この記事を読むのに必要な時間:およそ 1.5 分
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)とは
Raspberry Pi(写真)とは英国のRaspberry Pi Foundation(ラズベリーパイ財団)によって開発されたARMプロセッサ搭載のシングルボードコンピュータです。2012年2月に発売されてから今年(2013年)の7月まで,累計売上台数は全世界で120万台を突破しています。名刺サイズでありながら,DebianベースのLinuxディストリビューション(「Raspbian」という)が動く本格マシンです。
Raspberry Pi Model B(ショップによっては“タイプB”と呼ばれる)には700MHzのARMプロセッサとGPUなどがあるメインSoCのほか,HDMI,USBポート(2つ),Ethernet,HDMI,コンポジットビデオ出力,オーディオ出力,GPIO(汎用入出力)が搭載されていて,価格は3,300円です(Model A,またはタイプAはEthernetがなくUSBポートが1つで2,400円。どちらも2013年8月時点)。
写真 Raspberry Pi本体
なぜ注目されているの?
注目されている理由として,上述したハードウェアスペックと3,000円前後という価格帯によるところがもっとも大きいです。しかし,発売から1年半にして開発元であるRaspberry Pi Foundationも想定していなかった状況に向かっているのです。それは,Raspberry Piを小型コンピュータとしてサーバやネットワーク機器,ロボットなどに応用させることです。インターネット上で動画検索をすると,全世界でさまざまな用途に活用されているのがわかるでしょう。
どこから購入できるの?
発売当初は製造体制が整備されておらず,また日本国内の正規代理店ですら在庫を確保できなかったために入手しづらい時期がありました。現時点ではRSコンポーネンツ(株)の「RSオンライン」などから正規料金で購入することができます。また,千石電商秋葉原本店などでも販売しています。
必要な周辺機器
OSを書き込むSDカードのほか,電源ケーブルやモニタ/画面出力ケーブル,キーボード/マウス,LANケーブルなどが必要です。
Raspberry Piでできること
実際に購入したら何ができるのでしょうか? 基本的には小型のARM/Linuxコンピュータですので,動作させるOSは自分で選択でき,開発言語も選ぶことができます。
動作するOS
OSはSDカードに書き込んで利用するので,SDカードを複数枚用意すれば,気分でOSを切り替えることもできます。推奨されているRaspbian以外にも,「Arch Linux ARM」「Soft-float Debia」「Pidora」「RISC OS」などが動作します。
LinuxコマンドでLEDを点滅させる
ジャンパワイヤとLED,抵抗(1kΩ),(半田付けが不要な)ブレッドボードを用意すれば,手軽にシェルスクリプト(リスト)からLEDを点滅させることができます。
リスト LEDを点滅させるシェルスクリプト(例)
#!/bin/sh
# GPIO24(18番ピン)の使用開始
echo "24" > /sys/class/gpio/export
# GPIO24を出力に設定
echo "out" > /sys/class/gpio/gpio24/direction
# 5回ループする
for i in 1 2 3 4 5
do
# LED点灯
echo "1" > /sys/class/gpio/gpio24/value
sleep 1
# LED消灯
echo "0" > /sys/class/gpio/gpio24/value
sleep 1
done
# GPIO24の使用終了を宣言
echo "24" > /sys/class/gpio/unexport
リストを見てのとおりRaspbianでは/sys/class/gpio下のファイルをアクセスすることでGPIO操作ができるようになっています(root権限が必要です)。ですので,シェルスクリプト以外にも,さまざまなプログラミング言語で,さらにWebブラウザ上からGPIOを操作することができるのです。あとはアイデア次第ですね。
本書では,ここまで説明してきた基本的な設定手順やGPIOの基本的な使い方をていねいに説明しています。また応用編として,「複数台を並べたWebサーバ」「クロス開発環境」「Java環境」の構築方法,温度センサを利用した「喋る温度計」や「キャラクタLCD」の製作方法を取り上げています。さらに末章にあるトマト農家での実例「農作業用ロボット製作記」は,Raspberry Piの可能性とともに,自らの製作意欲をかき立ててくれることでしょう。