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第一線のソフトウェア開発を知るために ——『Androidを支える技術〈Ⅰ〉/〈Ⅱ〉』紹介に寄せて

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Androidを支える技術〈Ⅰ〉Androidを支える技術〈Ⅱ〉が1月13日に開催された新春座談会 このコンピュータ書がすごい!2018年版にて紹介されました。その際,著者の有野和真氏にコメントをいただきました。ここに全文を掲載します。

第一巻&第二巻について ……Androidを支える技術〈Ⅰ〉/〈Ⅱ〉

今回の本(Androidを支える技術〈Ⅰ〉/〈Ⅱ〉,以下第一巻/第二巻)は,最近の「こんな簡単にアプリが作れます!」という本や,⁠10年前だが今でも内容はまったく古びてない」みたいな本ばかりの現状にうんざりして,現在の最先端の話題を,本気で底から解説しようと書いた本です。結構凄い本が書けたと自分では思ってますが,そう見えるかどうかは読者の皆様に聞いてみたい所です。

第一巻はSoC時代のPCとは大きく異なるハードウェア構成の上で現代的なGUIシステムを作るというのはどのようなことなのか,というのがテーマです。VESA(Video Electronics Standards Association)くらいでハードウェアの知識が止まってる人などには驚くような内容も多いと思います。Androidという枠を越えて,ポストPC時代である「現代の」GUIシステムの教科書を書くことに成功したのではないか,と自分では思ってます。

第一巻はPCやWebの世界がスマホに降りてきた,という話ですが,第二巻は組み込みOSがスマホに上がってきた,という内容になってます。組み込みOSの経験がない人にも組み込み側からの視点をちゃんと伝えられるように,ということを意識して書きました。具体的にはActivityというAndroidの中心となるアイデアを扱うのですが,それを通して,Webとスマホの大きなUXの違いとなる画面遷移という非常に難しく重要な問題に対して,Andy Rubinという世界を代表する天才プログラマが,スマホというハードウェアなどの現実とどう折り合いをつけたのか,その彼なりの解答を追っていった話となります。現実に対して何は頑張り何は捨てたのか,という判断を見ていくのは,教科書の上だけではない本物のソフトウェア開発を知る上でとても重要なことだと私は思っています。

二冊とも表面上は読み物に見えますが,実は本格的なコードリーディング本となっています。本格的なコード読みを通して見えてくる現実のソフトウェアの設計とか開発の哲学のような物を書けたのではないか,と自分では思っています。ちょっと最近ぬるい本ばかりで刺激が足りないなぁと感じている人などには,きっとおもしろいと楽しんでもらえる部分があるのではないでしょうか。ご興味があれば、手にとって見ていただけたらと思います。

著者プロフィール

有野和真(ありのかずま)

新卒でガラケー向けのブラウザ会社に入り組み込み業界で働いた後,2005年にマイクロソフトディベロップメントに移り.NETのサーバーサイド分野であるSharePointの開発に従事。2009年からフリーランスになり,機械学習関連のプロジェクトやスパコンの独自GPGPU開発に携わる傍ら,Androidのお絵描きアプリ「LayerPaint」を共同開発。