知りたい!サイエンス
カンブリア爆発の謎 チェンジャンモンスターが残した進化の足跡
- 宇佐見義之 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2008.3.26
- 判型
- 四六
- 頁数
- 224ページ
- ISBN
- 978-4-7741-3417-8
概要
5億4000万年前から始まるカンブリア紀に生命は突如として爆発的な進化をおこしたとされ,多種多様で奇妙な生物が存在したことが知られています。この現象は進化史上,最大のミステリーとされてきました。近年,中国のチェンジャン地方から出土する化石によってこの時代の生物の研究が積み重ねられ,「爆発的進化」の理解が進んできました。カンブリア紀の研究最前線をレポートします。
こんな方にオススメ
- 生物が好きな人
- カンブリア紀の話に興味がある人
目次
第1章 もう一つのカンブリア・ワールド
- 1-1 グールドの『ワンダフル・ライフ』より
- 1-2 きれいな化石を産出するバージェス頁岩とその動物群
- 1-3 舞台はバージェスから澄江へ
第2章 カンブリア紀の爆発的進化とは何か?
- 2-1 スティーヴン・グールドの考えた進化説
- 2-2 爆発的な進化と環境の影響
- 2-3 爆発的な進化と遺伝子の影響
- 2-4 本当に進化は爆発的に起こったか?
第3章 カンブリア紀の前から準備されていた進化
- 3-1 最初の多細胞生物はいつ生まれたか?
- 3-2 大氷河期の最古の大型生物
- 3-3 明瞭に残る最古の多細胞生物
- 3-4 地球上に大繁栄したエディアカラ生物群
- 3-5 エディアカラの園仮説の崩壊
- コラム 動物の分類
- コラム エディアカラ紀の気候変動
第4章 爆発的進化の謎を解く鍵――小有殻化石・生痕化石
- 4-1 エディアカラ紀とカンブリア紀の区分
- 4-2 爆発的進化のシンボル・小有殻化石群の正体は?
- 4-3 硬い殻とリン酸塩と爆発的進化の関係
- コラム カンブリア紀境界の生命活動
第5章 わかってきたカンブリア紀の進化Ⅰ――歩脚動物から節足動物へ
- 5-1 澄江動物群の発見の歴史
- 5-2 歩脚動物の進化
- 5-3 アノマロカリスの進化
- 5-4 アノマロカリスの分類と近縁な生物
- 5-5 アノマロカリスにつながる大付属肢グループ
- コラム 二肢性の肢について
第6章 わかってきたカンブリア紀の進化Ⅱ――当時の海に魚がいた!?
- 6-1 ピカイアは人類の祖先か?
- 6-2 大進化時代へ――脊椎動物が発見されたカンブリア紀
- 6-3 魚に似た不思議な生物――ハイコウエラとユンナノズーン
- 6-4 ベッツリコーリア門――新口動物に新設された大きな分類単位
- 6-5 舒博士の五段階進化仮説
- コラム 体を形作るHOX遺伝子の進化
第7章 節足動物の整理と浮かび上がる三葉虫の起源
- 7-1 カンブリア紀の節足動物の分類
- 7-2 古節足動物類――鋏角類と三葉虫類を含む大きな分類
- 7-3 三葉虫亜門と三葉虫に似て非なる生物
- 7-4 甲殻亜門と議論の分かれる生物
- 7-5 エディアカラ紀にさかのぼる三葉虫の起源
第8章 コンピュータの中のアノマロカリス――進化は偶然か必然か?
- 8-1 コンピュータの中での進化と現実の進化
- 8-2 アノマロカリスの泳ぎ方
プロフィール
宇佐見義之
1987年慶応大学化学専攻修士課程卒業,1990年東京工業大学応用物理学専攻修了,理学博士,1990年神奈川大学工学部物理学教室着任,現在,准教授。修士まで分子科学の量子力学を勉強,博士以降は統計力学を研究。研究当初は臨界現象,フラクタル,最適化問題を研究したが1995年より現在の研究テーマに取り組む。なかでも1997年,科学技術振興機構「さきがけ21(形とはたらき)」の研究支援プログラムに採用されたことが大きな転換点となった。この際に多くの優秀な生物学者と知り合う機会を得ることができ,生物学研究の爆発的な進展を目の当たりにした。とりわけ,元千葉大学学長故丸山工作先生からは励まされ,多くを学ぶことになった。