2Dグラフィックスのしくみ――図解でよくわかる画像処理技術のセオリー
本書について
本書は,2Dグラフィックス,すなわち2DCG(デジタル画像)がコンピュータ上でどのように生み出されているのかを解説したものです。
イラストを描くのが趣味の方は,いわゆる「メイキング本」という,CGイラストをどのように描くのかというノウハウを紹介した本が多く出版されていることをご存知でしょう。同じ2DCGの解説書とは言っても,本書はそれらとは大きく異なります。一般的なメイキング本では触れられないような「そもそも,そのような処理がコンピュータの中でどう実現されるのか?」を詳細に説明しています。
「そのような細かいしくみを知ることが,絵を描くのに何の役に立つのか?」と,疑問に思う方は多いと思います。確かに,技術者ほど素晴らしい絵を描けるだなんて,聞いたことはありません。
「デジタル処理の理論を知る」ということは,紙や筆/ペン先のような「画材の特性を知る」ということに近いかもしれません。裏でどのような計算が行われているか想像がつけば,デジタル処理特有の問題がなぜか起こるのかがわかります。処理に気を使い,コンピュータに無茶をさせなければ,作業の安定性も格段にアップします。
仮に今は趣味で描いているイラストや漫画だとしても,続けていけば,いつかプロとして仕事の依頼を受ける日が来るかもしれません。そんな時に,正しいデジタル画像の知識があれば,クライアントの要求を正しく理解し,高品質なデータを渡すことができるはずです。
イラストレーターや漫画家でなくとも,コンピュータを扱っていればデジタル画像の扱いは避けて通れません。解像度? PNGとJPEGの違い? カラーマネジメント? レイヤー? 専門家でなくても,これくらいの知識は,いつ要求されるかわかりません。
プログラマなら,なおさらです。ゲームやアプリの開発,Webサイトの構築など,今どきの製品やサービスを画像なしに生み出すことはできません。デザイナーの作成した画像のポテンシャルを引き出すには,それなりのデジタル画像の知識が必要です。
本書には,画像を扱うプロフェッショナルとして必要とされる,多くの知識が詰まっています。本書を読み通すことができれば,どんな場所でも通用する技術知識が身につくはずです。もちろん,この厚さの本で2DCGのすべてを網羅することはできません。しかし,本書を手がかりに,自力で問題を乗り越えられるようになるはずです。
本書原稿のレビューをして頂いた皆さんには,致命的なミスをいくつもご指摘頂きました。皆さんの協力なしには本書は完成しなかったはずです。本当にありがとうございました。もしも本書に不備があったとしても,不備を見逃した,もしくはレビューの指摘を反映しなかった著者の責任です。
- 荻野 友隆さん(www.tacoworks.jp)
- 内村 創さん(@nikq github.com/nikq)
- Kazuma Arinoさん(@karino2012)
それでは,2Dグラフィックスの世界へようこそ! 皆さんがデジタル画像をピクセル単位で気にしてしまうくらい関心を持ってもらえるように,頑張って解説していきます。