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アプリケーションサーバ『WebOTX』――NEC 毛利豊氏

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NECが提供するアプリケーションサーバ『WebOTX』は,コンパクトなWebシステムから大規模な基幹システムまで幅広く利用されています。

今回,お話を伺ったNEC第二システムソフトウェア事業部の毛利豊氏は,1991年のNEC入社以来,メインフレームACOS-4の開発に携わり,専用言語を使った開発が常識だった時代にメインフレーム上でC言語を使った開発を行い,ACOS-4へのUNIXファイルシステムの移植など,オープン化を進める仕事に従事してきました。WebOTXの開発にはスタート時から関わっており,現在は同製品のサポートやプロモーションなどを担当しています。またNECのユーザー会(NUA)では,アプリケーションサーバ研究会設立メンバーで技術支援も行っていました。WebOTXのすべてを知り抜いている毛利氏に,その特長について大いに語っていただきました。

システムを止めない信頼性

編集部:毛利さんはWebOTXの開発スタート時からのメンバーだそうですが,当時の状況などを踏まえて製品の開発背景などお聞かせください。

NEC第二システムソフトウェア事業部
毛利豊氏

NEC第二システムソフトウェア事業部 毛利豊氏

毛利氏:開発が開始されたのは1998年で,1999年10月に最初のバージョン1.0がリリースされました。ということは,WebOTXは非常に長い歴史を持つアプリケーションサーバであると言えます。当時はまだJ2EEも存在していませんでした,というよりJavaのバージョンが1.1.8になるかならないかぐらいの時代でした。我々開発部隊はまず基幹システムで安心して使っていただけるアプリケーションサーバを目標に開発を開始しました。現在,WebOTXはバージョン6.5まで進み,最新の仕様を取り込むことともに多数の安全にシステムを動作させる機能を提供しています。2007年7月2日には最新バージョン7.1をリリースします。

編集部:安全なサーバという面から,WebOTXの特長をお願いします。

毛利氏:まさに,これこそがWebOTXの最大の特長です。業務システムを止まらないようにすること,要するに高信頼なサーバであるというのは非常に重要なことです。アプリケーションは更改する際にバグが入り込む場合があります。ですから,アプリケーションバグで止まることは起きうることだと想定しておく必要があります。そういう前提のもとに,障害が発生したとしても,サーバシステムは止まらずに何事もなかったように動き続けることが望まれます。我々はアプリケーションの障害やハードウェアの障害が発生しても安全に業務システムが継続できるような仕掛けを提供しています。

標準技術仕様の準拠

編集部:その仕掛けというのはNEC独自のものなのですか?

毛利氏:はい。メインフレームから培ってきた技術をベースとした「障害の局所化技術」などによって実現しています。しかし開発者がこれを意識する必要はありません。仕様という意味では,WebOTXは標準技術仕様をかたくなに守っています。たとえば,J2EE 1.4対応を国内で最初に行ったのもWebOTXです。多くのベンダーは1つ前のバージョンに独自スペックをカスタマイズすることでカラーを出そうとしていますが,NECは標準技術仕様には必ず準拠するようにしています。ですから,WebOTXはSOAP 1.2,UDDI 3.0,WSDL 1.1といったWebサービス仕様にもいち早く対応していますし,SOA標準仕様といわれるJBI 1.0やWS-BPEL 2.0への準拠もすみやかに行っています。

編集部:そこまで標準仕様にこだわる理由は何でしょう?

毛利氏:それは,お客様のことを考えた上でのことです。標準仕様で作ったソフトウェアというのは,どのプラットフォームでも動くのです。つまり,開発者は標準仕様での作り方という1つの方法を覚えるだけで済みます。ベンダー固有の開発方法を個々に習得する必要はありませんから,学習期間という工数が不要になり,生産性が向上します。

編集部:標準仕様というのは素晴らしいものなのですね?

毛利氏:はい。標準仕様はもちろんですが,標準仕様で作るということが素晴らしいのです。標準の環境で,標準の方法で作ってください,エンジンはピカピカに磨いてあるから安心ですよ,これが我々のスタンスなのです。

用途に合わせた4種類の製品モデル

編集部:製品は小規模モデルから大規模モデルまで4種類ありますが,適用性を含めてそれぞれの特性の説明をお願いします。

毛利氏:アプリケーションサーバと一口に言ってもいろいろな領域があります。お客さんによってはそこまで大規模なものはいらない,手軽に利用できるものが欲しいというケースもあります。そこで我々は,システム規模や業務の複雑さを踏まえて,必要な機能を抜き出した4つのEditionに分けました。こういった用途であれば,これとこれがあればいいという組み合わせのEditionを作ったのです。規模の小さいほうから紹介すると,Web EditionはWebベースのシステムを短期間で構築,運用したいユーザ向け,Standard-J EditionはEJBやJMSなどJ2EE技術を活用した本格的な業務システム構築向け,Standard Editionは業務システムを止めない機能が豊富に組み込まれており,高い信頼性が求められるシステム向け,そして,最上位のEnterprise Editionは,数千,数万あるいはそれ以上のアクセスが発生するような大規模システムや,高信頼性が要求される基幹システム向けのものです。使い方は同じですから,用途と予算に見合う製品を購入していただくようにしています。

編集部:WebOTXはどういったところで使われているのでしょうか? 差し支えなければお聞かせください。

毛利氏:旭化成様や三井住友海上火災保険様,GEコンシューマー・ファイナンス様,住友生命保険相互会社様などといった大手の会社で使用されているほか,多くの地方自治体などでも使われています。あと,身近なところでは,生命保険の外交員のモバイル端末内で動作するコンパクトなアプリケーションサーバとしても契約業務などで使われています。アプリケーションサーバというのは,バックグラウンドで動いているものなので,知名度はあまりありませんが,実際にはいろいろな場所で活躍しています。

WebOTX開発部隊の技術者マインド

編集部:最後になりますが,本誌読者に向けて何かアドバイスをいただけないでしょうか。

毛利氏:WebOTXの開発部隊は,何か問題が起きたら積極的に対応しようというマインドがグループ全体に行き渡り,シェアされています。夜中だろうが,雨の日だろうが,何かトラブルが発生したら,サポートするというのは当然だと思っています。現地での支援にも柔軟に対応してきています。上司に命令されたからやるというのではなく,そういうものだと全員が認識しています。顧客満足度向上のために常に最善を尽くすという,技術者のマインドがそうさせているのです。開発者の方にはこういうマインドを持ってほしいですね。

編集部:本日はお忙しい中,どうもありがとうございました。