知の扉 素数ほどステキな数はない ~素数定理のからくりからゼータ関数まで~
- 小島寛之 著
- 定価
- 2,420円(本体2,200円+税10%)
- 発売日
- 2021.9.11 2021.9.8
- 判型
- 四六
- 頁数
- 352ページ
- ISBN
- 978-4-297-12271-3 978-4-297-12272-0
概要
数学界最高のナゾといってもよい「素数」の本当の魅力を徹底的に解剖します。素数とは1と自分自身以外に約数を持たない2以上の整数です。定義はとてもシンプルですが2000年以上にわたり数学者の研究対象になってきました。それにもかかわらず解明されていないナゾが多く存在します。そしてそんな素数は暗号として私たちの日常に大きく関わっています。本書は、素数の現れ方、判定法、個数と素数定理、存在定理であるベルトラン=チェビシェフの定理、RSA暗号と因数分解、さらにほかの書籍ではあまり語られていない虚数・複素数と素数の関係や組み合せ論と素数の関係などに迫ります。最後では本書の総仕上げとして、ゼータ関数、リーマン予想と素数について解説します。定理や証明の理解に必要な数列、対数、微分積分、虚数などについても丁寧に取り上げているので、安心して読み進めることができます。
こんな方にオススメ
- 素数に興味がある人
- 素数定理な素数に関する定理をきちんと知りたい人
- 今度こそ素数を理解したいと思っている人
目次
- まえがき
【入門編】 素数ほど面白い数はない
- 素数ってなに?なんで注目されるの?
- 数学者は素数が大好き
- 素数は不規則に出現する
- 素数の末尾はいくつ?
- 素数の末尾に偏りはあるの?
- 双子素数予想
- ゴールドバッハ予想
- メルセンヌ素数
- Column 素数魔法陣
【初段編】 なぜ、素数は無限にある?
- 素数は無限にある
- ユークリッド-マリン数列
- もう一つのユークリッド-マリン数列
- 4で割った余りでの分類
- 4n+3型素数が無限にある理由
- 4n+1型素数が無限にある理由
- 4n+1型素数と4n+3型素数は同じくらいある
【二段編】 数列の中の素数
- 素数を生み出す式
- 等差数列の中の素数
- 等差数列を成す素数
- 「素数による等差数列の定理」を証明しよう
- いくらでも長い「素数による等差数列」が存在する
- 2次式の数列の素数
- 指数関数で作られる数列
- リュカ-レーマーの判定法
- フェルマー数とフェルマー素数
- オイラーのアプローチ
- 素数を生成する多項式
【三段編】 対数関数と素数
- 対数関数と素数
- 底が2の対数関数
- 対数法則ってどんな法則?
- ネピア定数と自然対数
- 素数の個数を表す関数
- 偉大なる素数定理
- 素数定理は、どの程度の近似を実現するか?
- 素数の「出現確率」
- 素数を数えるチェビシェフ関数
- チェビシェフの不等式
- チェビシェフ第2関数と素数定理
- チェビシェフ関数定理の証明を直感的に理解する
- Column オイラーのフェルマー素数の約数発見法
【四段編】 合同式と素数とRSA暗号 ~フェルマーの小定理、オイラーの定理
- 数が社会で役立つ時代
- RSA暗号とはどんな暗号か
- フェルマーの小定理
- 擬素数
- オイラーの定理
- ウィルソンの定理
- 合同になじもう
- 合同式の操作は等式のものとほとんど同じ
- 定理たちを証明しよう
- オイラーの定理の証明
- ウィルソンの定理は、「逆数」と関係する
- RSA暗号を支える原理
- なぜ、 難攻不落の暗号なのか?
【五段編】 順列・組合せと素数 ~素数定理への最初のアプローチ
- 順列・組合せと素数は仲良し
- nCrの公式を理解する
- 2項定理
- 組合せ数からフェルマーの小定理へ
- nCrは特別な存在
- 2nCnの素因数を調べる
- 2nを割った商が奇数の素数
- 2nCnの近似素因数分解
- 組合せ数2nCnの素因数分解
- 2nCnの大きさをおおざっぱに見積もる
- いよいよ、素数定理のからくりを解明する
【六段編】 無限和と素数 ~オイラーの大発見
- オイラーの新発見
- 無限個の数を加え合わせる
- 有限になる無限和・無限になる無限和
- 無限和が教えてくれること
- エルデシュ分解
- 「オイラーの素数定理」を証明しよう
- 双子素数の逆数和
- エルデシュ分解のパワー
【七段編】 虚数と素数
- 不思議な数・虚数
- フェルマーの2平方定理
- 空想の楽園~複素数
- 2次元の数世界~複素数
- ガウス整数
- 2平方定理とガウス素数
- 平方剰余
- ガウス素数と平方剰余
- -1は平方剰余となる素数
- 2次体の整数論が花開く
【八段編】 素数と微分積分
- 微分積分は数学最強のツール
- 微積分は素数とも相性がいい
- 関数を局所的に見る
- 微分係数は接線の傾き
- 極値への応用
- 2次近似を利用する
- 微分係数とランダウ記号
- ランダウ記号を正式に定義しよう
- 微分係数は極限で求められる
- 多項式の微分係数
- テイラー展開と無次元の多項式
- 1次近似式を集計する
- 素数と積分の関係
【九段編】 ラマヌジャンとベルトラン=チェビシェフの定理 ~ψ(x)による証明
- ベルトラン予想
- 異色の天才ラマヌジャン
- チェビシェフ第1関数とチェビシェフ第2関数
- 証明のナビを見ておく
- 階乗数の素因数分解
- T(x)とψ(x)の関係を発見する
- T(x)の値を近似する
- チェビシェフ第2関数を評価する
- 証明を完成しよう
【A級編】複素数上の微分積分
- (A級その1)三角関数と複素数
- (A級その2)オイラーの公式
- (A級その3)指数が複素数のべき乗計算
- (A級その4)三角関数のテイラー展開
- (A級その5)複素関数としての対数関数
- (A級その6)複素関数の微分
- (A級その7)正則関数のテイラー展開
- (A級その8)複素べき乗関数の微分と「一般化された2項定理」
- (A級その9)複素関数の積分
- (A級その10)コーシーの積分定理
- (A級その11)コーシーの積分公式
- ガンマ関数
- (A級その12)ガンマ関数を解析接続する
【名人編】 ゼータ関数・リーマン予想・素数定理
- ゼータ関数は素数のすみか
- 有限ゼータ関数
- 関数等式とはどんな等式か
- 有限ゼータ関数ではオイラー積は当たり前
- 零点の分布
- バーゼル問題
- 無限個の因数分解
- 自然数s乗の逆数和の収束と発散
- 発散級数の和
- ゼータ関数と素数が結びつく
- オイラー積を応用する
- 天才リーマンの登場!
- 等差数列の中の素数~ディリクレの算術級数定理
- 発散級数を計算する解析接続
- リーマン・ゼータ関数の関数等式
- 難攻不落のリーマン予想
- 虚の零点はどのように分布しているか?
- 素数の個数をぴったり計算する式
- 明示公式から素数定理を証明する
- ペロンの公式
- 明示公式に到達しよう
- 素数名人の称号!
- あとがき
- 参考文献、かつ、お勧めの本
- 索引
- 著者略歴
プロフィール
小島寛之
1958年東京都生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。
現在、帝京大学経済学部経済学科教授。専攻は数理経済学、意志決定理論。
数学エッセイストとしても多方面で活躍しており、そのわかりやすい語り口には文系・理系の読者を問わず定評がある。
主な著書に『使える!経済学の考え方』『数学入門』(以上、ちくま新書)、『天才ガロアの発想力』『ナゾ解き算数事件ノート』『21世紀の新しい数学』『証明と論理に強くなる』『【完全版】天才ガロアの発想力』(以上、技術評論社 )、『無限を読みとく数学入門』(角川ソフィア文庫)、『数学的推論が世界を変える』(NHK出版新書)など多数。