知りたい!サイエンス
新しい自然免疫学
―免疫システムの真の主役
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審良静男研究室 代表:審良静男 監修
坂野上淳 著 - 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2010.11.6[在庫なし] 2013.5.17
- 判型
- 四六
- 頁数
- 208ページ
- ISBN
- 978-4-7741-4455-9 978-4-7741-5689-7
サポート情報
概要
免疫システムは,「獲得免疫」系と「自然免疫」系に大きく分類することができます。侵入してきた病原体(抗原)に応じた武器(抗体)をつくり,次にその病原体がきたときに備えるしくみを「獲得免疫」,一方,マクロファージや樹状細胞などが病原体をのみこむ(たべる)しくみを,「自然免疫」と呼びます。20世紀の免疫学の主流は「獲得免疫」にあり,原始的とされていた「自然免疫」の研究はほぼ頭打ちとなっていました。しかしここ数年でその状況を覆した研究者がいます。それが審良静男です。本書は審良静男らの実績,研究にフォーカスしながら,現在にいたるまでの免疫学の歴史とともに,新たなる自然免疫システムについての考え方を解説していきます。
こんな方にオススメ
- 免疫のしくみ,歴史に興味のある人
- 生物やヒトのからだに興味のある人
- 科学研究,サイエンス一般に興味のある人
目次
第1章 免疫学研究の夜明け
- 1.1 “免疫”システムの本質を考える
- 1.2 観察から始まった“免疫”
- 1.3 獲得免疫の研究と私たち
- 1.4 20世紀後半までの常識
- 1.5 メチニコフと自然免疫
- 1.6 ジェンナーと天然痘
- 1.7 二人の巨人 パスツールとコッホ
- 1.8 ベーリングの業績
- 1.9 日本の免疫学の草分け,北里柴三郎
第2章 B細胞と抗体の多様性
- 2.1 エールリヒの側鎖説
- 2.2 免疫細胞の分類
- 2.3 B細胞の発見
- 2.4 B細胞とはどんな細胞か?
- 2.5 抗体とはなにか?
- 2.6 免疫グロブリンの性質
第3章 T細胞の多彩な働き
- 3.1 T細胞の発見
- 3.2 IgE抗体の発見
- 3.3 アレルギーと抗体産生の関係
- 3.4 T細胞の働き
第4章 敗血症と自然免疫学
- 4.1 “眠りの森の美女”がかかった病気とは?
- 4.2 敗血症の症状
- 4.3 歴史に見る敗血症
- 4.4 リムルス試験
- 4.5 明らかになる敗血症の正体
第5章 新しい自然免疫学
- 5.1 抗原提示細胞としての樹状細胞
- 5.2 自然免疫研究の新しい展開
- 5.3 遺伝子ノックアウト実験とは?
- 5.4 新発見はショウジョウバエから始まった
- 5.5 Tollとはどんなもの?
- 5.6 Tollの構造
第6章 自然免疫の真の姿―審良静男研究室の成果を中心に―
- 6.1 リポ多糖の受容体を巡って
- 6.2 次々と明らかにされたTLRの機能
- 6.3 さらに明らかにされた自然免疫の驚くべき姿
- 6.4 自然免疫と獲得免疫を結ぶTLRの機能
- 6.5 ガン免疫療法の謎とTLR
- 6.6 TLRをはじめとする自然免疫システムの意味
第7章 生物の進化と免疫
- 7.1 免疫も進化する
- 7.2 軟体動物の免疫システム
- 7.3 地球の支配者? 昆虫の免疫システム
- 7.4 “われわれの親戚”ホヤの免疫
- 7.5 獲得免疫への架け橋
- 7.6 獲得免疫の起源を求めて
- あとがきにかえて
- インタビュー:審良静男「免疫学を学ぶ人たちへ」
プロフィール
審良静男研究室 代表:審良静男
大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 教授・拠点長。大阪大学医学部卒業,同大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。カリフォルニア大学バークレー校博士研究員を経て,大阪大学細胞工学センター助手,同助教授。1996年 兵庫医科大学教授,1999年 大阪大学微生物病研究所教授。2007年より現職を務める。
坂野上淳
大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 准教授。研究マネージメント・コーディネート担当。名古屋市出身。東北大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程修了,のちに博士(地球環境学)。厚生省(当時),民間会社の博士研究員などを経て,2008年より現職。
気象予報士試験合格,臭気判定士,潜水士などの資格を持ち,幅広い趣味と興味を持つ。著書に『シンカのかたち 進化で読み解くふしぎな生き物』(技術評論社,共著)など。