知りたい!サイエンス
魅了する無限
――アキレスは本当にカメに追いついたのか
- 藤田博司 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2009.2.25[在庫なし] 2018.4.6
- 判型
- 四六
- 頁数
- 232ページ
- ISBN
- 978-4-7741-3761-2 978-4-7741-9550-6
概要
あたりを見まわしてみても、無限などどこにも見あたらないのに、なぜ我々は無限に魅かれるのでしょうか? 現実離れした無限という考えを、現実のテクノロジーの基礎をなす数学や物理学が是が非でも必要とするのはなぜでしょうか? その嚆矢となるのは、かつてギリシャの哲学者が問うたと伝えられる4つのパラドックスだったともいえます。本書では数学において無限がどのように扱われてきたのか、また無限を取り込み、どのように数学が発展してきたのかを見ていくとともに、4つのパラドックスが問いかける意味をあらためて考えていきます。
こんな方にオススメ
- 無限に興味のある人
- 数学(数論、解析学、集合論など)に興味のある人
目次
- プロローグ――ガンジス川の砂
第1章 さまざまな無限
- 1-1 消えたジンジャーエールの瓶
- 1-2 ヒルベルトの無限ホテル
- 1-3 無限は数ではない
- 1-4 素数は無数にある(無限観の変容)
- 1-5 無限に出あわない理由?(アルキメデスの原理)
- 1-6 線分上の点の数
- 1-7 無限の遠方と平行線
- コラム1-1:ジンジャーエールを使ったカクテル
- コラム1-2:アルキメデスという人
- コラム1-3:とり尽くし法による、円錐の体積の計算
第2章 実数の連続性をささえる無限
- 2-1 無限小数と出会う
- 2-2 実数〈ルート2〉を追跡せよ
- 2-3 犯人は蒸発しない(実数の連続性)
- 2-4 無限和は足し算だろうか
- 2-5 p進整数の世界
- 2-6 調和級数とライプニッツの級数
- コラム2-1:ゼロで割り算をしてはいけない理由
- コラム2-2:円周率πの数値計算について
- コラム2-3:循環小数と非循環小数
- コラム2-4:ワイエルシュトラスの原理
- コラム2-5:ライプニッツという人
第3章 ゼノンのパラドックス
- 3-1 ゼノンの4つのパラドックス
- 3-2 数と変化
- 3-3 数と反復
- 3-4 アキレスとカメ
- 3-5 ちょっと数学的に考えてみる
- 3-6 慣性の法則と時間の計量
- 3-7 時間と空間の連続性
- 3-8 証明の完成
- コラム3-1:パラドックスという言葉
- コラム3-2:ギリシャリクガメ
第4章 数のシステム
- 4-1 数学的帰納法
- 4-2 なぜ、自然数論の公理が必要なのか(そもそも公理とは?)
- 4-3 ペアノの自然数論
- 4-4 デデキントの自然数論とフレーゲの自然数論
- 4-5 自然数から整数へ
- 4-6 整数から有理数へ
- 4-7 有理数から実数へ
- 4-8 実数直線の連続性の証明
- 4-9 実数から複素数へ
- コラム4-1:浮世根問とソクラテス
第5章 無限と連続の謎と魅力
- 5-1 再び、ヒルベルトの無限ホテル(可算無限)
- 5-2 実数の全体は可算でない
- 5-3 カントールの集合論と、無限に多くの無限
- 5-4 連続体問題
- 5-5 ロビンソンの超準解析
- 5-6 百科事典棒
- 5-7 連続体と「アガスティアの葉」
- コラム5-1:カントールの定理と対角線論法
- エピローグ――連続体と時間と無限
プロフィール
藤田博司
1964年京都生まれ。立命館大学理工学部卒、名古屋大学大学院理学研究科中退。博士(学術)。現在、愛媛大学理学部助教。専門は数学基礎論、とくに集合論。訳書にケネス・キューネン『集合論』(日本評論社、2008年)がある。