知りたい!サイエンス 免疫はがんに何をしているのか? ~見えてきた免疫のメカニズム⁠~

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著者
桂義元かつらよしもと 著
定価
1,848円(本体1,680円+税10%)
発売日
2016.11.26 2016.12.15
判型
四六
頁数
224ページ
ISBN
978-4-7741-8575-0 978-4-7741-8675-7

概要

最近、がんの治療に免疫を利用することが広がりを見せ始めています。実際、免疫を使ってがんを治療すると、初期のがんは言うに及ばず、これまで手の施しようのなかった末期のがんに対しても有効だったという例が多数報告されています。しかし、なぜ免疫ががん治療に有効なのかはあまりよくわかっていません。免疫機能が自己の分子でつくられているがん細胞を攻撃できるのかという問題は、医学界の中でもほとんど議論されることがないのです。免疫療法の有効性が確認された現在も状況は同じです。本書は、免疫の働きを長年研究してきた著者が、この難問にずばっと切り込みます。今までにない免疫とがんの関係を解説した本。ぜひご一読ください。

こんな方にオススメ

  • がんに対する免疫療法について知りたい方
  • 免疫の働きを正しく学びたい方
  • ※免疫学を新しく体系立てて説明するので、一般の方から専門家にまでお勧めです

目次

  • はじめに
  • 序章 がんとは?

    • がんと癌
    • 健常な細胞ががん細胞になる
    • 転移
    • どうしてがんになるのか?
    • がんは免疫で治せるのか?
    • 用語解説

    第1章 がんは遺伝子の病気

    • ゲノムと遺伝子を眺める
    • がんの原因となる遺伝子の変異
    • 人間はがんになりやすいのか?
    • 細胞のがん化を抑えている機構

    第2章 がん化はどのようにおこるのか

    • がんは遺伝子の病気
    • 増殖コントロールの故障
    • がん遺伝子とがん抑制遺伝子
    • p53―ゲノムの守護神
    • ウイルス感染による発がん
    • 免疫反応または炎症による発がん
    • 浸潤と転移
    • がんの幹細胞

    第3章 なぜ免疫の利用が求められるのか

    • 治療法による作用点の違い
    • 抗がん剤をうまく使えないか?
    • 免疫のさらなる利点

    第4章 がんの治療に免疫を利用する

    • 免疫監視機構と免疫応答
    • 炎症を利用する試み
    • GVH反応―はからずも免疫療法の先駆けとなった
    • ナチュラルキラー(NK)細胞の働き
    • がん抗原
    • T細胞抗原とB細胞抗原
    • ワクチンの試み
    • モノクローナル抗体
    • T細胞の利点について

    第5章 免疫とはどのようなものか

    • 免疫をわかりやすく考えよう
    • 自然免疫と獲得免疫
    • 獲得免疫とは
    • 免疫にかかわる組織/器官と細胞

    第6章 免疫における応答

    • 抗原とエピトープ
    • 抗原を認識する
    • 応答(レスポンス)が必要なこと
    • T細胞の応答と機能の実行
    • B細胞の応答
    • がんに対する免疫反応はあるのか

    第7章 免疫に役立つT細胞をつくり出す

    • 造血幹細胞からT細胞へ
    • 正の選択
    • 負の選択と免疫トレランス
    • B細胞の分化
    • B細胞のトレランス
    • トレランスのレベル

    第8章 がん抗原に反応するT細胞の由来を探る

    • 抗原とは?
    • 特定のエピトープと反応するT細胞の集団
    • トレランスを考える
    • ヒトのT細胞について
    • 突然変異で生じたエピトープ

    第9章 T細胞を利用するがんの治療

    • T細胞の標的となるがんの抗原
    • 体外で増やしたキラーT細胞を用いる
    • 培養TIL以外のT細胞を用いる
    • ふつうのT細胞を利用する
    • T細胞を抑制から解放する抗体を用いる
    • 新しくできたエピトープを認識するT細胞

    第10章 課題と展望

    • 治る患者と治らない患者
    • 有効なT細胞を大量に増殖させる
    • ワクチンの再登場
    • ワクチンへの期待
    • 付録
    • おわりに
    • さくいん
    • おもな参考書籍と文献

    プロフィール

    桂義元かつらよしもと

    1963年京都大学理学部物理学科卒業。
    卒業後は生物学に転じ、大学院では放射線生物学教室にて免疫学の研究を始める。
    1967年京都大学結核胸部疾患研究所助手。
    1977年同研究所教授。
    1997年改組により京都大学再生医科学研究所教授。
    この間、ヘルパー系T細胞の機能的多様性に関する研究、さらに胸腺におけるT細胞分化の研究を行ってきた。
    T前駆細胞の存在、造血における分化系列決定の過程を明らかにした。
    1991年にはKTCC(Kyoto T Cell Conference)を設立し、T細胞研究の国内、国際交流を推進してきた。
    2002年に定年退官。
    日本大学医学部客員教授、東京医科歯科大学客員教授を経て、現在は株式会社クローバー会長、サイアス株式会社会長として、免疫、がんに関連する研究のサポートを行っている。 おもな著書に、『胸腺とT細胞-T細胞はこうしてつくられる』(医学書院、共著)、『免疫の事典』(朝倉書店、共編著)などがある。