未来を味方にする技術
~これからのビジネスを創るITの基礎の基礎

[表紙]未来を味方にする技術 ~これからのビジネスを創るITの基礎の基礎

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四六判/264ページ

定価1,738円(本体1,580円+税10%)

ISBN 978-4-7741-8647-4

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書籍の概要

この本の概要

数週間かかっていた仕事を,たった1日で終わらせる。「人間にしかできなかったこと」を機械に置き換え,「人間にはできなかったこと」を実現する ――あたらしい常識を次々と生み出す原動力となるITを使いこなすためには,どんなことを押さえればいいのか?

人工知能,IoT,FinTech,シェアリングエコノミ―,bot,農業IT,マーケティングオートメーションといった最新のトレンドから,これからも変わらないITとの付き合い方までを図解とともに解説。

図はPowerPointデータとしてダウンロード,ロイヤリティフリーで利用可能。

こんな方におすすめ

  • 事業や経営を変革したいと考えている方
  • 同じことをしていればよかった職場から,新たなチャレンジが必要な職場へ異動になった/転職した方
  • 社会に出たときに一歩差をつけたい就職活動中の方

著者の一言

「自動走行に切り替えます」

高速道路に入り自動走行モードのスイッチを入れると,ハンドルが私の手から離れ,ダッシュボードにスッと吸い込まれていった。目的地の最寄りの出口までは1時間ほど。その間に溜まったメールを処理しよう。

座席を後ろに引いて,タブレットを手にとる。ほどなくして,「緊急の打ち合わせを開きたい」と品質管理部長からメッセージが入った。すぐにオンライン会議の画面を開くと,すでに生産技術部や生産管理部などのメンバーがそれぞれの持ち場から会議に参加している。

「何事なんだ?」と切り出すと,今日から出荷することになっていた新製品の一部に品質基準を満たさない製品があることがわかり,どうするかの判断を仰ぎたいという相談だった。

「原因はバッテリーの不良です。昨日午後の製造ロットに不良バッテリーが混じっていたようです」

最終検査装置のセンサーが異常を知らせてくれたので,出荷せずにすんだようだ。

「対象となる製品のバッテリーを交換し,再検査した場合の出荷への影響をシミュレーションしたところ,午前中のライン停止であれば,影響はほとんどないことがわかりました。ただ,生産技術部としては万全を期し,ほかのロットについても確認したほうがいいと提案しています。その場合は,最悪丸1日,新製品の出荷を遅らせなくてはなりません。すでにご注文をいただいているお客様には,営業から頭を下げてもらわなければなりません」

やっかいなことになった。しかし,社運をかける新製品でもあり,いま焦るより,万全を期したほうがよさそうだ。

「時間をかけてでも徹底的に調べてくれ」

さっそく,今後の生産計画と収支への影響をシミュレーションしてみた。まあ,これなら何とかなるだろう。

幸いなことに,昨年から生産を始めた新工場は,さまざまなセンサーから取得したデータを使い,工場の様子がどこにいても手に取るようにわかるようになった。しかも,進捗や品質のデータは人工知能で逐次分析し,計画が変わっても即座に最適な段取り替えや工程の組み替え,部材の手配をしてくれるので,トラブルがあっても影響は最小限に抑えられる。人手はかからず,しかも正確だ。

「それでは,すぐにとりかかります」

品質管理部長がそう告げると,会議に参加していたメンバーたちは会議画面から退出していった。さて,今日は予定を変更して,善後策を検討したほうがよさそうだ。

「今日の予定を教えてくれ」

タブレットに話しかけると,1日の予定が表示され読み上げられてゆく。幸い,どうにかやりくりできそうだ。

「14:00から山中工場に移動する。重なっているスケジュールはすべてキャンセル。関係者に知らせてくれ」

タブレットから,「承知しました」と返事が返ってきた。スケジュールは変更され,関係者には気の利いた文言でメールが配信された。

「まもなく,高速道路を降りて一般道に出ます。自動走行モードを解除しますので,準備してください」

ハンドルがダッシュボードからせり出してくる。私はハンドルを握り直した。やれやれ,今日は長い1日になりそうだ。

2020年,こんな日常が現実のものとなっているかもしれません。政府のIT総合戦略本部は,自動車の自動走行技術に関し,次のようなロードマップを発表しています。

  • 高速道路での追従走行と自動レーンチェンジが実現するのが2017年~2018年
  • 運転手の責任の下で一定区間を自動走行できるようになるのが2020年
  • 人間が介在することなく完全な自動運転が可能になるのは2020年以降

自動車の自動運転は,もはや夢物語ではありません。ここ数年の内に実現される技術として,着実に準備が進められています。また,オンラインでの会議やリモートワークは当たり前になっているでしょう。工場のインテリジェント化や自動化も高度に進化しています。たった数年先に,こんな未来が待ち受けているのです。

ほかにも,「これまでの常識を変える」取り組みが進められています。

  • 決済や融資,国際送金など,既存の金融機関が収益の柱としている事業を,わずかな手数料で,しかもスマートフォンから即座におこなえるようにする
  • 航空機用ジェットエンジンや自動車タイヤなどのメーカーが商品をサービスとして貸し出し,使用時間や利用内容に応じて課金する
  • 特注品を標準品と変わらない金額と納期で提供する
  • リモートワークで子育て世代の女性を労働力として活用したり,社員の労働生産性を向上させたりする
  • 個人の自家用車をタクシーや荷物の配送に使えるようにする
  • 個人住宅を宿泊用に貸し出す

その原動力となっているのが,ITです。

「でも,ITは難しいし,専門的な知識がないと理解できないでしょ?」

たしかに,機器の選定やシステムの構築となると,専門知識を持った人たちに任せるしかありません。しかし,ITが私たちの日常や社会,ビジネスに深く関わり,これまでの常識を大きく,そして急速に変えようとしています。そんな時代に,ITがもたらす新しい常識がどのようなもので,なぜ必要とされるのか,どのような価値を生みだそうとしているのかといったことは知っておきたいものです。また,たとえ詳細な技術論はわからなくても,ビジネスの施策や戦略を描くために必要な基礎知識や最新の動向を知ることは,社会人なら決して難しいわけでもありません。

「じゃあ,どうすればいいの?」

そんなあなたの「最初の1冊」となることが,本書の目的です。本書をご覧いただくのに,ITの前提知識は不要です。最新の事例を交え,わかりやすい図表と文章による体系立てた解説で,きっとご理解いただけるはずです。また,本書で使用する図表は,すべてパワーポイントデータとしてダウンロード,ロイヤリティフリーで利用いただけるようにしました。自分の勉強や仲間内での勉強会に,あるいは経営会議や事業会議の資料などに,自由にご利用いただけます。次のような方には,きっとお役に立つはずです。

  • 事業や経営を変革したいと考えている方
  • 同じことをしていればよかった職場から,新たなチャレンジが必要な職場へ異動になった/転職した方
  • 社会に出たときに一歩差をつけたい就職活動中の方

ITは私たちの日常にますます深く関わり,ビジネスはITと一体化してゆくでしょう。そんなITを味方に付けることができれば,あなたの可能性は大きく広がります。そのための方法を,本書でつかんでください。

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世界の最前線で起こっている変化を味方につけるには
ITの進化は,これまで「人間のできること」を機械に置き換え,効率化やコストの削減を実現してきました。

目次

はじめに ITが成果の原動力となる時代

第1章 新しい価値はどうやってもたらされるのか

これまでにできなかったことが次々と実現する

  • すぐ先に訪れる新しい日常風景
  • これまでの常識は一気に破壊される

ITの4つの役割

  • 利便性の向上と多様性を支える「道具としてのIT」
  • 効率や品質を高める「仕組みとしてのIT」
  • 変革や創出を促す「思想としてのIT」
  • 収益を拡大させ,成長を支える「商品としてのIT」
  • コラム 「商品としてのIT」が生まれた歴史的背景

第2章 いま,世界の最前線で起こっている変化

続々と生まれる新しいビジネスモデル

  • モノを売らない製造業
  • 既存の業界秩序を破壊するシェアリングエコノミー
  • 既得権益の壁を崩壊させるFinTech

人間ができなかったことをできるようにしてしまう技術

  • 人間より優れた能力を発揮する人工知能
  • 膨大なデータから,価値ある情報を教えてくれるアドバイザー
  • 自分で試行錯誤を繰り返しながら能力を高めてゆくロボット
  • 「難しいIT」と「自然な人間」を仲介してくれるbot(ボット)
  • 人工知能がロボットを「自動化」から「自律化」へ進化させる
  • 人間の役割の見直しを迫るスマートマシン
  • コラム 自動運転トラックの可能性と課題
  • ものづくりの民主化を実現する3Dプリンタ
  • 空間をデータ化するドローン
  • 魅力や価値の訴求を自動化するマーケティングオートメーション
  • 農業人口の減少を補い,国際競争力を高める農業IT

働くことのありさまを変えてしまうデジタルオフィス

  • 場所と時間に縛られない会議
  • 「仕事の量」ではなく「仕事の質」を高めるための時間を増やす
  • 生産性を劇的に改善する
  • 優秀な人材を確保する
  • コラム イノベーションとは何か

デジタルトランスフォーメーションの時代がやってくる

  • 「ITや機械がすべてをおこなう」前提で変革を引き起こす
  • 常識の大転換を生む4つの変化

第3章 未来を支える技術

人間の本来の役割を取り戻してくれる人工知能

  • さまざまな分野での利用が広がる
  • 「置換」と「支援」,「助言」と「強化」で人間の能力を拡張する
  • 人工知能の歴史と新たな展開
  • 人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係
  • 機械学習はどのようなことに使われているのか
  • 人工知能の抱える課題と限界
  • 人工知能に置き換えられる職業,置き換えられない職業
  • 日本の未来を支える人工知能とロボット
  • コラム 産業発展の歴史と人工知能の位置付け
  • 人工知能との付き合い方
  • コラム 人工知能の適用領域

デジタルデータで世界を捉え,アナログな世界を動かすIoT

  • モノがお互いにつながる世界
  • 現実世界をデータ化し,データを使って現実世界をより良くする
  • IoTが生みだす3つの価値
  • IoTがもたらす「モノのサービス化」
  • 「連続型」「未来対応型」「エコシステム型」へと変わるビジネス価値
  • あらゆる出来事をデータで捉え,新しい社会やビジネスを生みだす

最新テクノロジーを支える土台

  • つながることの常識を変えてしまったインターネット
  • 失敗のコストを引き下げ,イノベーションを加速させるクラウドコンピューティング
  • 新しい組み合わせが容易になり,非常識が常識に変わる
  • コラム 加速するビジネススピードに対応するためのアジャイル開発
  • 現実世界とサイバー世界が一体となって機能するサイバーフィジカルシステム

第4章 これからの常識を自分で創りだす方法

あなたにだって革新的なビジネスは作れる

  • ITは目的ではなく手段でしかない
  • “Uberist”になるための3つの原則
  • 第1の原則:課題を実感する
  • 第2の原則:トレンドの風を読む
  • 第3の原則:試行錯誤する
  • コラム IoTビジネスを成功させた3つの要件

新しいビジネスを創るための3つのステップ

  • ステップ1:戦略(Strategy)
  • コラム 「新規事業」を作っているのか,「新規事業計画」を作っているのか
  • ステップ2:作戦(Operation)
  • ステップ3:戦術(Tactics)

どこを狙えばいいのか

  • 市場拡大の加速度に着目する
  • 「きっとだれかがやる」ことに着目する
  • 汎用目的技術に着目する
  • コラム 効率よく情報収集とアウトプットをするための習慣
  • ITを味方につけたものが生き残る時代へ

おわりに ビジネスとITの壁を取り払って未来を創れ

著者プロフィール

斎藤昌義(さいとうまさのり)

ネットコマース株式会社 代表取締役。
1982年,日本IBMに入社,営業として一部上場の電気電子関連企業を担当。その後営業企画部門に在籍した後,同社を退職。
1995年,ネットコマース株式会社を設立,代表取締役に就任。産学連携事業やベンチャー企業の立ち上げのプロデュース,大手ITソリューション・ベンダーの事業戦略の策定,営業組織の改革支援,人材育成やビジネス・コーチング,ユーザー企業の情報システムの企画・戦略の策定などに従事。IT関係者による災害ボランティア団体「一般社団法人・情報支援レスキュー隊」代表理事。その他,『【図解】コレ1枚でわかる最新ITトレンド』『システムインテグレーション再生の戦略』『システムインテグレーション崩壊』(すべて技術評論社 刊)ほかの著書,雑誌寄稿や取材記事,講義・講演など多数。

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