イノベーションの世界地図
――スタートアップ、ベンチャーキャピタル、都市が描く未来
2024年4月20日紙版発売
2024年4月20日電子版発売
上原正詩 著
A5判/472ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-14091-5
書籍の概要
この本の概要
未来の世界を牽引するイノベーションは,どこで,どのようにして生まれるのでしょうか?
コロナ禍,相次ぐ戦争,米中対立など,この数年の世界情勢の先行きは予測困難を極めました。メタバースや生成AIなどの新技術が人々を驚かせた時期でもありました。一方で眼前の日本社会には少子高齢化や経済の低迷などの課題が山積したままです。停滞する現状を打破すべくイノベーションに期待する声は小さくありませんが,「未来」を想像することが困難な時代において,イノベーションの行く末をどのように見定めればよいのでしょうか。
本書では「ベンチャーキャピタル(VC)」と「都市」の二つに注目し,イノベーションの原動力となる「スタートアップ」がいかにして生まれ成長してきたか解説します。VCとスタートアップはともに成長を重ねた存在であり,リスクをとって投資先を見極めるVCの動向は技術の未来を示す道標となります。そしてスタートアップ,なかでも評価額が巨額な“ユニコーン”は特定の都市に偏在する性質があります。ユニコーンが生まれる都市には“生態系”の秘密があるのです。
イノベーションはどのようにして生まれたのか。
未来はどこに向かうのか。
そして日本はいかにすべきなのか。
本書はその秘密と疑問を解き明かします。
こんな方におすすめ
- イノベーションの動向を知りたい人
- 各国のスタートアップやベンチャーキャピタルについて知りたい人
- 日本経済・社会の課題について考えている人
この書籍に関連する記事があります!
- 「TikTok」はどこから来て,どこへ行くのか――「世界で最も価値ある」企業の成功と苦境
- 2024年4月24日,アメリカ議会において下院に続き上院でも「TikTok禁止法案」が通過しました。そもそもアメリカ議会はなぜTikTokの規制を求めたのでしょうか。前編である今回は,TikTokを生み出したバイトダンスとはいかなる企業なのかを調べながら,イノベーションの本質に迫ります。
- なぜ北京は「AIの首都」となったのか――世界をリードする生態系の秘密
- 前編ではTikTokを生み出したバイトダンスの来歴と今後に注目しましたが,後編では「都市」に注目します。北京はAI研究において世界をリードする「AIの首都」でもあります。米中のみならず世界がしのぎを削るAI研究において,なぜ北京は一歩先んじたのでしょうか。発展の背後にいる存在に迫ります。
本書のサンプル
本書の一部ページを,PDFで確認することができます。
- サンプルPDFファイル(4,878KB)
目次
第Ⅰ部 スタートアップに見るテック・トレンド
テーマ1 対立の最前線
第1章 戦争とテック ― AI・ビッグデータ,ドローン,宇宙
- 1.1 パランティア ― 新興防衛産業の「ビッグ・ブラザー」
- 1.2 「パランティア・ブラザーズ」が新防衛産業形成
- 1.3 バイトダンス ―「ティックトック」がスパイ疑惑で使用禁止の危機
- 1.4 画像認識の「AI四小龍」もアメリカの制裁対象に
- 1.5 DJI ― 民生ドローン最大手,ウクライナ戦争で軍用に脚光
- 1.6 スペースX ― ロケット開発から衛星ネット接続まで宇宙ビジネス主導
- 1.7 「スペース・バロン」ベゾス氏らもロケット開発に
- 1.8 中国も宇宙開発を民間企業に開放
第2章 モビリティ変革の波 ― 自動運転と電気自動車
- 2.1 ウェイモ ― グーグル発,自動運転技術でロボタクシー先行
- 2.2 ビッグテックがこぞって自動運転投資
- 2.3 中国企業もロボタクシー実用化
- 2.4 テスラ ― 世界のEV市場を開拓
- 2.5 EV系スタートアップがSPAC上場
- 2.6 中国EVメーカー,テスラを猛追
- 2.7 CATL ― 中国がEV電池市場支配
- 2.8 ノースボルト ― 欧州からEV電池巻き返し
第3章 マネー巡るバトル ― 決済からスーパーアプリへ
- 3.1 ストライプ ―「決済ゲートウエイ」でEコマースの黒子に
- 3.2 アント ― 決済から総合フィンテック企業へ,上場延期で暗転
- 3.3 デジタル人民元とインドのUPI ― 政府主導の小口決済インフラ整備
- 3.4 シー,グラブ,ゴジェック ― 東南アジアの「スーパーアプリ」戦争
第4章 命を守る新興企業 ― ゲノムレベルの研究からビジネスへ
- 4.1 ギンコ・バイオワークス ― 細胞をプログラミング
- 4.2 モデルナ ― mRNAワクチン開発,コロナ禍で大躍進
- 4.3 イルミナ ― 市場を独占する「ゲノム業界のグーグル」
- 4.4 BGI ― イルミナに挑む「ゲノム業界のファーウェイ」
- 4.5 インポッシブル・フーズ ― コロナ追い風の植物由来の代替肉
テーマ2 ポスト・ビッグテックの行方
第5章 クリプト ― ビッグテック支配覆すか
- 5.1 イーサリアム ― 分散型ネットワークの「OS」目指す
- 5.2 コンセンシス ― ウォレット「メタマスク」が標準に
- 5.3 コインベース ― 仮想通貨取引所からダップス・インフラへ
- 5.4 ダッパー・ラボズ ― NFTでヒット連発
- 5.5 スカイメイビス ― ベトナム発で「ゲームファイ」開拓
- 5.6 ブレイブ ― 広告閲覧で仮想通貨付与のブラウザ開発
第6章 メタバース ― もう一つの世界を創る
- 6.1 メタ・プラットフォームズ ― ポスト・スマホで主導権狙う
- 6.2 エピック・ゲームズ ― ゲーム開発でブームに先行
- 6.3 ユニティ・ソフトウェア ― スマホ向けゲームエンジンで成長
- 6.4 ロブロックス ― 独自通貨も発行する「ゲームのユーチューブ」
- 6.5 アニモカブランズ ― NFT活用しオープン・メタバース実現目指す
第7章 生成AI ― スター研究者の独立加速とビッグテックとの連携
- 7.1 オープンAI ―「チャットGPT」で旋風,汎用AIの実現目指す
- 7.2 ビッグテックが生成AIスタートアップを囲い込み
- 7.3 オープンソース勢力も台頭
- 7.4 中国テック企業が生成AI開発に相次ぎ名乗り
第Ⅱ部 次のイノベーション・ハブはどこか
第8章 君臨するアメリカ
- 8.1 ベイエリア ― 起業と投資の好循環で世界の技術革新の中心に
- 8.2 シアトル ― マイクロソフトとアマゾン中心にクラウド系人材集積
- 8.3 ロサンゼルス ― 宇宙系と娯楽系が集積,上空と地上のスター追う
- 8.4 ニューヨーク ― 消費・データ・クリプトなど多様な産業芽吹く
- 8.5 ボストン ― MIT隣接「ジーンタウン」にバイオ系企業集結
- 8.6 カナダ・トロント ―「ディープテック回廊」形成,移民政策追い風に
第9章 挑戦する中国
- 9.1 中国ベンチャーキャピタル ― 繁栄の種はアメリカから
- 9.2 北京 ―「AIの首都」,創新工場の李開復が旗振り役に
- 9.3 上海 ― 長江デルタの中心,半導体・自動車で存在感
- 9.4 杭州 ― アリババ城下町,「Eコマースの首都」に
- 9.5 深圳 ―「ハードのシリコンバレー」,スマホの部品供給網が強みに
第10章 台頭するインド
- 10.1 人口大国インド ― 工科大学でIT人材育成
- 10.2 バンガロール ― 外資が人材呼ぶ「インドのシリコンバレー」
- 10.3 デリー首都圏 ― IITデリー出身者が活躍
- 10.4 ムンバイ ― 財閥主導「ジオ革命」の震源地
第11章 勃興する第四極
- 11.1 イギリス・ロンドン―「スカイプ・マフィア」が活躍するフィンテックの首都
- 11.2 スウェーデン ― スカイプが生んだ「成功の連鎖」,ドイツにも拡大
- 11.3 イスラエル ― 技術系エリート軍人が支える起業大国
- 11.4 シンガポール ― 外国人起業家来たる,国内は大学主導で育成
第Ⅲ部 日本にはなぜユニコーンが少ないのか
第12章 日本の生態系と問題点
- 12.1 コンピューター科学教育 ― 日本の大学は量・質とも劣後
- 12.2 大企業のスピンアウト ― スタートアップ供給源になれるのか
- 12.3 移民 ― 来る人も出る人も少なく,「鎖国マインド」蔓延
- 12.4 ベンチャーキャピタル ― 規模はアメリカの100分の1,小粒IPOを先導
この本に関連する書籍
-
深掘り! IT時事ニュース ──読み方・基本が面白いほどよくわかる本
ワイドショーにもすっかり常連となったIT時事ニュース。しかし,日々のニュースに関連するITは技術の発達が目まぐるしく,なんだかよくわからない,ついていけないと感...
-
ニューロテクノロジー ~最新脳科学が未来のビジネスを生み出す
フェイスブック,イーロン・マスク……世界的な企業・投資家も注目,いま最も注目すべきイノベーションの最前線がわかる 「言葉を使わず脳から脳へ考えを伝達」 「ク...
-
ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険
エドワード・スノーデン,伊藤穰一(MITメディアラボ所長)ほかテクノロジー業界の著名人の推薦続々! たった12ドルで携帯電話を作るには? 著作権に違反せずにプロ...