Ubuntu Weekly Topics

2021年1月4日号新春特別号 2020-2021年のUbuntu

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2020年のUbuntu

Ubuntuにとっての2020年は「いろいろな環境への対応⁠⁠,⁠Adaption⁠の年だったと言えるでしょう。大きなリリースとして,Raspberry Piの正式サポート,そしてWSLを前提にしたWindows 10との融合,各種クラウド環境におけるUbuntu Proイメージの提供がありました。加えて,Subiquity(Ubuntu Serverのインストーラー)へのインストールの自動化機能の実装WireGuardへの対応のような,比較的地味な,しかし重要な拡張も行われています。

2020年を振り返る上では避けることができないCOVID-19への対応についても,いくつかのステートメントが出される等,⁠Adaption⁠のための活動が行われています。

トピックごとに2020年を振り返りつつ,2021年のUbuntuを予測していきましょう。

Ubuntu CoreとROS,Armのサポート

Ubuntuの「DesktopやServer以外の顔」として,Ubuntu Coreを飛ばすことはできません。

2020年は,Bosch RexrothのctrlXシリーズへのUbuntu Coreへの採用など,⁠実際に使われる風景」をいくつか観測できるようになった年でした。⁠いろいろな可能性がある」存在から,⁠気付かない場所で利用されている」存在に転じていく年だったと言えるでしょう。また,Ubuntuは各種ロボットをソフトウェア制御するためのデファクトスタンダードであるROSのベースでもあります。ROS2 Foxyが登場したのも2020年でした。

2021年には,Ubuntu Applianceとあわせて,Ubuntu CoreやROSを中心にした「Ubuntuの新しい使い方」がもう少しだけ見られるようになるかもしれません。

Ubuntu Coreの現実的な使われ方を考慮すると,Armサポートのことを忘れることはできません。あまり明確なリリースノート等は存在しないものの,9月にはさりげなく64kページを前提にしたarm64用のバリエーションカーネル注1が登場しています。また,Raspberry Piが「公式な」サポート対象となりさらにやろうと思えばk8sすら動かすことができる状態になりました(インストールできるのはMicroK8sなので,用途との適合性に注意する必要はあります⁠⁠。

注1
64kページはメモリ効率が(粒度の問題で)若干低下するものの,CPUのTLBの利用効率を改善させることができます。Ubuntuでは現状,generic(4kページ)とgeneric-64k(64kページ)の二種類から選択できます。

また冒頭で触れたとおり,20.04 LTS以降の「Raspberry Piの正式サポート」は,Ubuntuにとって大きな出来事でした。これにより,数千円から1万円程度の価格レンジで「公式なUbuntuが動く」環境を手にできるようになったからです。

これまでも5,000円程度のSBC(Single Board Computer)がUbuntuをサポートするケースは多かったものの,カーネル回りは独自にパッチされたツリーが提供される形が多く,⁠UbuntuのユーザーランドとSBCベンダー独自のカーネル」という組み合わせがほとんどで,カーネルの更新や継続性に大きな不安があった状態でした。そこに「公式な形で」⁠LTSの対象に含める形で」イメージを提供するようになったことで,Ubuntuが使われる局面を増やすことになります。

こうした事情を考慮しなくても,Raspberry Piサポートは,教育向け市場でUbuntuが,しかもUbuntu Desktopが使われる可能性を引き上げることに成功したと言えます(この市場の本命はキーボード一体型であるRaspberry Pi 400で,これが広く使われるようになり,OSがUbuntuだ,という展開が起きると,Ubuntuが未来のデファクトスタンダードデスクトップに化ける可能性が出てきます⁠⁠。

劇的な進化をする要素はそこまで多くはないものの,2021年には,Ubuntu Applianceをサポートするデバイスや,そこで登場するアプリケーションによって大化けする可能性があります。たとえばChillHubの後継となるようなプロダクトが出てくるといった,夢が広がるタイプの展開も考えられるでしょう。

そしてArmといえば忘れてはいけない存在として,⁠Apple M1を搭載したMacBook」があります。もしもLinux KernelがApple M1チップをサポートするようになれば,おそらく「M1 MacBook用Ubuntu」という存在が誕生する可能性もあります(が,これが1年で,すなわち2021年に実用レベルに至るのはやや厳しく,少し遠い未来になるのではないかと筆者は予想しています⁠⁠。

RISC-V

Ubuntu CoreやROSと並んで「今後のフォーカス」と言えそうな組み込み向けの技術要素が,RISC-Vアーキテクチャのサポートです。RISC-Vをサポートすることで直ちに大きな需要が生まれるというものではないものの,⁠組み込みに向けた選択肢を増やす」という意味で重要な要素です。

UbuntuではRISC-Vのサポートは20.04 LTSのリリースのタイミングで追加されており,⁠これから」というタイミングです。

組み込み等での利用においては「どのSoCを採用するか」によって左右される話です。現実として「このアーキテクチャを採用する」といった発想になることは少ないものの,⁠アーキテクチャとして対応していないのでUbuntuが利用できない」といった事態を防ぐことができます。一方,Armとは「どちらを選ぶか」という関係にあたることになり,すべてを継続的にサポートすることは難しい話でもあるため,今後どちらが生き伸びるのか,という点では少しだけ気をつけておく必要があるでしょう(ただし,2021年のごく初期のうちに,どちらかのサポート終了が宣言されるという可能性はあまり高くありません⁠⁠。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。