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気まぐれな外国為替市場で必ず押さえておきたい真理

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震災があったのに円が買われた

東日本大震災は外国為替市場にも大きな影響を与えました。

これまでドルが最も安くなって円が最も高くなったのが,1995年です。このときドル円は79円75銭をつけました。それから15年以上が経過した2011年3月16日にドル円は79円75銭を突き破ってレコードを記録。一時,76円台までドル安円高が進みました。

これから経済の動きが停滞しそうな日本で,なぜ円高が進むの?――多くの人が疑問を持ったと思います。そのときは,震災によって日本企業が外国に投資していたお金を戻す必要が出てきたので,外貨が売られ円が買われて円高が進む,といった説明がされていました。

しかし,3月18日には,日本の他,アメリカ,ヨーロッパ各国が手を取り合って急激な円高を阻止するためのアクションを起こします。⁠協調介入」の四文字が大きく取り上げられたのは記憶に新しいところです。

介入後はそれまでの円高の雰囲気が一変。今度は震災や原発問題で苦しむ日本の通貨を買うことはできないというムードになり,外貨が買われて円が売られる外貨高円安が進みます。

お金は寂しがり屋だから仲間のいるところに集まる

こういった動きは,今回だけに限ったことではありません。あるテーマが幅を利かせて市場を動かしていても,別の見方をする人が現れて,その数がどんどん増えてやがて多数派になると,為替レートはそれまでの動きとはまったく別の動きをすることがあります。

つかみどころのない外国為替市場ですが,そんな市場にも真理があります。それは,「お金というものは寂しがり屋で,仲間のいる(お金がいっぱいある)ところに集まっていく」というもの。

人気為替ディーラーとして知られる山岡和雅さんが書いた『為替がわかると経済が見える』から引用します。

基本的にお金というものは,より儲かりそうなところに集まっていきます。世界規模で考えたときに,儲かりそうなところとはどういうところかというと,簡単にいうと景気のいい国です。⁠中略)

経済活動あるところ,お金の動きあり。お金と経済は密接不可分な関係にあります。

短期的に見ると為替の動きはまったく気まぐれのような気がしてしまいますが,少し長い目でじっくり追っていくと,この真理はあながち外れていないなと実感できることがしばしばあるはずです。