリット
    • 重複は気にしない

多すぎる情報をどうまとめるか

  • 並べて一覧性を高くする
    • [Column]書き出し法の実例
  • 並べる過程で思い付いたらすぐ記録
  • 関係のありそうなものを近くに移動
    • [Column]ふせんのサイズ
    • KJ法の流れ
  • グループ編成には発想の転換が必要
    • グループ編成は客観的ではない
    • グループ編成は階層的分類ではない
    • 既存の分類基準を使うデメリット
    • [Column]フレームワークによる効率化
    • 事前に分類基準を作るデメリット
    • 分類で負担を減らすメリット
  • 関係とは何だろう
    • 類似だけが関係ではない
    • NM法は対立関係に着目する
    • 話題がつながる関係
  • 束ねて表札を付け,圧縮していく
    • 表札作りのメリット・デメリット
    • 表札を作れるグループが良いグループ
    • ふせんが膨大なときの表札作り
    • 「考えがまとまらない」と「部屋が片付かない」は似ている
    • [Column]表札とふせんの色
    • [Column]知識の整合性
  • 束ねたふせんをまた広げる
  • 文章化してアウトプット

社会人向けチューニング

  • ステップの省略
  • 中断可能な設計
  • A4書類の整理法

繰り返していくことが大事

  • KJ法を繰り返す
  • 繰り返しのトリガ
  • インクリメンタルな改善
  • 過去の出力を再度グループ編成
  • 電子化

まとめ

第6章 アイデアを思い付くには

「アイデアを思い付く」はあいまいで大きなタスク

  • アイデアを思い付く3つのフェーズ
    • 耕すフェーズ
    • 芽生えるフェーズ
    • 育てるフェーズ
  • 先人の発想法
    • Youngのアイデアの作り方
    • 川喜田二郎の発想法
    • Otto Scharmerの変化のパターン
    • 芽生えは管理できない

まずは情報を収集する

  • 自分の中の探検
  • 言語化を促す方法
    • 質問によるトリガ
    • フレームワークのメリットとデメリット
    • 創造は主観的
  • 身体感覚
    • 絵に描いてみる
  • たとえ話・メタファ・アナロジー
    • NM法とアナロジー
    • Clean LanguageとSymbolic Modelling
  • まだ言葉になっていないもの
    • 暗黙知 解決に近付いている感覚
    • [Column]二種類の暗黙知
    • 違和感は重要な兆候
    • Thinking At the Edge まだ言葉にならないところ
    • 辞書との照合
    • 公共の言葉と私的な言葉
    • KJ法も違和感に注目
  • 言語化のまとめ

磨き上げる

  • 最小限の実現可能な製品
    • 誰が顧客かわからなければ,何が品質かもわからない
    • 何を検証すべきかは目的によって異なる
  • U曲線を登る
  • 他人の視点が大事
  • 誰からでも学ぶことができる
  • タイムマシンを作れ
    • [Column]知識の分布図
  • 再び耕す
    • [Column]書籍とは双方向のコミュニケーションができない

まとめ

第7章 何を学ぶかを決めるには

何を学ぶのが正しいか?

  • 数学の正しさ
  • 科学と数学の正しさの違い
  • 意思決定の正しさ
    • 繰り返す科学実験と一回性の意思決定
    • 事後的に決まる有用性
    • 過去を振り返って点をつなぐ

自分経営戦略

  • 学びたい対象を探す探索戦略
    • [Column]選択肢の数が意思決定の質にもたらす影響
    • 探索範囲を広くする
  • 知識を利用して拡大再生産戦略
  • 卓越を目指す差別化戦略
    • 他人からの知識の獲得はコストが安い
    • 他人から得た知識は価値が低い
    • 卓越性の追求
  • かけ合わせによる差別化戦略
    • ふたこぶの知識
    • 連続スペシャリスト
    • 新入社員の戦略案
  • 組織の境界をまたぐ知識の貿易商戦略

知識を創造する

著者プロフィール

西尾泰和(にしおひろかず)

24歳で博士(理学)を取得。2007年よりサイボウズ・ラボ。個人やチームの生産性を高める方法の研究開発をしている。プログラミング言語の進化による生産性向上にも関心があり,2013年に出版した『コーディングを支える技術』は,中国語,韓国語に翻訳される。2014年技術経営修士取得。ニューラルネットで意味を扱う技術について『word2vecによる自然言語処理』出版。2015年より一般社団法人未踏の理事を兼任。2018年より東京工業大学 特定准教授を兼任。