幾何で見える 必ずわかる一般相対性理論

[表紙]幾何で見える 必ずわかる一般相対性理論

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B5判/400ページ

定価3,960円(本体3,600円+税10%)

ISBN 978-4-297-13040-4

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書籍の概要

この本の概要

本書は相対性理論を幾何学的な観点からアプローチします。幾何学的解釈(ユークリッド,非ユークリッド)を踏まえることで,アインシュタインが何をしようとしたのかをより具体的に知ることができます。「時間」が絡む前の幾何をまず押さえます。そして「時間」を取り入れた場合の特殊相対性理論へと進み,さらに一般相対性理論,リーマン幾何時空,軌跡の計算まで試みます。

アインシュタインが10年がかりで見つけたという重要な項の存在についても詳しく触れます。時空が重力で影響を受けた場合,三平方の定理が変形します。空間の歪みがどのように記述されるのか,丁寧に読み解きます。

オールカラーで図や写真を多く掲載し,式や物理現象などをイメージしやすい構成にしているので,相対性理論を勉強し始めたばかりの方,幾何学をこれまでやってこなかった方にも抵抗なく読み進めていただくことができます。

こんな方におすすめ

  • 相対性理論を理解したい人
  • 理工系学部学生
  • 将来エンジニアになりたい人

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目次

  • まえがき
  • 本書の目的と各章の概要

第1章 序章 地上から天空へ

  • 1.1 文明と暦
  • 1.2 ターレスからピタゴラスへ
  • 1.3 ピタゴラス派の数学
  • 1.4 ユークリッド幾何へ
  • 1.5 16-7世紀のヨーロッパ ―天動説からの脱却
  • 1.6 相対性理論の萌芽 時間と空間
  • 1.7 アインシュタインの相対性理論
  • 1.8 宇宙開発の時代に突入

第2章 平面の幾何 宇宙への準備

  • 2.1 アインシュタインを魅了した垂心の定理
  • 2.2 公理と定理
  • 2.3 合同と相似
  • 2.4 三角形,円・楕円に関する性質
  • 2.5 ピタゴラスの定理
  • 2.6 平面幾何への座標と微分の取り組み:宇宙の構造解明のツール
  • 本章のまとめ
  • 付録 三平方型微分方程式

第3章 球面幾何

  • 3.1 球面上の円と直線
  • 3.2 球面三角形の基本的な性質
  • 3.3 球面幾何特有の変換
  • 3.4 姿を変えるピタゴラスの定理
  • 3.5 球面三角形の3心
  • 3.6 三角形の面積に関する定理
  • 本章のまとめ

第4章 双曲幾何と計量

  • 4.1 負曲率面はあるか?
  • 4.2 地球儀とメルカトール図法
  • 4.3 ポアンカレの双曲幾何
  • 4.4 球面の平面化
  • 4.5 ポアンカレ・ディスク 双曲幾何の性質
  • 4.6 複素平面上での双曲幾何
  • 4.7 曲率
  • 4.8 双曲線・双曲面・双曲幾何
  • 本章のまとめ
  • 付録Ⅰ 平面幾何の見直し
  • 付録Ⅱ 双曲幾何3タイプの関係

第5章 時間の取り込み(Time・Zeit)

  • 5.1 時間の導入と直線と直角の見直し
  • 5.2 太陽系の惑星軌道
  • 5.3 時間スケールの発生
  • 5.4 波動方程式 時間微分と位置の微分の関係
  • 5.5 最小時間の原理
  • 本章のまとめと次章以降へのつながり
  • 付録 運動量とエネルギーの保存則

第6章 電気と磁気の統合と実用化

  • 6.1 歴史を振り返りながらの準備
  • 6.2 電気力学の誕生
  • 6.3 ファラディ登場
  • 6.4 発電機 奥深い右手の法則
  • 6.5 マクスウェルの登場
  • 6.6 ガウスとその影響力
  • 6.7 電気力学が世界を動かし始める
  • 6.8 1880年代初期
  • 6.9 ジーメンスの単極発電機 -特殊相対性理論のきっかけ
  • 本章のまとめ
  • 付録 ビオ=サバールの法則からアンペアの右ねじの法則

第7章 アインシュタイン登場

  • 7.1 アインシュタイン登場を待つ舞
  • 7.2 アインシュタイン誕生 1879年
  • 7.3 理論物理を目指す
  • 7.4 ポリテヒニクムでの勉強
  • 7.5 ヨーロッパでの物理学と電気工学の進展
  • 7.6 20世紀到来
  • 7.7 1905年の最初の大仕事 ―光量子仮説と光電効果
  • 7.8 相対性理論前夜
  • 本章のまとめ

第8章 特殊相対性理論

  • 8.1 運動物体の電気力学
  • 8.2 ガリレー変換からローレンツ変換へ
  • 8.3 運動力学の相対性原理
  • 8.4 相対性理論の幾何学的解釈
  • 8.5 世界で一番短い方程式の衝撃
  • 本章のまとめ
  • 付録Ⅰ 速度の加算法則
  • 付録Ⅱ ペンローズ線図

第9章 一般相対性理論

  • 9.1 問題点の整理 アインシュタインの疑問
  • 9.2 人のつながり
  • 9.3 水星の近日点移動の論文を読み解く
  • 9.4 重力場方程式への道程
  • 9.5 一般相対性理論の完成
  • 9.6 重力場方程式とその意味
  • 9.7 シュバルツシルト外部解
  • 9.8 シュバルツシルトの内部解
  • 本章のまとめ
  • 付録Ⅰ 斜交座標,ベクトルとテンソル
  • 付録Ⅱ 一般座標系
  • 付録Ⅲ リーマン空間
  • 付録Ⅳ クリストフェル記号と共変微分
  • 付録Ⅴ 重力と計量テンソル
  • 付録Ⅵ 思考実験 等価原理

第10章 シュバルツシルト時空の解析

  • 10.1 本章の課題
  • 10.2 シュバルツシルト時空と計算対象モデ
  • 10.3 オイラー=ラグランジュ方程式と変分法
  • 10.4 一般相対論での軌道方程式の導出
  • 10.5 重力場に現れる三平方定理からのずれ
  • 10.6 重力レンズ作用の分析
  • 10.7 惑星軌道
  • 10.8 時間とエネルギーの不思議な関係
  • 本章のまとめ
  • 付録Ⅰ 光跡の近似式
  • 付録Ⅱ 軌道・光跡描画 Pythonコード

第11章 大宇宙から小宇宙へ

  • 11.1 電子の発見
  • 11.2 新進気鋭の出現
  • 11.3 アインシュタインの想定外と的中
  • 11.4 弾性体の波動力学
  • 11.5 物質波
  • 11.6 ディラックが開けた反宇宙の可能性
  • 11.7 物理学は素粒子の発見の歴史になる 日本の偉大な物理学者たち
  • 11.8 大宇宙の発生も対称性の破れ インフレーション理論
  • 本章のまとめ
  • 付録 結実するか アインシュタインの夢? 力の統一理論

第12章 アインシュタイン=シュバルツシルト空間の幾何

  • 12.1 新しい時空の数理の創出
  • 12.2 軌道と光跡の微分方程式
  • 12.3 ブラックホール:事象の地平線の外と中
  • 12.4 光跡と軌道の計算描画
  • 12.5 ブラックホールの観測
  • 12.6 重力波
  • 12.7 宇宙の輪廻転生 ―Conformal Cyclic Cosmology
  • 12.8 総括:時空の数理の新しい時代へ
  • 付録 宇宙項,ダークマター,ダークエネルギー
  • あとがき

著者プロフィール

見城尚志(けんじょうたかし)

1940年静岡市生まれ。

東北大学工学部修士課程を経てTEACに入社。職業能力開発大学校教授,日本電産株式会社モーター基礎研究所所長などを歴任,現在はTechnical Adviser。

東北大学では教養課程の数学と物理に新鮮・深遠さを感じ,新設された電子工学科を選び,そこで知ったアインシュタインの光電子理論を契機に相対性理論に刺激を受けた。モーターと発電機の電磁界理論から特殊相対論に入り,非ユークリッド幾何の側面から一般相対論を追究し続け,その集大成が本書である。相対論は思考の視野を広げるツールであり,文明史,経済,行政に関心をもつ読者も想定して書いた。産業のコメとされるモーターはまさに相対論の産物であるが,啓蒙を超える領域は未完であり割愛した。


佐野茂(さのしげる)

1949年東京生まれ。

修士課程までは東京工大で数学を専攻し,職業訓練大学校に就職。1983年半単純対称空間の調和解析の研究で理学博士(東京大学),フランスのストラスブールの高等数学研究所に進み,欧米の数学者との親交を深めた。帰国後,所属大学のほか母校の東京工大など5大学で理工向けの数学を教えた。また,北海道職業能力開発大学校の校長などを歴任,現在は職業能力開発総合大学校名誉教授。

専門は表現論と調和解析であり相対論に近い。本書では工学者との共同作業によって時空の新しい幾何学を提唱し,物理学者とは異なる論法で新相対性理論を創作した。文系の読者にも本質が伝わるように,数式だけでなく豊富な幾何図形にも工夫を凝らした。