新春特別企画

LibreOffice/Apache OpenOfficeの2016年振り返りと2017年

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2016年のApache OpenOffice

次に,Apache OpenOfficeの2016年について振り返ってみます。

リリース状況

詳しくは後述しますが,Apache OpenOfficeは紆余曲折を経て10月12日に4.1.3がリリースされました。基本的には脆弱性を修正したリリースで,目立った変更点はありません。

2億回ダウンロード

一昨年の記事で,2014年9月27日に1億2000万回ダウンロードを達成したと言及しましたが,公式サイトのグラフによると11月18日に2億回ダウンロードを達成しました。

プロジェクトの終了危機から再始動まで

今思えば7月21日(日本時間では22日未明)「[REPORT] CVE-2016-1513 Security Advisory」と題したメールが始まりでした。要約するとCVE-2016-1513という脆弱性が発見されましたが,この日の時点では修正方法は存在せず,近日中にホットフィックス(バイナリパッチ)をリリース予定という内容です。

そのホットフィックス(4.1.2-patch1 Hotfix)は8月30日にリリースされました。Windows版以外は脆弱性を修正したライブラリとドキュメント,Windows版はそれに追加でバッチファイルのインストーラー付きという渋いものでした。脆弱性の公表からバイナリパッチのリリースまで1ヶ月以上かかっているのはすこし遅いですが,Apache OpenOfficeの開発力を考えるとやむを得ないと思ったことを覚えています。

時計の針を少し戻して,7月31日に「[DISCUSS] Process: Elect Next Chair of AOO Project Management Committee」というメールが発信されました。PMC(Project Management Committie) ChairのDennis E. Hamiltonさんからで,Chairを交代したいので立候補を募り,選挙をしたいという内容です。立候補者はなく,8月30日に「[NOMINATION REQUEST] Next Chair of AOO Project Management Committee」というメールで,再び立候補者を募るメールが発信されました。

そして迎えた9月1日,「[DISCUSS] What Would OpenOffice Retirement Involve? (long)」と題するメールが発信され,衝撃が走りました。タイトルのとおり長いのですが,ざっくり要約すれば,プロジェクトが活発とはいえないので終了するための枠組みが提案されました。確かにプロジェクトが活発とはいえず,PMC Chairが見つからないのであれば終了させるのも選択肢として俎上に載せるのは当然のことといえます。

同日,どうしてそのような提案をするに至ったのかの詳細を公表しました。CVE-2016-1513の通知が来たのは4.1.2のリリース間近の2015年10月20日で※2)⁠ソースコードで修正ができたのが2016年3月です。6月7日には報告者から同月中に詳細を公表する旨の連絡を受けており,交渉の上7月21日まで延期できました。しかしバイナリパッチの用意はしていたものの間に合わず,結局リリースできたのは8月30日になったことが説明されています。

※2
ちなみに4.1.2は2015年10月28日にリリースされました。

この件について,9月3日に筆者のブログで報じました。筆者が知る限りでは国内最速です。週が明けた9月5日には各ニュースサイトでも取り上げられ,gihyo.jpの連載であるLinux Daily Topicsでも報じられました※3)⁠

※3
ただし「少なくとも3人は必要なPMC(Project Management Committee)メンバーも現状ではひとりもいない状態であり」は事実誤認と思われます。当時も現在も30人弱のPMCがいますし,そもそもDennisさんはPMC Chairなので,一人もいないという内容と矛盾します。

その後プロジェクトの内外で喧々諤々議論が繰り広げられ,9月7日には一足先に4.1.3のリリースマネージャーが決定します。Apache OpenOfficeはリリースマネージャーがいないと新バージョンがリリースされないため,あとはPMC Chairが決まればプロジェクトの存続が決定します。

事前に提示されたPMC Chairの立候補締切は9月14日でしたが,ぎりぎり同日にMarcus Lange(marcus)さんが立候補し,9月19日には投票により次のPMC Chairになることが決定します。ここで正式に当面とはいえプロジェクトの継続が決定しました。翌日には「Stop the lazy season, start changing」という決意を表明しています。

そして10月21日には前述のとおり4.1.3がリリースされ,4.1.4のリリースマネージャーもすでに決定しています。

現状の分析

Apache OpenOfficeは現在でもたくさんのユーザーがいることはダウンロード数からも伺えます。では,開発状況はどうでしょうか。ここで1月から12月29日までのtrunkへのコミット回数を見てみましょう図9)⁠

図9 trunkへのコミット回数

画像

騒動が起きた9月には増えていますが,また減って12月に増えています。12月は主にビルドシステムに手を入れているためコミット回数が増えています。

9月以降に強力な開発者が加わったという事実もなく,Apache OpenOfficeの規模を考えれば12月にコミット回数が倍に増え,これが続いたとしても依然少なすぎることには変わりないので,事態が好転しているとはいえません。

2017年のLibreOffice

今年のLibreOfficeはまず,1月末あるいは2月頭(おそらく後者)に5.3.0のリリースが予定されています。LibreOfficeはタイムベースリリースのため,さらに次のバージョンもリリースされるでしょう。そのバージョンは順当に考えれば5.4ですが,そろそろ6.0の声が聞こえてきてもいい頃かもしれません。

今回は全く触れませんでしたが,Web版LibreOfficeであるところのLibreOffice Onlineの開発もますます進むことでしょう。

今年もレガシーからの脱却を推し進め,モダン化を行うとともに新しい開発者が参加しやすいものとなり,ますます開発が進むという好ループがきっと見られることでしょう。今から実に楽しみです。

2017年のApache OpenOffice

今年Apache OpenOfficeについて現段階で確実にいえることは,4.1.4がリリースされるくらいのものです。またメジャーバージョンアップ版である4.2.0(予定)もリリースが検討されるでしょうが,望みは薄いように思います。そもそも,4.1.xと大きな違いがあるわけではありません。

昨年のような騒動が起きないことを祈るばかりですが,その祈りが届くかは全く不透明です。

著者プロフィール

あわしろいくや

Ubuntu Japanese Teamメンバーで,主として日本語入力関連を担当する。特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会。LibreOffice日本語チーム。ほか,原稿執筆も少々。

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