知りたい!サイエンスシリーズ知っているようで知らない免疫の話
--ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?--

[表紙]知っているようで知らない免疫の話 --ヒトの免疫はミミズの免疫とどう違う?--

紙版発売

四六判/240ページ

定価1,738円(本体1,580円+税10%)

ISBN 978-4-7741-4334-7

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書籍の概要

この本の概要

生物には,外界からの異物を排除する機能―免疫―が備わっています。人間はいうに及ばず,細菌や植物の体内にも,しっかり免疫の機能があるのです。私たち生物がここまで進化できたのは,免疫のおかげといっても言い過ぎではないかもしれません。生物進化と共に発達を続ける免疫。しかし,その発達の歴史はどんな感じだったのでしょう?

本書では「免疫の勃興と発達」にフォーカスしながら,単細胞生物から人間に至る進化の歴史に鋭く迫ります。生命体内における外界からの異物との攻防戦の歴史……。知られざる生命進化にこうご期待!

こんな方におすすめ

  • 免疫に興味のある方
  • 生命の進化について気になる方
  • マクロファージ,T細胞ファンな方

目次

第1章 都合が悪いものと,そうでもないものの区別

1-1 都合が悪いものと,そうでもないもの

  • 異物を排除せよ。しかし過剰は禁物
  • 免疫の世界へようこそ

1-2 免疫をもたなかった初期の生命

  • 原始生命の誕生と淘汰

1-3 多細胞生物の登場

  • 単細胞から多細胞,そして凍結……
  • 苦難を乗り越え増殖,そして大爆発

1-4 免疫は突然変異がもたらした?

1-5 学問としての免疫学のはじまり

  • まずはヒトデ,そしてヤツメウナギへ
  • 免疫学の勃興,そして新たなるステージへ

第2章 免疫の萌芽

2-1 単細胞生物も免疫のしくみをもつのか?

  • 病原体となるのはどんな生物?
  • すべてが危ないわけではないが……
  • ウイルスは細菌にも感染
  • 制限酵素は「細菌がもつ免疫」といえる?
  • 多細胞化にともなう,より厳密な異物の排除

2-2 自然免疫の基礎固め

  • 多細胞生物,その分類
  • ホヤってなに?
  • ホヤにある“自己”と“非自己”
  • ホヤの免疫は補体系が中心
  • すでに高度化されていた「自然免疫」

2-3 昆虫の免疫 自然免疫の完成

  • 昆虫,それは地球上で最も繁栄した動物
  • 昆虫にも補体系はあるのか?
  • ヒトにも共通する,抗菌物質を感知するしくみ
  • 共生菌はなぜ攻撃されない?

2-4 植物の免疫

  • 生命環境を作り上げた陸上の植物たち
  • 植物にも免疫があるのか?
  • 植物免疫の分子メカニズム
  • 共生生物はなぜ異物として認識されない?

第3章 脊椎動物の免疫

3-1 5億年前に現れた抗体

  • 遺伝子再構成とトランスポゾン
  • 抗体は特殊部隊!?
  • 鍵と鍵穴の関係で敵を無害化

3-2 脊椎動物の免疫を司る役者たち

  • 免疫細胞の種類と機能
  • 免疫細胞の産生と寿命
  • リンパ器官とリンパ系

3-3 脊椎動物の免疫系の進化と特徴

  • 円口類にはじまる脊椎動物の免疫
  • 顎のある魚類では?
  • 両生類,は虫類,そして鳥類
  • ほ乳類からサル,サルからヒト
  • ヒト白血球型抗原(HLA)とは?

3-4  病原体侵入! ヒトの免疫反応シミュレーション

  • 病気を引き起こす「病原体」とは?
  • 宿主が死ねば,自分たちも危うい……
  • 感染防御の第一段階――粘膜と皮膚
  • 病原体との闘い――炎症反応と自然免疫
  • 獲得免疫の発動

3-5 病原体情報の記憶と保持

  • 記憶保持のしくみ
  • ワクチンへの応用と獲得免疫の限界

3-6 がんと免疫反応

  • がん細胞はやっかいな異物
  • がんの免疫治療

3-7  免疫細胞の分化経路が書き換えられる?

  • 造血幹細胞からはじまる血液細胞の分化
  • 古典的な分化経路モデル
  • 教科書の書き換えをせまる,新モデルの登場
  • 期待される医療への応用

第4章 明らかにされはじめた,免疫システムの分子メカニズム

4-1 膨大な種類の病原体に対応できる遺伝子再構成のしくみ

  • 抗体レパートリーの謎
  • 抗体の本体,免疫グロブリン
  • 利根川博士が突き止めた遺伝子再構成のしくみ
  • 本庶 佑博士によるクラススイッチのモデル
  • クラススイッチのしくみ

4-2 病原体を種別に認識していた自然免疫

  • TollとTLRの発見
  • TLRの分類と機能
  • 各TLRの反応経路
  • DNAワクチン

4-3 ウイルスとインターフェロン

  • 細胞内のウイルス感染感知メカニズム
  • ウイルスの変異にも対応できるシステム
  • 期待される医療への応用

第5章 免疫系の暴走と破綻

5-1 アレルギーと免疫の暴走

  • 免疫系の暴走
  • 暴走はなぜ起きる?
  • 4タイプに分類されるアレルギー

5-2 免疫が自分を攻撃する病気

  • 自己免疫疾患
  • 内分泌腺の自己免疫疾患
  • 全身性の自己免疫疾患
  • 自己免疫疾患はなぜ起きる?

5-3 免疫系の破綻

  • 免疫不全とは?
  • エイズウイルスと感染のしくみ
  • 免疫応答を回避するしくみ
  • 生まれつきHIVに感染しない人も
  • 治療薬とワクチン

第6章 免疫研究が切り開くインフルエンザ・花粉症・メタボの治療

6-1新型インフルエンザに立ち向かう

  • 世界中で猛威をふるうH1N1新型
  • タミフルとリレンザ
  • 次世代の抗インフルエンザ薬研究
  • さらなる新薬のための基礎研究も
  • ワクチン,最後は自分の免疫力

6-2 スギ花粉症を根本から治すワクチン開発

  • スギ花粉症は国民病
  • 組み換え抗原を用いたワクチン
  • 免疫寛容のしくみも明らかに

6-3メタボを脂肪組織の抗炎症で防ぐ

  • 肥満とメタボリックシンドローム
  • 脂肪細胞は諸刃の刃
  • 新しいメタボ治療薬の開発に向けて
  • 基礎研究と私たちの未来

著者プロフィール

西村尚子(にしむらなおこ)

1967年に東京生まれ、神奈川県で育つ。1991年、早稲田大学人間科学部人間基礎科学科卒業。専攻は細胞生物学。1992年より約10年にわたって科学雑誌『ニュートン』の編集に携わった後、フリーランスのサイエンスライターとして活動。生命科学分野の仕事を得意とする。ネイチャー アジア・パシフィックの特約記者でもある。

これまでの主な仕事は、雑誌として『nature日本版』『nature digest』『三洋化成ニュース』『JST ニュース』など、書籍として『花はなぜ咲くの?』(化学同人)、『サイエンスコミュニケーション 科学を伝える5つの技法』(日本論評社)、『きっずジャポニカ』(小学館)など、冊子として『理化学研究所 GSCの10年とゲノム科学の新たなる挑戦』『GSCアニュアルレポート2006』、ウェブとして『国立遺伝学研究所ホームページ』『日本語バイオポータルサイト』(国立情報学研究所)などがある。 2008~2010年3月まで、NPO幹細胞創薬研究所の生命倫理委員も務めた。