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本書の著者・アニメータ,キャラクターデザイナーであるりょーちもさんにBlenderで制作した「球体作画」のデモを見せていただき,その場で書籍の執筆をお願いしたのは新型コロナウイルス感染症が流行するよりもっともっと前のことでした。あれから数年,1冊の書籍として刊行する運びとなりました。
Blenderといえば,オープンソースの3DCG制作のアプリケーションとしてモデリング,VFX向けデジタル合成など用途が多様に進化しているソフトです。プロやスタジオ使用~アマチュア,学生まで幅広いユーザーからも支持を得て,現在世界的に普及していますが,当時,いわゆる「モデリング」ではない,挑戦的な表現を模索しているりょーちもさんの考え方に驚くとともに,ツールの使い手がこの姿勢であるからこそ,アプリケーションは常に進化していくのだと納得したのを覚えています。本来のモデリングはどこへ,XYZがある立体空間に2Dイラストが組み合わさり違和感なく調和,さらにグリングリンとさまざまな角度から立体絵が動いていました。
図のような絵のデモで球体内を移動して見せてもらった
「みなさん,最初は興味をもってどんどんきてくれるんだけど,こちらが全力で話すと,気づいたらドン引きしてる」――そんなとてもおもしろい(でもご本人はちょっと傷ついている)話をうかがって,これまで積み重ねてこられたトップクリエイターによるアニメーションの実験成果と頭の中をまとまった形で覗くことができたら,「やりたいことを技術を利用して実現する」ためのクリエイターの道しるべにもなると考えました。
自分で撮影したカーペットの動画を元に絵を作る実験。モーショントラッキングの技術を利用(りょーちも作)
グリースペンシル機能はパワーアップし,一般向きに使えるようになり,はじめて触る読者でも,元々2Dイラストを描いていた方も楽しめます。
りょーちもさんに時代が追いつこうとしているいま,本格的に触ってみるのにいい機会となりそうです。そして,りょーちもさんの飽くなき探求は続きます。
共著者のアニメ演出家,川越崇弘さんが参加され,文執筆を開始してしばらく経ったころ,本書のあまりのボリュームに頭を抱えました。そのため,ページ数,書籍の到達点の設定により,後半部分を泣く泣く削っています。アニメーション制作に特化したこの内容を読者の方々に何らかの形で出せる機会を検討しています。(編集後記)
著者の一言 https://gihyo.jp/book/2022/978-4-297-12934-7/content/message